来年度の税制改正で、ビール類飲料の酒税を統一することが決まった。ビールの税額は下がり、発泡酒や『第3のビール』の税額は上がる。
飲兵衛の間でも意見が分かれているが、一本化は「10年先」と時間をかけることも決まったこともあり、ビール4社の間でも明暗が分かれたのだ。そして業界の間では「ビールの取扱量が少ない『サントリー』の政治力にやられた」と怨嗟の声で溢れているのだという。
自民、公明両党が決めた酒税の見直しによると、国際的にも高いビールの酒税を段階的に引き下げる一方、低い税率が適用されている発泡酒や『第3のビール』を3段階で引き上げる。
これによって販売価格も変わってくるが、実際の税率改定は4年後に始まり、ビール類全体の税率は10年後に統一される――というのは、メディア報道の通りだ。
ビール類の酒税見直しは、以前からの課題であった。ビールに対する日本の税率は国際的にも高く、国内各社は税率が低い独自の発泡酒や『第3のビール』を開発してきた。
■―――――――――――――――――――― 【写真】サントリー金麦公式サイトより
(http://www.suntory.co.jp/beer/kinmugioff/index.html?fromid=top_mv1)
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海外ではこうした種類の酒は販売されておらず、日本だけでガラパゴス化した歪んだ競争が繰り広げられてきた。これによってビール各社の海外進出は遅れ、再編が急ピッチで進む国際競争から完全に取り残されている。
しかし、ビール各社の思惑は、立場によって大きく異なる。ビールが強い『アサヒビール』や『サッポロビール』は早期の税率改定を求めてきたが、発泡酒が強い『キリンビール』や『サントリー』は税率改定に消極的だった。関係筋が明かす。
「サントリーは昨年10月下旬、安倍晋三首相や麻生太郎財務相、二階俊博・自民党幹事長ら要人を集めた説明会を開催しました。業界に影響の少ない形での税制改正を要請したとのことですが、結果としてはビールが弱く発泡酒が強いサントリーに好都合な『10年先』という条件の改正となりました。これが業界に波紋を投げかけたのです」
別の関係筋は「税制改正要望は業界全体で行うことを申し合わせていたのに、サントリーは抜け駆けした」と憤る。
一方で、サントリー関係者は「あの会合は毎年恒例で開催している。安倍首相を前に、『うちのために酒税の見直しを控えてほしい』などと要望するわけがないだろう」と反論する。
ただ、『ローソン』からサントリーに転じてきた新浪剛史社長は、安倍首相が議長を務める経済財政諮問会議の有力メンバーだ。
サントリーは発泡酒や『第3のビール』が、ビール類売り上げの7割を占める。それらが税制改定で大幅に値上がりすれば、打撃は大きい。
サントリー関係者による強い反論にもかかわらず、業界では「サントリーは税率改定によるショックを最小限にすべく、必死で動いていた」という証言が相次いでいるのは事実なのだ。
(無料記事・了)