2016年6月24日
【完全無料記事】115回きのうの1面〈参院告示翌日〉6月23日一般紙
6月23日朝刊のテレビ欄で、朝の情報番組は次のような内容紹介となっていた。
▽あさイチ(NHK) ・①スゴイぞ アスパラガス最新情報 ストレスも血圧も軽減 捨てがちなアノ部分に新成分
・②アッキーの沖縄旅
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・カレー店 給料未払い閉店・解雇 インド人ら〝助けて〟店寝泊まり自主営業 ・揚げぬカツ丼…クックパッドの〝神レシピ〟 ヘルシー&時短ワザ
・英国EU離脱? きょう国民投票どうなる日本
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・激ヤセの鳩山邦夫さん 急逝前に炭水化物抜きダイエットか ・九州に大雨〜道路冠水し濁流川も危険
・福島汚染土全国拡散へ!! 大丈夫?
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・九州に記録的大雨爪痕 関東も雨…通勤の足は ・隣人トラブル20年の惨劇…住民約1000人が減刑嘆願の理由は?
・毛染めアレルギー実態
▽なないろ日和!(テレビ東京) ・豚のしょうが焼き極意 ①ロース肉VS薄切り肉 ②漬け込み派VS絡め派
③カリッとジューシー 人気店のスゴ技
▽とくダネ!(フジテレビ) ・①乙武氏 不倫謝罪から3カ月…妻から切り出し…別居 ・②都も区も…リオ視察 なぜ必要? 高額のワケ
・③創業家VS経営陣 大戸屋でお家騒動勃発
では新聞はどうだったのか。2016年6月23日付(木曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「アベノミクス問う 参院選389人立候補 来月10日投票 社会保障・憲法 争点 「「安倍一強」継続か否か」政治部長 前木理一郎 18歳に選挙権」 ▽朝日新聞(約710万部) 「問われる安倍政治 アベノミクス・安保法 改憲4党 3分の2焦点 参院選公示 「憲法 避けずに議論を」政治部長 立松朗」 ▽毎日新聞(約329万部) 「改憲巡り攻防 「3分の2」議席焦点 経済政策 是非問う 参院選公示 389人立候補「これまでとは違う」政治部長 末次省三」 ▽日経新聞(約275万部) 「英離脱リスク 市場備え きょうEU巡り国民投票 FX取引制限の動き 邦銀ドル・ポンド確保 ポンド買い 協調介入も」 ▽産経新聞(約161万部) 「自公VS.民共の構図 参院選公示 389人立候補 来月10日投開票 「野党共闘」に温度差 「18歳」初の国政選 「迫る危機 各党の覚悟は」政治部長 有元隆志」 ▽東京新聞(約51万部)
「第一声 争点くっきり 参院選7・10投開票 自公アベノミクス加速を 共闘野党 改憲勢力2/3許さない 389人立候補」
参院選が告示された翌日の紙面でも、日経ブロックが発動した。さすがに全紙共通だと思っていたが、日経はイギリスEU離脱問題の方が重要だったらしい。基本は経済紙だから当然ではあるだろうが、有権者が参院選に関心を示していないことを踏まえているのではないかと言えばうがち過ぎか。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(〝長寿物質〟の研究が進む/参院選)
「伝説によれば、月の世界には霊水がある。名前を「変若水(おちみず)」といい、飲んだ人は若返るという。その霊水を調合した品かどうか、『竹取物語』のかぐや姫も月へ帰るとき、不老不死の薬を帝に献上している」
「以前、本紙で読んだ川柳がある。<寿命より貯金が先に逝っちまい>。長い気が生活苦を連想させる世の中ほど悲しいものはない。さまざまな声のなかに、あすの希望を探す18日間である」
▽朝日・天声人語
(沖縄慰霊の日)
「沖縄市出身の国仲瞬さん(23)は小学生のころ、「平和学習」があまり好きではなかった。沖縄戦の話は暗くて重いからだ。戦争体験者から、例えばこんな話を聞いた。住民が隠れた洞窟の入り口に爆弾が落ちた。ばらばらになった人の体を見た──」
「きょうは「慰霊の日」。71年がたち、戦争を体験した人は減っている。語り継ぐ機会も。それが、基地が存在し続けることに疑問を持たなくなる危険をはらむのではないか。沖縄で、そしてとりわけ本土で▼「がちゆん」。まじめななおしゃべりが求められているのは、決して沖縄の中だけではない」
▽毎日・余録 (九州各地で豪雨)
(http://mainichi.jp/articles/20160623/ddm/001/070/162000c)
「「集中豪雨」という言葉が広まったのは1957年7月25〜28日の諫早豪雨がきっかけといわれる。一昼夜の雨量が1100ミリを超えた場所があった一方、わずか20キロ離れた場所ではその1割にも満たなかったことがこの用語を普及させた▲この時は、川の氾濫や土砂災害などにより長崎県と熊本県で700人以上の死者・行方不明者が出ている。梅雨の後半、前線に向かって南西からの湿った空気が流れ込んで起こる豪雨が「荒れ梅雨」「暴れ梅雨」の正体という。この列島、とくに西日本の宿命である▲だが今季は梅雨入りから20日たっていない九州地方を見舞った大雨だった。熊本県での記録的豪雨に続いて長崎県や福岡県も豪雨に見舞われ、各地に避難指示や勧告が出ている。20日夜半の熊本県甲佐町で記録した1時間の雨量150ミリは観測史上4位の記録だった▲熊本県内では土砂災害などで6人が犠牲になり、宮崎県や福岡県でも死者・行方不明者が出た。この豪雨のさなかにも熊本地震の大きな余震の速報が報じられて、胸が騒いだ。当の被災地の不安に思いをめぐらせば、暴れ梅雨の非情をうらむしかない無力がくやしい▲「時によりすぐれば民のなげきなり 八大竜王雨やめたまへ」は鎌倉三代将軍、源実朝の止雨祈願の歌だ。八大竜王は水をつかさどる竜王で、この歌に竜王をも叱りつけるまっすぐな勢いを感じた明治の俳人、正岡子規は「真心より詠み出でた」「善き歌」と評した▲梅雨前線の活発な状態はなおも続きそうで、緩んだ地盤が心配だ。せめて被災地の窮状にまっすぐに届く「真心」はともにしたい災害列島の住民である」
▽日経・春秋 (イギリスEU離脱問題/参院選)
(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO03954700T20C16A6MM8000/)
「 ロンドンについて忘れられぬことを書いてください、と頼まれたら……。食通だった作家の開高健さんは晩年の短編をこう始め、白身魚フライにポテトを添えた「フィッシュンチップス」を挙げた。お堅い新聞で包んでもらっては冷めるのが早い、とのジョーク付きだ。 ▼次いで、夕方の酒場の床にまかれたオガ屑である。場所は忘れたが「雨のあとの森のようにいきいきと香りをたてていた」。ソーダの爽やかな音が響き、一日が終わったというささやかだけれど切実な喜びが人の声に感じられたという。欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票後、街に穏やかな日常は戻ってくるのだろうか。 ▼英国を二分した10週間だった。金融機関や企業が流出する、と残留派が訴えれば、離脱派は「EUが雇用を破壊した。権限を取り戻そう」と叫んだ。移民へのまなざしも両派で異なる。主張の違いは根が深く、結果を尊重してノーサイドで乾杯、とは落着しない雲行きだ。社会の分断を繕う作業は、そう簡単ではあるまい。
▼一方、我が方は参院選である。多くの有権者が不安視する将来の社会保障で、各党の議論は活発といえない。例えば2025年度に70兆円を超す医療・介護費をどうまかなうか。負担増は世代間の深刻な分断を招くかもしれない。潮は沖へ引いているように見えても、満ちる時は瞬く間だ。熟議にも長い時はかけられない」
▽産経・産経抄 (東京都議団リオ五輪視察問題)
(http://www.sankei.com/column/news/160623/clm1606230003-n1.html)
「選挙のたびに新聞は、候補者の経歴や座右の銘などを紹介している。「尊敬する人」の欄には、明治維新の志士の名前をよく見かける。司馬遼太郎さんの『竜馬がゆく』のなかに、こんな記述があった。 ▼「要するに、史上名を残した志士というのは、足で取材し、足で伝播した旅行家ばかりということになる」。確かに竜馬も吉田松陰もひたすら諸国を歩いて人に会い、時勢を論じたものだ。それにあやかろうというのだろうか。 ▼国会議員や地方議員にとって、視察旅行も大事な仕事の一つらしい。リオデジャネイロ五輪・パラリンピックにも、次期開催地の東京都議会の視察団が派遣される。ただ、問題は総勢28人分の経費の金額である。6200万円もの予算が確保されていた。ホテル代などの高騰によって1億円前後になる可能性もある。税金の無駄遣い以外の何物でもない。規模を縮小するのは当然である。 ▼21日に東京都知事を辞職した舛添要一氏もあきれているはずだ。視察団には、高額な海外出張費をはじめとする、舛添氏の金銭問題を追及していた議員も含まれている。都議団による豪華な海外視察には、これまでも疑問の声が上がっていた。平成20年には、視察団が帰国後に作成した海外調査報告書に、専門家の論文の丸写しが見つかっている。 ▼観光という語は、中国の周の時代の古典『易経』にある「国の光を観る」から来ている。もともと他国の政治や文化を視察して、自分の国で役立てるという意味だった。日本では明治に入って、英語の「ツーリズム」の訳語に当てられてから、物見遊山の意味合いが強まった。
▼遊覧旅行と見分けがつかない議員の視察の実態を知れば知るほど、観光の語源を忘れてしまいそうになる」
▽東京・筆洗 (鳩山邦夫氏を悼む)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016062302000148.html)
「ある夏の日の軽井沢。小学三年生の兄がきれいなチョウを採ったと飛び込んできた。真っ赤な翅に美しい目玉模様。小学一年生の弟はうらやましくて仕方がなかった▼クジャクチョウ。別荘を飛び出し、<兄が捕まえた場所を何度も何度も歩き回った。しかし、ついには出現しなかった>。兄のいる方ならば、その悔しさが分かるか▼クジャクチョウを手にした兄とは元首相の鳩山由紀夫さん。弟とは二十一日亡くなった自民党衆院議員の邦夫さんである。六十七歳▼二十八歳の若さで衆院初当選。総務相や法相などを歴任する一方でその政治人生は収集していたチョウのように所属政党を飛び回るようでもあった。自民党、無所属、改革の会、自由改革連合、新進党、旧民主党、民主党、無所属、自民党、無所属、自民党…▼政界は感情の世界。これだけ、<ナノハニアイタラ>と飛び回れば、不信感と恨みで花畑を追放されかねないものだが、このチョウは不思議と飛び続けた。問題発言もあったが、頭の回転の速さとどこか憎めぬ風貌と人柄のおかげだったかもしれない▼兄は一九九三年、自民党を飛び出したとき、弟にはその計画を一切伝えていない。兄はその後、首相という巨大なチョウを捕まえたが、弟にはそれがどう見えていたか。<兄が捕まえた場所を何度も何度も歩き回った>。夏の日の思い出が切なくもある」
コラムで参院選を話題にしたのは読売と日経の2紙にとどまった。とはいえ、コラムは「きょう告示」の22日が競作になったことも大きい。 読売は最後の1行で参院選になるので少し驚いた。日経もEUと2本立てになっているが、それだけ「書くことがない」参院選なのか。 相変わらず東京は追悼記事で「世間並み」になる。 ■―――――――――――――――――――― 【写真】『池上彰の『マンガでわかる』投票ガイドブック』より (http://www.akaruisenkyo.or.jp/wp/wp-content/uploads/2012/07/tohyo_guidebook_0511.pdf)
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2016年6月23日
【完全無料記事】114回きのうの1面〈参院選告示〉6月22日一般紙
6月22日(水)朝刊のテレビ欄で、朝の情報番組は次のような内容紹介となっていた。
▽あさイチ(NHK) ・①最前線! おしゃれレイングッズ ・②ほめて伸ばす! 子どもの発達障害
子育てにも役立つ注目トレーニング法
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・女性死亡 包丁男が買い物客襲う 緊迫映像…店内で何が ・取材中に豪雨と地震 熊本被災地で被害拡大 ・15㌔金塊を質屋へ…盗んだ男は造幣局職員
・海外セレブ続々実践 グルテンフリーって?
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・大型スーパーに刃物男 買い物時…女性ばかり4人死傷 ・1億円リオ視察〜都議ら「白紙」が相次ぐ
・東京近郊でクマ度々目撃!! 対策は
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・知事去ってまた一難…リオ五輪視察に1億? 都議の実態を緊急検証 ・毎晩クマ出没の現場 恐怖の瞬間を密着取材
・新田理恵家族の支え
▽なないろ日和!(テレビ東京) ・360度アジサイ公園 都内ベスト3!! 超穴場350㍍アジサイ小径
名勝百選公園に花ショウブとコラボも
▽とくダネ!(フジテレビ) ・①悲鳴…大型モールに刃物男が通り魔? 女性4人殺傷 売り場は〝パニック〟
・②〝舛添騒動〟その後 都議のリオ視察1億円 またも〝高額出張〟?
では新聞はどうだったのか。2016年6月22日付(水曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「党首討論 アベノミクスで応酬 首相「継続」 野党「転換」 参院選きょう告示 立候補予定390人 国政初「18歳選挙」」 ▽朝日新聞(約710万部) 「改憲・経済 9党首討論 首相、選挙後「憲法審通じ 2/3勢力」 きょう参院選公示」 ▽毎日新聞(約329万部) 「首相「成果出してきた」 野党「政策転換必要だ」 党首 アベノミクス論戦 参院選きょう告示」 ▽日経新聞(約275万部) 「「後継」アローラ氏退任 ソフトバンク 孫子、禅譲撤回 社長交代時期 認識ずれ」 ▽産経新聞(約161万部) 「アベノミクス是か非か 2016参院選 きょう酷似 問われる民共合作の憲法観 志位氏「自衛隊は違憲。必要時には活用する」」 ▽東京新聞(約51万部)
「参院選きょう公示 アベノミクス論戦 与党 雇用増 成果強調 野党 格差拡大と批判」
参院選が5紙で共通トップとなり、日経ブロックが発動された。ちなみに前の日経ブロックは6月14日の紙面で、舛添前都知事が辞任する前日の新聞だった。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(参院選)
「年齢も境遇もさまざまの人々に語りかける仕事が世間にはある。作詞家がそうだろう。不特定多数の誰に向かって語りかけるか、がむずかしいところである」
「政策そっちのけの醜い足の引っ張り合いはご免である。藤田さんの『傷だらけの人生』(歌・鶴田浩二)を借りるならば、♪ 右を向いても左を見ても/ばかと阿呆のからみあい…。有権者にそんな印象を持たれては〝良識の府〟が泣く」
▽朝日・天声人語
(水害)
「自然の無情さに、怒りをおぼえる。地震の被害を受けて2カ月余りの熊本を、豪雨がおそった。住宅に土砂が流れ込むなどして、6人が命を落とした。地震のときと同じように孤立状態に陥った地区もある」
「20世紀前半に活躍したチェコの作家チャペックは、町の人々が雨を待つ姿を書いた。誰もが体内に「なにか、先祖伝来の農民の血が流れているようだ」(「園芸家の一年」飯島周訳)と。雨の大切さは変わらないが、現代の日本ではそれほど牧歌的に語れないかもしれない。九州ではきょうも、大雨のおそれがあるという。備えを警戒を、怠るまい」
▽毎日・余録 (参院選)
(http://mainichi.jp/articles/20160622/ddm/001/070/160000c)
「議案に賛成の者は「もっとも、もっとも」、反対の者は「この条、いわれなし」と声を上げ、その声の大きさで事を決めたという。いや平安時代の話で、場所は比叡山、寺の大事に臨んでの僧徒数千人の集会での多数決のとり方だった▲こんな話をするのも、日本で多数決や選挙で物事を決める慣行を最初に定着させたのが各地の大寺院だったからだ(利光三津夫ほか著「満場一致と多数決」)。僧徒数が少ない時は、紙に記された賛否の表題や候補者名の上に点などの印をつける形で投票が行われた▲点などによる投票を書き入れていく紙は「合点状」と呼ばれた。そう、今は承知するという意味となった「合点」である。「がってん承知」は日本の民主的意思決定の原点だったらしい。今や日本中で書き入れられる「点」を合わせて決められるこの国の未来である▲来月10日の投開票にむけて第24回参院選が始まる。すでに安倍晋三首相が「新しい判断」を理由に消費増税再延期を表明したことで火ぶたを切った選挙戦である。増税延期の「信」を問うという選挙は前にもあったが、その後を知る有権者の反応は当時と同じだろうか▲野党は、民進、共産、社民、生活が1人区で候補を統一する共闘態勢を組んだ。こちらは改憲派が憲法改正の発議に必要な議席の3分の2を占めるのを阻止するのだとして憲法問題の争点化を図る。候補者選びの基準となる争点も自分で見定めるのが今の選挙である▲18、19歳の有権者を迎える初の国政選挙だ。釈然とせぬ点、だまされていまいかと思う点は合点のいくまで問いただした上で投じたい1点、いや1票である」
▽日経・春秋 (中国では「被」の意味が変わりつつある)
(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO03907700S6A620C1MM8000/)
「「被」という漢字には「~される」といった受け身の意味がある。何をいまさら、とおっしゃる方も多かろう。では、発祥の地である中国で近年、微妙なニュアンスを帯びるようになったのは、ご存じだろうか。「本当は違うのに、したことにされる」。そんな含みだ。 ▼たとえば「被失踪」。天安門事件が起きた6月4日の前後など共産党政権が神経をとがらせる時期に、当局は民主活動家や人権活動家を地方に連れ出したり外部と連絡できなくしたりする。そんなとき、ネット空間では「失踪したことにされた」との表現が飛び交う。だいたい数日のうちにもとに戻るが長引くこともある。 ▼先ごろ東南アジア諸国連合(ASEAN)の外相たちは、南シナ海での中国の動きを批判する声明を発表した。ところが、わずか数時間後には撤回に追い込まれた。親中的なカンボジアなどが強硬に撤回を主張したためだとみられるが、結果として、中国に批判的な声明は「最初からなかったことにされた」といえようか。
▼中国の国内だけでなく、外交の面でも「被」という漢字が存在感を発揮し始めたような印象を受ける。オランダにある常設仲裁裁判所は近く、南シナ海をめぐる中国の主張について判断を示す見通しだ。結果はどうあれ受け入れないと、中国は表明している。仲裁裁判所の判断までも「なかったことにされる」のだろうか」
▽産経・産経抄 (参院選と中国の民主化)
(http://www.sankei.com/column/news/160622/clm1606220002-n1.html)
「1972年9月、日中国交正常化のために訪中していた田中角栄首相の一行はある夜、毛沢東主席の家に案内される。「(周恩来首相との)喧嘩は済みましたか」。会見は、毛主席が日中首脳会談を「喧嘩」に例える有名な言葉で始まった。 ▼2人の間で、こんなやりとりもあった。毛「日本には選挙があって大変ですね」田中「25年間に11回選挙をしました。街頭演説もやらなければなりません」(『田中角栄と毛沢東』青木直人著)。 ▼確かに共産党一党独裁の下、指導者は選挙の結果や世論調査の動向に一喜一憂する必要はない。そんな中国で広東省の烏坎村は、「普通選挙の村」として有名である。かつてこの村では、幹部による公有地の不正売却が発覚し、暴動が起きた。地元当局は4年前、特例として村民の直接投票による村長選挙を認めた。選ばれたのが林祖恋氏である。 ▼もっとも「烏坎に続け」と各地で住民が立ち上がると、ことごとく鎮圧された。烏坎村でもまだ土地問題は解決していない。林氏が当局に抗議する村民集会を計画したところ、治安当局に連行されてしまった。現地では、反発する村民と当局の対立が続いているようだ。▼「一国二制度」の下で高度な自治が保障されているはずの香港に対しても、習近平政権は、圧力を強めている。来年の香港行政長官選挙について、2014年に中国政府が打ち出したのは、民主派を事実上排除する、名ばかりの「普通選挙」だった。これが、「雨傘運動」と呼ばれた街頭占拠デモの発端である。
▼第24回参院選が今日、公示される。18歳と19歳が有権者となる、初めての国政選挙である。世界を見渡せば、投票に行きたくても行けない若者がいる。まずそれを肝に銘じてほしい」
▽東京・筆洗 (参院選)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016062202000133.html)
「<頭巾屋は、ガイウス・ユリウス・ポリュビウスを二人委員に推薦します>。イタリア・ポンペイ遺跡で発見された「選挙広告の書かれた壁面」の中にある宣伝文句である▼「ポンペイの壁画展」(本紙主催、七月三日まで)で知った。描かれたのは紀元後五〇年から七九年の間で、ポンペイの最高公職者「二人委員」を決める選挙用の広告だそうだ▼参院選の公示日である。選挙権年齢が十八歳以上となって初の国政選挙である。気になるのは新たに選挙に加わる若者たちの投票率である▼最新の意識調査によれば、十八、十九歳有権者で投票に「必ず行く」「行くつもりだ」は56%。高いといえば、高いのだが、お初の選挙であることを考えれば、高揚感のある数字とも思えぬ。この手の調査には自分を良く見せたいと回答する傾向もあろう。疑り深い小欄の杞憂ならばよいが、実際はもっと低いかもしれぬ▼若者に、関心を持てとか一票の大切さを一方的に説く気はないが、選挙はおもしろいとお薦めしたい▼選挙用ポスターの掲示板を見ていただきたい。いろいろな顔をした人がいる。主張は違っても、どなたも真剣で、この国を少しでも良くしたいと願い、意見をぶつけ合う。訴える。中には叫び、怒り、泣く人もいる。選挙はむき出しの人間の闘い。おそらく、あの古代ローマの頭巾屋も。選挙に興味が湧いてこないか」
朝日と日経以外が参院選で競作となった。どれも悪い意味で新聞らしい。手堅すぎて面白くないが、東京新聞は19、18歳有権者の低投票率を懸念しているが、それは全体に敷衍されるような気がして仕方がない。史上最低は1995(平成7)年の44.52%だが、上回ってもおかしくないはずだ。
■―――――――――――――――――――― 【写真】6月21日に日本記者クラブで開かれた9党党首討論会(日本記者クラブ公式サイトより)
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2016年6月22日
【完全無料記事】113回きのうの1面〈高浜原発延長許可〉6月21日一般紙
6月21日朝刊のテレビ欄で、朝の情報番組は次のような内容紹介となっていた。
▽あさイチ(NHK) ・①夏に!〝マイボトル〟活用法 モデル必携の飲み物! 渋茶が裏技でピカピカ
・②北海道・出たトコ! 絶景旅
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・参院選の直前に決断…蓮舫氏が都知事選不出馬の意向 ・同僚に薬飲ませ? 橋から落とした女逮捕 ・70代女性のベッドへ25歳介護職員わいせつ
・寝苦しい梅雨も快眠 眠りのプロ㊙テク伝授
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・出入り禁止を逆恨みか居酒屋壊す!! カメラに一部始終 ・英国がEU離脱で大揺れ!! 日本へどんな影響
・目黒駅に突如ウルトラマン現る
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・舛添氏〝最後の登庁〟花束もなく…美術品は あの約束どうなった ・〝プチ整形〟トラブル まさかの失明も…なぜ
・堀北真希に妊娠報道
▽なないろ日和!(テレビ東京) ・目指せ! 冷蔵庫の達人 ・①知って得する収納術 野菜…長持ちの裏ワザ
・②最新! 売れ筋冷蔵庫 驚きの高性能!!
▽とくダネ!(フジテレビ) ・①29歳女 25歳友人女性を橋から60㍍下に落とし殺害か 交際男性も睡眠薬で… ・②舛添知事きょう辞職 隅田川花火思わぬ余波
・③クマ凶暴化…なぜ?
では新聞はどうだったのか。2016年6月21日付(火曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「原発「60年運転」容認 高浜1、2号機 20年延長決定 規制委」 ▽朝日新聞(約710万部) 「40年超原発 延長を初認可 規制委 高浜2基 60年運転 解/説 抜け道の懸念 現実に」 ▽毎日新聞(約329万部) 「高浜原発 40年超運転 20年延長 規制委、初認可」 ▽日経新聞(約275万部) 「パート賃上げ 正社員越え 流通・外食、今年2.20% 深刻な人で不足映す 業種により温度差 バイトも上昇 派遣料金上げ 世帯収入増も」 ▽産経新聞(約161万部) 「「野良ロボットが参政権要求」総務省研究所 指摘 AIのリスク 反乱など20項目」 ▽東京新聞(約51万部)
「「40年廃炉」なし崩し 老朽原発 初の延長認可 高浜1・2号機 最長で20年 改修に3年必要」
日経と産経のブロックとは珍しい気がする。高浜原発1、2号機の延長認可問題だが、東京のリードが分かりやすい。
<四十年廃炉が原則だが、条件を満たせば一回に限り二十年の延長が認められる。延長は「例外中の例外」とされてきたが、初の適用例が決まった。ただ、再稼働するには、大規模な改修工事が必要で、三年ほど先になる見通し>
大規模な改修工事が必要なら、廃炉にして建て直せばいいのにと考えるのは素人だからなのだろう。
ブロックの1つを担った産経だが、1面にするかどうかの判断はさておき、内容はかなり興味深い。総務省情報通信政策研究所の想定した主なリスクを引用させて頂く。
・人型ロボットが「振り込め詐欺」の引き出し役などに使われる ・廃棄された「野良ロボット」が徒党を組んで参政権などを要求する ・ハッキング攻撃によりロボットやAIが不正に操作される ・五感を備えた遠隔操作ロボットにより外国人テロリストが入国審査を受けずに流入する ・個人の脳と連携したAIやロボットが不正操作で犯罪に使われる ・自動運転車が制御不全に陥る ・遺伝子をもとに故人を再現するロボットによる倫理的な問題
・ロボットやAIによる個人情報収集で誤った情報が拡散する
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(参院選)
「濁音の表現は不快感を誘うことが多いという。国文学者の池田弥三郎さんによれば、「さま」を濁らせた「ざまあ見ろ」や「かに」(蟹)を濁らせた「がにまた」(蟹股)は、その心理を応用した悪口の一例という◆国語辞典をひらくと、少し手前には濁音仲間の「下策」(へたな策略)がいて、少し後ろには「ゲス」がいる」
「「下策」や「ゲス」を見極める熟慮の季節を前に、体力の養えそうな一句を。<暮れなづむ夏至ビフテキの血を流す>(松崎鉄之介)。ビフテキ。故障もちの胃袋を持つ身には、時どき夢に出てくる濁音である」
▽朝日・天声人語
(憲法改正と参院選)
「ペットショップに入った。いいプードルがいますよ、これ以上の犬はいないですよと言われた。たしかに可愛くてすぐ契約書にサインしたが、問題があった。ドーベルマンを抱き合わせで買わなければならない契約だというのだ▼こんなひどい見せは、現実にはない。しかし政界には、どうも似たような手法があるらしい」
「自民党には憲法改正草案がある。ここは平易に解説した副読本を選挙用に新たに作ってはどうか。草案を独自に解説した新刊「あたらしい憲法草案のはなし」(太郎次郎社エディタス)が参考になるかもしれない▼憲法の精神を示す前文が「日本国民は」でなく「日本国は」から始まるよう変更するのは「国民を必要以上につけあがらせてはいけない、という考えによるものです」。9条に明記する国防軍のことは「世界じゅうのどこへでも国防軍は出かけていってよいのです」▼戦後すぐ、文部省が作った「あたらしい憲法のはなし」のパロディーである。本家は、こう書いた。「(憲法が)じぶんの身にかかわりのないことのようにおもっている人はないでしょうか」」
▽毎日・余録 (イギリスEU離脱問題)
(http://mainichi.jp/articles/20160621/ddm/001/070/156000c)
「1869年に英国首相グラッドストンはビクトリア女王に書簡を送った。「英国は(欧州で)その時々に生じる事態に、自己の義務が何かを決める手段を自己の掌中にしっかり握っているべきだ」▲「栄光ある孤立」とは19世紀後半から20世紀初めの英国外交を表すものとして19世紀末に使われ出す。当時の欧州の平和は英、仏、独、露、オーストリアの勢力均衡によって保たれ、英国はどの国とも同盟を組まずにいた。5大国のバランサーの役割を果たしたのだ▲日英同盟以後、英仏、英露の協商が組まれたのは、欧州中央に従来の勢力均衡を破壊するドイツの巨大パワーが台頭したからだった。第一次大戦は欧州に惨禍をもたらし、英国は勢力均衡に代わって国際連盟による平和維持を図った。だが、それもナチスが破壊した▲まさか欧州大陸からの21世紀版「栄光ある孤立」をめざすというのか。欧州連合(EU)からの離脱の是非をめぐる国民投票が23日に迫り、残留派女性議員殺害事件による中断から再開した両派の運動も熱を帯びる。各世論調査の平均は双方互角の形勢を伝えている▲もし離脱となれば英経済はもちろん世界経済にも破滅的な悪影響を及ぼす国民投票である。これに対し離脱派は移民への反感を追い風に、残留派が経済的なリスクを過大評価していると反論する。この投票結果が他の欧州諸国のEU離脱派に及ぼす影響も小さくない▲2度の大戦を経て手にした自由で平和な統合欧州の繁栄にもかげりが生じている今日である。しかしそこに背を向ける英国の「孤立」に、歴史を逆戻りさせる自己陶酔以外の「栄光」はあるのか」
▽日経・春秋 (ラマダンとテロ)
(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO03859030R20C16A6MM8000/)
「イスラムの世界はいま日の出から日没までの間、飲食を断つラマダンの期間に入っている。先日、東京都内のモスクを訪ねると、日没後にとる食事の準備が始まっていた。食材の香りや食器の音がする。抱いていた「修行」のイメージとは違い、明るい雰囲気を感じた。 ▼礼拝にはビジネスマンや留学生など様々な人たちが集まってくる。1日5回のお祈りは大変ではと思っていたが、「体のために1日3回の食事をします。心のための1日5回の礼拝も同じ」とのことだった。小学校帰りの兄弟と思われる幼い子どもが2人やって来て、兄が弟にお手本を示しながら礼拝の作法を教えていた。 ▼過激派組織「イスラム国」(IS)はラマダン期間中のテロを呼び掛けているという。昨年もこの時期にテロが相次ぎ、今年も米国でISの影響を受けたとされる男による銃の乱射事件が起きたばかりだ。詳細はなお不明だが、事件の本質は、暴力を用い問答無用で自分の主張を押しつける身勝手な姿勢にあるように思う。
▼モスクの男性に問うと、「テロは間違っている。戦い、克服すべき相手は我欲」との答えが返ってきた。相手の立場を理解しようとせず、力ずくで封じ込めるような土壌が日本でも広がってはいないか。「異文化」だと思っても実際に触れ、話を聞けば「なるほど」とうなずくことは少なくない。努力を怠ってはなるまい」
▽産経・産経抄 (イギリスEU離脱問題)
(http://www.sankei.com/column/news/160621/clm1606210003-n1.html)
「英国は欧州連合(EU)に残留するのか、離脱するのか。国民投票まであと2日と迫った。離脱派のリードが続いてきた世論調査で、このところ、残留派の巻き返しが目立つ。 ▼言うまでもなく、中部の町バーストールで起きた銃撃事件の影響が大きい。殺された労働党の女性議員ジョー・コックスさん(41)は、残留を強く訴えていた。現場付近は、古くから多くのイスラム系の移民が住んでいる。白人社会との交流は少なかったらしい。 ▼もともと難民問題に取り組んでいたコックスさんは、両方のコミュニティーを頻繁に訪ねて、融和に努めてきたという。そんな彼女をたたえる声が、離脱派の勢いを止めつつあるようだ。 ▼警察は犯人の男(52)について、移民を敵視する極右思想との関連を捜査している。男が犯行時に叫んだとされる「ブリテン・ファースト」は、「英国を優先しろ」と訳されていた。英国の主要部をなす大ブリテン島を指すブリテンは、一般的には、北アイルランドを含めた英国そのものを意味するからだ。 ▼「大海原を統治せよ」。英国の第二の国歌といえる「ルール・ブリタニア」は、ブリテンを擬人化した女神ブリタニアが高らかに歌い上げられている。ただ、その一部であるスコットランドには、英国からの独立を望む声が根強く残る。
▼2年前に行われた住民投票では、独立反対が多数を占めた。英国がEUから離脱すれば事情はまったく変わってくる。経済的にEUとの結びつきが強いスコットランドでは、再び英国から独立して、EUへの加盟をめざす機運が高まる。ブリテン=英国でなくなる日が来るかもしれない。そんな事態を避けるために、英国人が本来の現実主義を取り戻しつつあるのではないか」
▽東京・筆洗 (博物館から金塊を盗んで造幣局の職員逮捕)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016062102000136.html)
「「日本侠客伝」「仁義なき戦い」などの脚本家、笠原和夫さんが娯楽映画のシナリオを書くコツを教えている。題して「シナリオ骨法十箇条」。これを守れば、観客の関心をつかんで離さぬシナリオができあがる。「骨法その三」は【オタカラ】である▼主人公にとって何ものにも代えがたいほどに大切なモノのこと。これが敵味方の間でサッカーのボールのように奪い奪われていると、ドラマの核心が観客に理解されやすくなる。<とりわけアクション映画の場合、「オタカラ」は必須>と書いている▼金塊は「オタカラ」の中でもとりわけよく使われる。映画好きなら「黄金の七人」「ミニミニ大作戦」などがすぐ挙がるか。その輝き、ずっしりとした重さもドラマのアヤになりやすいのだろう▼造幣局の博物館から金塊が盗まれた事件である。約六千三百八十万円相当、重さ約十五キロと聞けばアクション映画じみていて、手口も気になるが、何のことはない。逮捕された容疑者はその造幣局職員。職場のオタカラに目が眩んだか▼かつて小判などを製造した金座。職人の退出時は服を脱がせ、髷の中やうがいで口の中も検査したと聞くが、今回、こうもやすやすと持ち出されるとは造幣局も随分、ずさんな管理をしている▼動機はFXでの損失と聞く。地味でも、まっとうに暮らす。それこそが本物の「オタカラ」だったのに」
イギリスのEU離脱問題で日経と産経が競作となった。面白いのは産経の方だが、専門家が内容を読むと、どんな感想を持つのか。イングランドやスコットランド、アイルランドの人々が、どれほど「ブリテン」の枠組みを重要視しているのかは、なかなか日本人には分かりにくいはずだと思うのだが。
■―――――――――――――――――――― 【写真】延長を認可した原子力規制委員会(委員会公式サイトより)
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2016年6月21日
【完全無料記事】112回きのうの1面〈改憲議論先送り〉6月20日一般紙
6月20日(月)朝刊のテレビ欄で、朝の情報番組は次のような内容紹介となっていた。
▽あさイチ(NHK) ・①答えます〝おりもの〟の悩み におい・量・下着汚れ がんのサインの見分け方
・②廃品回収トラブルにご用心
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・女性監禁 電車内で熟睡中に狙う「お姫さま抱っこで」目撃者明かす男の手口 ・アモーレ長友に出題 分かる? 平愛梨クイズ ・どうなる…都知事選 18歳に聞くポスト舛添
・行列ローストビーフ
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・電車で熟睡女性を自宅監禁! 手口は
・都議団リオ視察に1億円なぜ
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・なぜ? 119番 イタ電 600回女がまた逮捕 ・ネコ丸のみ!? 巨大怪魚 ・密着! 黒木瞳故郷へ
・テレビ初公開! 僧侶と巡る鎌倉のアジサイ
▽なないろ日和!(テレビ東京) ・梅雨は掃除のチャンス カビも汚れもピカピカ 酢でヌメリが取れる?この時期にも結露が?
トイレ芸人奮闘
▽とくダネ!(フジテレビ) ・①監禁男 狙いは〝泥酔女性〟か 自宅布団に〝抱っこ〟 ・②飲食店でセクハラ男「出入り禁止」で逆ギレ 嫌がらせ一部始終映像
・③急転〝ポスト舛添〟
では新聞はどうだったのか。2016年6月20日付(月曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「参院比例選 投票先 自民35% 民主12% 内閣支持率低下49% アベノミクス評価8ポイント下落 本紙世論調査」 ▽朝日新聞(約710万部) 「海兵隊撤退求め決議 沖縄県民大会 元米兵事件に抗議 自公、参加せず」 ▽毎日新聞(約329万部) 「改憲 次期国会で議論 首相 参院選争点にせず ネット党首討論」 ▽日経新聞(約275万部) 「リスク資産に最大6兆円 ゆうちょ銀、運用難で 不動産やインフラ 代替投資 公的年金も7兆円」 ▽産経新聞(約161万部) ※企画連載『検証 文革半世紀 第2部 動乱が変えた運命①』「紅衛兵世代 中国を動かす 「暴力信仰」横の連携で出世」 ▽東京新聞(約51万部)
「安倍首相「次の国会から改憲議論」参院選後 具体的に条文審査」
毎日と東京が憲法改正問題で重なった。「次の国会から改憲論議」との先送りは、自民党の名が泣くと思うがどうだろうか。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(青少年の健全育成などに取り組んできた仏教者を検証する正力松太郎賞)
「お寺の評判が、最近どうもよろしくない。「多額のお布施を求められた」といった不満はよく聞くところだ。だが、良い話よりも醜聞の方が広まりやすいのは人の世の常。立派なお坊さんが消えたわけではない」
「全国のお寺は7万超。意外なようだが、5万余とされるコンビニ店より多い。はやりの言葉でいえば、お寺は地域の共同体にとってのレガシー(遺産)だ。志のあるお寺さんの頑張りを応援していきたい」
▽朝日・天声人語
(待機児童問題)
「「『子ども』は、今や聖域の中のイキモノなのだ」。コラムニストの中野翠さんが「サンデー毎日」にそう書いたのは、1987年のことだった。皮肉を込めて。タレントのアグネス・チャンさんが子どもをテレビ局などの仕事場に連れて来る、それを批判した文章だった」
「中野さんは、アグネスさんが本気で託児所を求めるなら「まず自分の会社で実現してみたらどうか」とも書いた。見回せば、企業が託児所を持つのはそう珍しいことでなくなった。自治体も、保育施設の確保に懸命に取り組む▼しかし施設や制度を支える私たちの心持ちはどうだろう。仏を作って魂が十分に入らないのは寂しい。いや、魂がなければ仏づくりはままならないと言うべきか」
▽毎日・余録 (沖縄県民大会/沖縄女性殺害死体遺棄事件)
(http://mainichi.jp/articles/20160620/ddm/001/070/134000c)
「天からの恵みを受けてこの世界に生まれたわが子よ、わたしが守り育てる−−。沖縄出身の歌手、古謝美佐子さんが歌う「童神」は授かった子供を母親が優しく包み込むようにあやす曲だ▲強い陽光が注ぐ会場に、彼女の歌が響き渡った。沖縄県うるま市の女性会社員(20)が殺害された事件で大規模な県民大会がきのう那覇市内で開かれた。被害者の無念、わが子を奪われた親の思いを参加者は自分のことのように感じている▲事件はもう一つの悲しみも生んだ。容疑者の米軍属と日本人の妻との間には生まれて間もない子供がいる。「この子には何の罪もない。これからどうやって生きていくのでしょうか」。そう案じる沖縄の人たちの声を聞いた。この子は基地があったから生まれてくることができた。そして基地がなければ事件は起きなかった▲遺体が見つかった現場の近くを訪れ、花束を供えて手を合わせる人が絶えない。まだ若かった女性の死を悼むからだろう。ピンクや薄紫のかわいらしい花が目立つ。一方、容疑者の家は静まりかえり、訪れる人はいない。5月には窓にこいのぼりも飾られていたという▲戦後の占領期には本土の各地でも進駐軍の兵士らによる事件が多発した。髪や肌の色の違う子供が生まれ、親に育てられず孤児になった子も多い。戦後70年が過ぎた沖縄は今なお、終戦直後の日本の影を独り背負い続けている▲県民大会で古謝さんが歌う「童神」を聞きながら涙を流し、黙とうをささげる人も多かった。怒りの底にある深い悲しみを本土はどれほど感じられているのか。同じ日、被害女性の四十九日の法要が営まれた」
▽日経・春秋 (梅仕事で落ち着きながら、英国民投票と参院選の結果を待とう)
(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO03809230Q6A620C1MM8000/)
「「梅雨」をバイウと読むと、なんだか物々しくなる。誰もがふだんは「つゆ」と呼び、バイウの出番は梅雨前線という言葉くらいだろう。辞書を引けば「黴雨」なる表記も出ているが、黴とはカビだ。字づらが良くないから梅の字を当てるようになったという説がある。 ▼その真偽はともかく、6月の雨景色に梅の実がよく似合うことだけは確かだ。スーパーには青々とした実が山積みにされ、それが徐々に黄色みを帯びたものに変わっていく。さあ梅酒を仕込もう、梅干しをつくろうという人は多いらしく、ガラス瓶や氷砂糖、焼酎が売り場に一緒に並んでいるのもこの季節の風物詩だろう。 ▼実際にやってみれば、これがじつに愉快な仕事である。ホワイトリカーに浸った大粒の実は日々、色合いを変える。塩を投げ入れた瓶のほうでは、澄みきった梅酢がじわじわ上がってくる。出来合いが幅をきかせる時代に、なんと貴重な体験か。梅にまつわるこういう地道な作業いっさいを昔は「梅仕事」と言ったそうだ。
▼今週あたりから梅雨前線は本領を発揮しそうな様子だ。そんななかで参院選が公示され、英国からは欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の結果が報らされよう。世情は揺れ、どうにも落ち着かないが、ここはじっくり事にあたりたいものだ。「青きより出でて琥珀の梅酒かな」(福井まさ子)。慌てず騒がず――」
▽産経・産経抄 (リオ五輪)
(http://www.sankei.com/column/news/160620/clm1606200003-n1.html)
「ブラジルのリオデジャネイロの住民はカリオカと呼ばれる。彼らはよく遅刻する。リオに日本から20年間通い続けているケイタブラジルさんは、デートの相手に6時間も待たされた経験をもつ。 ▼ビジネスの場でも、ギリギリになるまで何も決まらない。そこから最終的につじつまをあわせてくるところが、ブラジル人のすごさだと、ケイタさんはいう(『リオデジャネイロという生き方』双葉社)。 ▼そのすごさをぜひ、8月5日に開幕する五輪とパラリンピックに発揮してもらいたい。市内の競技会場や施設の整備は、なんとか間に合いそうだ。ただ、観客輸送の大動脈となる新地下鉄の開通が、当初予定の7月から開幕直前の8月1日にずれ込んでしまった。 ▼中央政界では、五輪そっちのけの混乱が続いている。ルセフ大統領は、政府会計を不正操作した責任を問われて、職務停止となっている。それを受けて、大統領代行を務めているテメル副大統領にも、汚職疑惑が持ち上がった。ルセフ大統領の弾劾裁判は五輪の期間中も行われる。競技場近くで、デモが起きるかもしれない。 ▼何よりブラジルが抱える最大の問題が、経済危機である。財政赤字に苦しむリオデジャネイロ州政府は、非常事態を宣言した。警察官らに給料も払えず、五輪開催の「義務を果たせない」というのだ。期間中には約50万人の観光客が海外から訪れる。果たして治安は確保されるのだろうか。
▼「すべては最後はピザになる」。ケイタさんから、カリオカがよく使う言葉を教わった。オリーブやサラミ、いろいろ具材があっても、ピザになって腹におさまったら同じ。プロセスはどうあれ結果がよければオーライ、という意味らしい。それを願うばかりである」
▽東京・筆洗 (イギリスEU離脱問題)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016062002000129.html)
「その少年にパン屋のおばさんはパンを売ろうとしない。「よそのお店行ってよ。いろいろ言われんのやなのよ」。少年が宇宙人だと、うわさになっているからである。「帰ってきたウルトラマン」の第三十三話「怪獣使いと少年」(一九七一年放映)。覚えている方もいるか▼パン屋の娘さんが少年を追い掛けてパンを渡そうとする。「同情なんかしてもらいたくないな」。娘さんがいう。「同情なんかしてないわ。売ってあげるだけよ。だってうちパン屋だもん」▼脚本は上原正三さん(79)。関東大震災時の朝鮮人虐殺を題材に差別と群衆の恐ろしさを描いた。パン屋はパンを売る。差別や立場を異にする人間への憎しみが当たり前の営みを忘れさせてしまう▼英国で女性下院議員が殺害された。背景には、英国のEU離脱をめぐる意見対立がある。離脱か残留か。対立の中で憎悪に心を失い、異なる意見の人間を消し去ろうとしたか。それは意見対立の解消とはほど遠い▼わが国にも国民同士で意見対立する問題が山積する。日本だけは大丈夫とは言い切る自信がない。銃規制の厳しい英国でも事件は起きた▼意見は意見であって、違いがあろうと、誰かがこの世から消えてよい理由などに決してならぬ。生きるためのパンは意見とは無関係にお互いに差し出す。意見対立を乗り越えていくためのヒントはそこにしかあるまい」
朝日だが、この論旨で中野翠氏のエッセイを引用するのは適切ではないはずだ。あの論争は「子連れ出勤」の是非だったのだから、重なっている部分と、そうではない部分が折り重なっている。筆者は否定するだろうが、「保育園建設に反対する人たち=中野翠」と誤読されかねない。短いコラムのくせにアクロバティックに話題を変えるから、筆者にも読者にも不幸な読み物ができあがる。
東京新聞はいつもつまらないのだから、今後は〝サブカル〟(?)的な題材を頭に持ってきたらいいかもしれない。
■―――――――――――――――――――― 【写真】自民党・憲法改正推進本部『漫画政策パンフレット』の『ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?』より (http://constitution.jimin.jp/pamphlet/)
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2016年6月20日
【完全無料記事】111回きのうの1面〈18・19選挙権〉6月19日一般紙
6月19日(日)朝刊のテレビ欄で、朝の報道番組は次のような内容紹介となっていた。
▽おはよう日本(NHK) ・18歳選挙権が施行
・輝け! 控えの球児たち
▽シューイチ(日本テレビ) ・雨ぬれず 絶品巡る地下道ツアー こだわり肉ハンバーグ&DJコー絶賛フグ麺 ・新都知事選び 町の声は ・最新食グッズ&発売前未来けん玉で中丸絶叫 ・上海ディズニーの魅力
・信じられない砂の彫刻
▽サンデーモーニング(TBS) ・英議員殺害…EU残留か離脱で英国大揺れ ・都知事辞職へ ・米史上最悪の銃乱射 ・ローズ越えのイチロー
・卓球最年少優勝
▽新報道2001(フジテレビ) ・与野党9党首が集結! 参院選へテレビ初対決
・舛添知事辞職…次の顔は? 残された課題は
では新聞はどうだったのか。2016年6月19日付(日曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
(ここまで表示) 【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「東海地震想定 大震法 南海トラフに拡大 政府検討 余地前提から転換」 ▽朝日新聞(約710万部) 「18・19歳 240万人に選挙権 改正公選法施行 「「若者向けの公約 守って」 与野党9党と討論会 各党、政策模索 国会論戦に変化」 ▽毎日新聞(約329万部) ※企画連載 チャイナセンセーション 第3部国境を越える民②「携帯回収業者が窓口 安全求めカネ流出 生き延びる地下銀行」 ▽日経新聞(約275万部) 「新車販売500万台割れ 国内、5年ぶり低水準 今年見通し 車離れ、燃費不正追い打ち」 ▽産経新聞(約161万部) 「闇カジノ問題受け 選手の行動規範 半数見直し 五輪全競技団体 法令順守献酬も」 ▽東京新聞(約51万部)
「米軍保護下 栄養失調や感染症 沖縄戦22収容所 住民6400人死亡 収容ピーク時は33万人超」
日曜の新聞らしく、少し地味(?)な紙面が目立った。話題性がありそうなのは日経だろうか。それにしても以前は「若者の車離れ」が盛り上がったわけだが、もはや「日本人の車離れ」ということなのかもしれない。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(他山の石を忘れた日本人/舛添都知事政治資金問題)
「針の山は地獄で強いられる苦痛であり、針の筵は精神的に居たたまれない状態をさす」 「自社製品の性能偽装が糾弾されている最中に、別の製品のデータをごまかしていたメーカーがある。学校に無償で問題集を渡してきた教科書会社の社員は、同業者の謝礼問題が発覚しても我が身を省みなかった◆針の筵の東京都知事は他の政治家にどう映っただろう
後任を打診される中に、万が一、すねに傷持つ方がいたら、正直に申告するのがいい。さもないと、あとで針千本のまされかねない」
▽朝日・天声人語
(イギリスEU離脱問題)
「それは政治家として、あまりにみっともない「公私混同」だった。支給された経費で自宅を修理したりテレビを買ったり、はてはペットのえさ代をまかったり。どこかの知事の話ではない。2009年、英国で暴かれた国会議員たちの所業である▼」
「16日には残留を訴える議員が殺害される事件まで起きた。議論ではなく憎悪と暴力に身を任せた結果なのか。熟議を取り戻さない限り、どんな投票結果になっても英国の人々は後悔することになる」
▽毎日・余録 (児童労働)
(http://mainichi.jp/articles/20160619/ddm/001/070/136000c)
「「そのこはとおくにいる/そのこはぼくのともだちじゃない/でもぼくはしってる/ぼくがともだちとあそんでいるとき/そのこがひとりではたらいているのを」▲谷川俊太郎さんの詩「そのこ」の書き出しだ。「そのこ」は、西アフリカのガーナで朝から晩まで働いている。チョコレートの原料となるカカオの木に登り、ナタを振るって実を落とす危険な仕事だ。「ぼく」は会ったこともなく、名前も知らない▲児童労働をなくす活動を支援する谷川さんが詩にし、塚本やすしさんが絵をつけて、5年前に絵本(晶文社刊)となった。本の中の「そのこ」は最初から最後まで後ろ姿しか見せない。いつも重い荷物を頭上に掲げている。どんな表情なのか、わからない▲1億6800万人の子どもが働かされているという。世界の5〜17歳の人口の1割以上になる。奴隷状態にある子どもを助け出したり、地域や家庭に子どもを働かす問題や教育の大切さをわかってもらったり、各国のさまざまな団体の地道な活動で少しずつ減ってはいる。だが、歩みは遅い▲詩はこう締めくくられている。「ちきゅうのうえにはりめぐらされた/おかねのくものすにとらえられて/ちょうちょのようにそのこはもがいている/そのこのみらいのためになにができるか/だれかぼくにおしえてほしい」▲安い労働力に支えられた、安価な製品を求めたがる先進国の消費者がクモの正体かもしれない。ならば、できることを「ぼく」に教え、歩みを速めるのは「わたしたち」大人の役目である。国連は、向こう10年で児童労働を根絶させる目標を掲げる。時間は多くない」
▽日経・春秋 (上場企業の手元資金は昨年度末で109兆円と過去最高)
(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO03797040Z10C16A6MM8000/)
「経団連会長を務めた土光敏夫氏は、余生はブラジルで畑を耕しながら送るつもりだった。行政改革の仕事を引き受け実現しなかったが、この国には最も愛着があったという。きっかけは1958年、石川島重工業(現IHI)社長のとき、造船所の建設を決めたことだ。 ▼政情不安などのリスクが大きく、「狂気の沙汰」との声もあったなかでの決断だった。日本からは大勢の技術者を「骨をうずめてこい」と言って送り込んだ。幸い船の建造は伸び、現地の人材養成にも貢献。その後の海外展開の礎になる。苦労が多かっただけにブラジル進出は、経営者として誇れる実績の一つだったろう。 ▼土光氏には倹約家のイメージがある。稟議書にはすぐ目を通し、差し戻す。これを繰り返して経費を当初の3分の1ほどに切り詰めた。しかし、必要な投資には思い切ってお金を使った経営者でもあった。航空機エンジンの工場を建てる際には社員を前に壇上に立ち、拳を机にたたきつけながら事業への意気込みを語った。
▼いまと土光氏の時代とでは経営環境が違う。グローバル化が進んだ現在は景気の先行きへの不透明感が以前より強い。とはいえ、経営者が投資に慎重になりすぎていないかとも思う。上場企業の手元資金は昨年度末で109兆円と過去最高だ。お金は使うべきところには使う。メリハリの大切さはいまも変わらないだろう」
▽産経・産経抄 (18・19歳選挙権)
(http://www.sankei.com/column/news/160619/clm1606190005-n1.html)
「記事を書く際に、平仮名を使うか片仮名を使うかで迷う言葉がある。「つけ」か「ツケ」か。「ちらし」か「チラシ」か。基本的には語源の和洋で書き分ければよいが、読みやすくするために片仮名で書く日本語も多い。その一つが「ビラ」である。 ▼由来は江戸時代の寄席という。町の往来に張られた宣伝の紙が風でびらびらなびく。ゆえに「ビラ」。張り紙やポスターを意味する英語の〈bill〉が転じた、とする外来語説に比べて安直で頼りない。いずれにせよ、読者諸氏には片仮名表記がおなじみだろう。 ▼江戸期のビラは独特の「寄席文字」で芸人の名が書かれ、文化の薫りがあった。当節は激越なアジビラに限らずアンケートを詐称した形式もある。設問に「安保関連法(戦争法)」と記した紙が、宮城県の高校で配られたのは昨秋だった。ビラ事情も油断ならない。 ▼折しも19日に改正公職選挙法が施行され、一部の高校生や大学生ら18歳以上の約240万人が有権者としてルーキーイヤーを迎えた。参院選を控え、高校付近や通学路で生徒にビラをばらまく運動員への対応をどうするか。各地の教育委員会は思案投げ首という。 ▼難解な政治用語が若者を選挙から遠ざけているのか、政治課題を知ろうとしない若者が問題なのかは議論が割れよう。安倍晋三首相が「参院選最大の争点」とする経済政策しかり、安全保障しかり。怪しげなビラも骨っぽい政治課題も「新人」の目慣らしになろう。
▼ビラの外来語説を支える〈bill〉には「つけ」「紙幣、札」の意味もある。18歳以上の新人諸氏は、政策にぶら下がった値札の真偽を見抜く目も養われたい。こと経済政策に関しては、値踏みを誤ると将来世代にツケが回るのをお忘れなく」
▽東京・筆洗 (父の日)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061902000142.html)
「米映画の「黄昏」(一九八一年)にこんな場面がある。長い間、仲たがいしている父と娘がいる。娘は老いた父親との関係を修復したいと考える。「友だちでいたいの」。そう語り、父親のひざにそっと触れる。父親も目に涙を浮かべ顔を伏せる▼父と娘を演じたのはヘンリー・フォンダとジェーン・フォンダ親子である。この二人、映画と同じように確執が続いていた。娘の方は離婚や母親の自殺を父親のせいと考えていた。父親は娘の態度やリベラルな政治的発言を嫌っていた▼仲直りを考えたのは娘の方だった。「黄昏」を読んで映画化の権利を買った。あの場面で、父親が演技以上の涙を見せたことに「もう何もいらないと思った」そうだ。和解できた▼父の日である。仲の良い父と娘、息子には、小欄の出る幕はない。仮にである。父親との関係に悩んでいる方がいるとすれば、この日を利用しない手はない。そう、そそのかしたいのである▼勝手な言いぐさだが、若いあなたの方から年を重ねた父親に手を差し伸べてくれないか。しゃれたせりふのプレゼントもいらない。「元気?」。ただ一本、電話すれば十分だろう▼「(父親に)気持ちを伝えなさい。もう八十歳ですよ。いつまでグズグズしているの」。あの映画でキャサリン・ヘプバーンの母親が娘を叱っていた。急いだ方がいい。この日は年に一度しかない」
競作ゼロで綺麗に割れた。意外に、こういうのも珍しい。また全て低調だが、朝日の序盤は興味深い。イギリスの議員にはクリーンないメージがあると思うが、日本とあまり変わらないのかもしれない。 ■―――――――――――――――――――― 【写真】自民党18歳選挙パンフレット『国に届け』より (https://www.jimin.jp/18voice/kuninitodoke/)
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2016年6月19日
【完全無料記事】110回きのうの1面〈三菱自補償〉6月18日一般紙
6月19日(土)朝刊のテレビ欄で、朝の報道番組は次のような内容紹介となっていた。
▽おはよう日本(NHK) ・ロシア陸上リオ五輪 出場は 為末大さんに聞く ・英議員銃撃続報 ・PTA活動にあえぐ働く親…負担減の模索
・多摩で人気カロム!?
▽ウェークアップ!ぷらす(日本テレビ) ・ついに退場 舛添氏民意に逆らえず 与野党に聞く次は誰? ・18歳選挙権スタート
・上海DLから生中継
▽週刊ニュースリーダー(テレビ朝日) ・「気になる人物10」 ・ポスト舛添は誰だ? 桜井か蓮舫か丸川か? ・イチロー4257安打!! ・45歳〝美魔女〟詐欺
・みそ汁に薬物妻
▽サタデープラス(TBS) ・勝間和代 1カ月6万円節約できる㊙時短生活密着 ・脳が若返る!! 京都の旅
・中尾彬73歳 本気で挑戦
▽めざましどようび(フジテレビ) ・イチロー世界一の軌跡&25年の映像振り返り ・舛添知事会見発言集 あのお金はどうなる? ・そばの祭典で新食感 ・三浦友和の素顔公開
・焼鳥&金賞豆腐散歩
では新聞はどうだったのか。2016年6月18日付(土曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「三菱自、補償1台10万円 燃費偽装4車種 不正は全車種 特別損失計650億円に」 ▽朝日新聞(約710万部) 「三菱自 改ざん9車種 国に報告 燃費不正 全29車種 9車種最大10万円賠償」 ▽毎日新聞(約329万部) ※企画連載『チャイナセンセーション』第3部 国境を越える民①「共産党幹部「子どもに日本国籍を」代理出産で逃避準備 男児の口座へ20億円」 ▽日経新聞(約275万部) 「サムスン、アップルに供給へ 有機EL、スマホ用 普及に弾み 7200億円投じ5割超増産」 ▽産経新聞(約161万部) 「銃撃の女性議員死亡 英、EU残留派に勢い 現地メディア「トーン変わる」 『英国の選択』国民投票6・23 民主主義揺るがした凶弾 煽情的論戦が招いた悲劇」 ▽東京新聞(約51万部)
※規格連載『貧困の「実相」フードバンクかわさきからの報告』【上】「サインなき飢餓 「衣・住」の前に「食」削る」
読売、朝日、日経がストレートニュース。毎日、東京が連載をトップに据えた。産経は両方を半分ずつとした。
読み応えという意味では毎日の企画が群を抜いていた。リードを引用しよう。
<東京都新宿区歌舞伎町を拠点とする「闇の代理出産ビジネス」を利用して、子どもをもうけた中国人依頼主2人が毎日新聞のインタビューに応じた。いずれも中国共産党中央で要職に就く幹部の親族という。子どもは日本国籍を取得しており、30代女性は中国からの逃避準備が目的と証言した。また40代男性は、代理出産で生まれた子どもの口座に20億円超の資産を移したことを明かした>
ストレートニュースではないものが1面トップというのは個人的には苦手なのだが、それを差し引いても極めて興味深い記事だった。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(明日は父の日)
「昭和のコメディアン、フランキー堺さんのお宅には「パパごはん」と呼ばれる料理があった。パパ(=フランキーさん)の好物という意味らしい。エッセーによればご飯にみそ汁をかけたもので、いわゆる「猫まんま」である」
「あずは「父の日」。<毎日が父の日でありし昔かな>(江國滋)。普段は子供たちの好みが優先されがちな食卓にも、その家その家の「パパごはん」が並ぶことだろう」
▽朝日・天声人語
(調律師の世界)
「そのピアノで出なかったのはラの音だけだった。なのに駆け出しの調律師が気負いすぎ、次々に音を狂わせる。ふがいなさに打ちのめされ、涙をこらえる▼宮下奈都さんの小説「羊と鋼の森」にそんな場面がある。全国の書店員が選ぶ「本屋大賞」をこの4月に受賞した」
「当方、弾くことをあきらめて久しい。聴く方も遠ざかっていたが、小説を読んで何年かぶりに家の古いピアノの天板を開けた。中のメモに調律師の方々の名が残る。「羊」の毛に包まれたハンマーと「鋼」の弦が並ぶ小中に見入った」
▽毎日・余録 (東電・第三者検証委員会「炉心溶融/損傷」問題)
(http://mainichi.jp/articles/20160618/ddm/001/070/145000c)
「スルメは縁起が悪いからとアタリメに言い換えるのを「忌み言葉」という。古くは伊勢神宮に奉仕した皇女、斎王の御所で用いられた「斎宮の忌み言葉」があった。神慮をはばかって仏教の用語や不浄な言葉を他の表現に言い換えたのである▲僧侶は「髪長」と反対の意味に言い換えられ、仏を「中子」と呼んだのはお堂の真ん中に置かれているためだった。寺は「瓦葺」、経文は「染紙」である。また死は「治る」、病は「休み」、血は「汗」と言い換えられた▲さて、こちらはどんな“神慮”をはばかった忌み言葉か。東京電力福島第1原発事故当時、「炉心溶融」の言葉を使わぬように清水正孝社長から指示があったという第三者検証委の報告である。代わりに「炉心損傷」が用いられたから、死を治るに言い換える類いか▲驚いたのは、社長が「首相官邸の指示」としてこれを伝えていたという話である。だが報告は「官邸の誰からどう要請を受けたのか解明にいたらなかった」という。早速、当時首相の菅直人、官房長官の枝野幸男両氏からは事実無根との反論が出る成り行きとなった▲炉心溶融を長く認めなかったのも、結局のところ「隠蔽と判断はしない」とした第三者委である。聞き取りは東電関係者に限られ、官邸の圧力の有無はやぶの中に放置されたかたちだ。みごとうやむやにしたのは国家的危機にあって国民の目をくらました責任だった▲不吉な言葉の言い換えは、口に出た言葉は現実になるという言霊信仰に根ざすらしい。日本の原発を動かしてきた文化と組織風土を思えば、何か空恐ろしくなってくる「原子力村の忌み言葉」だ」
▽日経・春秋
(イギリスEU離脱問題)
「英紙に伝説の見出しがある。「英仏海峡濃霧――欧州大陸孤立」。天気によって、大陸の人たちはこんな目にあう。なんと不幸なことか。島国の目線がよく分かると、英国のジャーナリスト、パクスマン氏が「前代未聞のイングランド」(小林章夫訳)で指摘している。 ▼海に囲まれていることで、貿易によって世界の富を集め、大帝国を築いた。安全を守ってくれるのは長い海岸線であり、大陸はただ迷惑なだけだ。孤立こそが強みという「島国妄想」が何世紀にもわたって刻み込まれている。だから「ガリヴァー旅行記」や「宝島」など島を巡る冒険談や財宝探しの物語も生まれたそうだ。 ▼妄想が膨らみすぎたのだとすれば恐ろしい。欧州連合(EU)からの離脱の是非を問う国民投票を前に、残留派の下院議員が殺された。議論は過熱気味だったから、事件の背景に移民流入やEUが政策を決めることへの不満、大帝国への郷愁などがあったのかもしれない。犯人が「英国第一」と叫んでいたとの報道もある。
▼金融市場では動揺が広がっている。英国民は冷静に現実を見てほしい。EUなしで国は立ちゆかない。離脱となると他国も同調する。そういえば大英帝国勲章を受けたアガサ・クリスティーの代表作の舞台も島だった。登場人物が次々に殺され「そして誰もいなくなった」。英国が孤立を選べば、EUを似た状況に陥れる」
▽産経・産経抄 (東電・第三者検証委員会「炉心融解/損傷」問題)
(http://www.sankei.com/column/news/160618/clm1606180003-n1.html)
「「『それは私がしたことだ』と私の記憶は言う。『それを私がしたはずがない』-と私の矜持は言い、しかも頑として譲らない。結局-記憶が譲歩する」。哲学者のニーチェは、こう喝破した。自尊心やうぬぼれは自身の記憶を美化し、都合よく修正してしまう。 ▼東電福島第1原発事故当初、炉心溶融(メルトダウン)の公表が遅れた問題で、東電の第三者検証委員会は16日、当時の清水正孝社長が首相官邸の指示により「この言葉は使わないように」と指図したとする報告書をまとめた。 ▼報告書は官邸の誰が具体的な指示、要請をしたかは解明していない。ところが、当時の首相だった菅直人氏は早速反応し、「指示したことは一度もない」とのコメントを発表した。検証委に対しても「第三者とは言えない」と矛先を向けた。 ▼真相は藪の中だが、記憶が容易に書き換えられるものであるのは事実だろう。例えば菅氏は、東電が第1原発からの全面撤退を検討していたと主張し、平成24年4月の政府事故調査委員会の聴取にこう証言した。「清水社長は私が(全面撤退はダメだと)言ったときに『そんなこと言っていませんよ』なんて反論は一切なかった」。 ▼だが、菅氏はもっと記憶が鮮明だったはずの23年4月には、参院予算委員会で「社長は『別に撤退という意味ではないんだ』ということを言った」と答弁していた。「そういうことではありません」「そういうつもりはないけれども」…。清水氏とのやりとりに関する菅氏の発言を追うと、清水氏の言葉が日に日に弱まり、ついには反論はなかったことになとうっていく。
▼当事者の証言であっても、うのみはできないのが難しい。原発事故対応には、解明を待つ不明点がまだ多い。」
▽東京・筆洗 (東電・第三者検証委員会「炉心融解/損傷」問題)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061802000135.html)
「<アレどこだ? アレをコレする あのアレだ!>は、サラリーマン川柳の秀句。ファジィ(あいまい)という言葉が流行語になっていた二十数年前にはこんな川柳も生まれた。<ファジィ課長 「あれ」「これ」「それ」を連発し>▼さて社長にこう命じられたら、どうするか。「その件は、官邸とあれと、きちんと事前にしっかり、あれしといて」。発言の主は、福島第一原発事故が起きた時の東京電力の社長である▼なぜ東電はあの時、「メルトダウン(炉心溶融)」という言葉を使って事態の深刻さを、国民にきちんと説明しなかったのか。どんな経緯があり、誰に責任はあるのか▼そういう疑問を検証する「第三者委員会」の報告書によれば、五年前の三月十四日、原発の燃料損傷を記者会見で認めることについて、部下から了承を求められた社長の答えが「あれと、あれしといて」だったというのだから、なかなかのファジィ社長だ▼さらにあきれるのは「第三者委」の検証のファジィさだ。真相究明には欠かせぬ当時の官邸関係者や官僚の証言を得ようとせず、事情を聴いたのは東電社員らだけ。過去をしっかり調べ、教訓を現在と未来に生かそうという熱意なくして何のための検証だろう▼原発事故で避難生活を強いられる人が、今なお九万人もいる。いくらあいまいにしようとしても、決してごまかせぬ現実だ」
東電の第三者検証委員会の問題が、毎日、産経、東京の3紙で競作となった。新聞社の名前だけを見れば原発推進VS反原発という構図だが、内容はそれほどでもない。 特に産経は菅直人VS東京電力という図式に対し、〝社是〟である反民主=民進のコラムを書くためには東電に肩入れしなければならないはずだ。 ところが、やはり現時点で「東電の応援」は無理があるようだ。そのためか、いつもの産経抄とは異なり、歯切れの悪い文章が目立つ。
それにしても、第三者委員会の信頼性がどんどん失われていると思っている方は多いのではないだろうか。
■―――――――――――――――――――― 【写真】三菱自動車公式サイトより
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2016年6月18日
【完全無料記事】109回きのうの1面〈英議員射殺〉6月17日一般紙
6月17日朝刊のテレビ欄で、朝の情報番組は次のような内容紹介となっていた。
▽あさイチ(NHK) ・①有村架純 あまちゃん青春時代の春子熱演秘話 映画で新境地 ・②コブクロ新曲熱唱!
・③満島ひかりも生出演
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・詐欺容疑45歳美魔女タレントが逮捕! 素顔は… ・上海ディズニー開園! 続出マナー違反…行列中に小便
・注目の都知事選行方は? 映像を発掘! 蓮舫爆笑…舛添氏から求愛された過去を告白
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・45歳「美魔女」を逮捕 不倫相手と共に詐欺か テレビ映像公開 ・衝撃 クマがラーメン店のドア激突…何が
・舛添氏の疑惑うやむや? 今後は
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・TV多出演45歳美魔女 不倫相手と保育園詐欺 豪遊の私生活 ・米紙が〝SEKOI〟と報道 舛添氏は片付け登庁へ
・ポスト巡り女の闘い?
▽とくダネ!(フジテレビ) ・①逮捕…45歳の有名〝美魔女〟不倫相手と650万円詐欺 ・②ポスト舛添の㊙素顔〝東京の顔〟どう選ぶ
・③「人に笑われて…」大記録! イチロー原点
では新聞はどうだったのか。2016年6月17日付(金曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
■―――――――――――――――――――― 【写真】殺害されたジョー・コックス英労働党下院議員(コックス氏のFacebookより)
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【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「円高加速103円台 金融政策 日米、変更見送り 株485円安」 ▽朝日新聞(約710万部) 「英議員 撃たれ死亡 52歳を拘束 EU残留派支持 離脱懸念 株安進む 円一時103円台」 ▽毎日新聞(約329万部) 「炉心溶融「使うな」指示 原発事故で東電社長 第三者委報告書」 ▽日経新聞(約275万部) 「ドル緊急供給を検討 日米欧、英離脱に備え 市場安定に万全 円、一時103円台 日経平均485円安」 ▽産経新聞(約161万部) 「蓮舫氏 土地事前に意欲 民進 参院転出、近く判断」 ▽東京新聞(約51万部)
「「炉心溶融使うな」社長の指示 4年間公表せず 第三者報告書 把握していた東電事故調」
それぞれニューズバリューは高い記事が並んだ。 誤報となったのは、産経新聞の「蓮舫出馬意欲」だ。ご存知の通り、蓮舫氏は出馬しないことを明らかにした。 東電の炉心溶融問題は、釈然としないことばかりだ。何よりも、特にテレビ局が「官邸の意向」という音声を拾っておきながら、今回の第三者委員会の報告を初報のように報じているところだ。
率直に言って、菅直人も信じられないし、東電と第三者委員会も疑わしい。かといって、テレビ局も片棒を担いでいたのではないかという不信感が芽生えた。こうなると、新聞・通信社が垣根を越えて一致団結し、調査報道を重ねるしかない気もするが、それは正真正銘の夢物語だろう。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(来年5月からJR東日本が「トランススイート四季島」を運行開始)
「狐がおいしそうな葡萄を見つけた。食べたいのだが、高い所にあって跳び上がっても届かない。狐は捨てせりふを残して立ち去る。「こんな葡萄、酸っぱいに決まってるさ!」。イソップ寓話の『狐と葡萄』である」
「最近は年齢のせいか豪華列車の旅よりも、お金を積んでも二度と行けない追憶の旅に心ひかれている」
▽朝日・天声人語
(日清食品の社員食堂「カブテリア」は株価で翌月の昼食メニューが変わる)
「時価総額という指標がある。発行済み株式数に株価をかけ、企業価値を示す数字として使われる。だがグーグル級の企業の価値が50兆円だの60兆円だの言われても、縁遠い身にはピンと来ない▼即席麺でおなじみの日清食品ホールディングス経営陣もこの問題にぶつかった。「5年後に時価総額をいまの倍の1兆円に高める」という目標を掲げたものの、社員に自社株の動きを意識してもらうのが難しい」
「この先もし、世界同時株安の波が押し寄せたらお目玉が延々と続く。社員の体重も減らないかと余計なことを案じた▼カブテリアはきょうが初のご褒美デー。5月末の株価好転を祝い、築地からマグロを取り寄せる。社員の目の前で解体してみせるというから何ともうらやましい」
▽毎日・余録 (イチロー日米通算4257安打へ)
(http://mainichi.jp/articles/20160617/ddm/001/070/130000c)
「「日本で積み上げてきた安打だけでなく、凡打も、ぼくの技術を磨いてくれた」。これは2008年、イチロー選手が日米通算3000安打を達成した時の言葉である。日米の記録を合算することに対する米国での批判を踏まえた発言だった▲「日本で培われた技術でヒットを打っている。ですから18歳や19歳の時に米国に来ていたらなんて発想はない。(日本のレベルは低いの声には)米国でのヒットのほうがペースは早いよと言い返しますけどね」(「自己を変革する イチロー262のメッセージ」)▲それから8年、イチロー選手が日米通算4257安打を放った。ピート・ローズ氏がもつ4256安打の大リーグ記録を超えたのである。偉業を祝福するスタンドの拍手と歓声にイチロー選手はヘルメットを取って応えた▲「この記録をゴールに設定したことはないが、チームメートやファンの方からああいう反応(拍手)をしてもらいうれしい」とは当人の控えめな喜びの言葉である。日米通算記録をめぐる両国の温度差は大きいだけに、周囲からの温かな祝福には格別な感慨があろう▲一昔前はベースボールと野球は別物だなどという米日比較文化論がまかり通った2大野球愛好国である。だがベースボールも、野球も、そのグラウンドには同じ天才と努力を愛してくれる神様がいる。そのことを身をもって示したイチロー選手の4257安打だった▲「ヒットの本数は超えたけど、彼の存在を超えたわけではありません」はマリナーズの球団記録を更新した時の前記録保持者への言葉だ。超えるべき高峰はすでに心にしっかり刻みつけていよう」
▽日経・春秋 (舛添都知事政治資金問題)
(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO03714810X10C16A6MM8000/)
「喫茶店のタマゴサンドについてあれこれ論じていたから、よくあるB級グルメ番組かと思ったほどだ。舛添要一東京都知事への世間の反発がどんどん強まっていた1週間ほど前、テレビのワイドショーでは舛添さんの「サンドイッチ疑惑」を取り上げるのに熱心だった。 ▼突っ込まれていたのは1万8000円の領収書である。政治資金パーティーとして催した勉強会でタマゴサンドを出した。その代金だとする弁護士の説明に、ある番組は「タマゴサンドをそんなに注文する客がいるか」。で、大量のサンドづくりを再現してみせ、かくも大変なのに店側が覚えていないと首をかしげていた。 ▼たしかに不審な点は多々あって、うやむやを徹底検証するのは大事なことだ。もっともそこに反応して世論があれほど高まったのは、多くの疑惑が数万や数十万単位のカネだったからでもあろう。金額がセコい、そしてわかりやすいのである。これが何千万何億何十億だと、ちょっと別世界の話になるからおかしなものだ。
▼セコい不正だって不正は不正だが、気がつけばあちこちにセコくない問題も転がったままではある。あの甘利明さんの一件は結局どう説明されたのか。2020年五輪招致をめぐる「コンサルタント料」の謎は……。世の中がタマゴサンドで留飲を下げているうちに、うやむやの術が効いてくるんじゃないかと心配になる」
▽産経・産経抄 (イチロー日米通算4257安打へ)
(http://www.sankei.com/column/news/160617/clm1606170003-n1.html)
「イチロー選手は2004年、年間安打262本で、大リーグ最多安打記録を打ち立てた。しかし、ケチをつける声もある。ジョージ・シスラーが257本打った1920年当時、試合数は154試合だった。イチロー選手は162試合での達成だから、比較にならないというわけだ。 ▼大リーグ通の医師、向井万起男さんは、イチロー選手は41本、シスラーは33本と、2位選手との差に注目する。統計学の手法も使って、同時代の選手からの「傑出度」をはじき出し、イチロー選手の本当の凄さを証明してくれた(『愛人の数と本妻の立場』)。 ▼そのイチロー選手が、今度はピート・ローズ氏が達成した、大リーグ通算最多安打記録を抜いた。日米での合算だから、もちろん大リーグの公式記録にはならない。イチロー選手が最初から大リーグでプレーしていたら…。昨夜は、大リーグ談議で盛り上がった居酒屋も多かっただろう。 ▼それだけに、ローズ氏によるイチロー選手の偉業を貶めるような発言は、残念でならない。野球賭博問題で、球界からの永久追放処分が解けない、苛立ちのせいだろうか。 ▼通算最多本塁打記録を持ち、現在はイチロー選手が所属するマーリンズの打撃コーチを務めるバリー・ボンズ氏が、興味深い提案をしている。まだ一度も顔を合わせたことのないイチロー選手とローズ氏に、話し合いの場を設けようというのだ。
▼ローズ氏といえば、豪快なヘッドスライディングが売り物だった。もっとも向井さんによれば、意外に盗塁は少ない。俊足で内野安打も多かった、イチロー選手との大きな違いである。日米の安打製造機が、まったく異なる野球観を披露し合う。ファンにとって、たまらないイベントになるだろう」
▽東京・筆洗 (イチロー日米通算4257安打へ)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061702000139.html)
「好投手の投げ合いで、試合は1-1のまま延長戦に入っていた。監督は打席に向かう選手を呼び止め、言った。「あのネットを越えてこい」▼この選手は前の打席で、右翼のネットを直撃する当たりを放ったが、球場が狭すぎてシングルヒットになっていた。ならば、本塁打しかない。そんな指示に選手はニヤッと笑って応え、見事に本塁打を打ってみせた▼この痛快な逸話の主人公は、中学三年だった鈴木一朗選手。今は愛知県内の中学校で校長を務める橋本伊佐美さん(59)が野球部の監督だった時に体験した、イチロー伝説の序章である▼日米通算4257安打を達成したきのう、イチロー選手(42)は、自分の歩みを「僕は子どもの頃から人に笑われてきたことを常に達成してきているという自負がある」と語った。「常に人に笑われてきた歴史、悔しい歴史が僕の中にあって、これからもそれを達成していきたい」と▼記者会見でも「引退するまでに若いチームメートに伝えたいことは?」との質問に、「彼らが(現役を)辞めるときぐらいまで(僕も)やっていたいと思っていますよ」と答えると、記者席で笑いが起きた▼イチロー選手は、「少なくとも五十歳」までは現役を続けるとも言っている。五十一歳の背番号51。思わず笑ってしまいそうだが、その笑いもまた、新たな伝説に向けた活力源にしてしまうのだろう」
コラムはイチローが毎日、産経、東京で競作となった。 だが全紙の中で最も読ませたのは日経だろう。内容は正論だ。
とはいえ、こうした見解・意見を、どれだけ精力的に全マスメディアが報じたとしても、一般有権者の行動というのは全く変わらないに違いない。
2016年6月17日
【完全無料記事】108回きのうの1面〈舛添辞任の翌日〉6月16日一般紙
6月15日(水)の一般紙朝刊は多くの社が「都議会不信任可決 舛添都知事は辞職せず」の1面トップを組み、少し同情の余地があるとはいえ、誤報だらけとなった。結局、15日に舛添知事は辞任。不信任が可決されることも、議会が解散されることもなかった。
そして16日(木)の朝刊が刷り上がったわけだ。ではまず、この日のラテ欄が、どのように朝の情報番組の内容を紹介したのか見てみよう。
▽あさイチ(NHK) ・お役立ち! ・①ヘルシー&簡単! 下ゆで不要のこんにゃく技 ・高崎の火山風パスタ
・②復活セーラームーン 大人気
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・舛添知事 最後の弁 ①2年4カ月何やった? 石原元知事腹心らが通信簿 ②都民に聞く次の知事は誰 ・クマがラーメン店襲撃 店主語る恐怖の瞬間
・ギョウザ女子火付け役 伝授おしゃれ美味名店
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・白川由美さん死去79歳 二谷英明さんと「おしどり夫婦」 友里恵さん悲痛
・舛添氏最後の弁「反省と心残り尽きない」急転辞任の舞台裏
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・一転! 舛添都知事辞職 突然の翻意に「空白の40分間」…数々の疑惑はウヤムヤか
・今度は青学生が! 迷惑行為の動画投稿なぜやまぬ?
▽なないろ日和!(テレビ東京) ・梅雨時の洗濯はこれだ! 部屋干し研究家が指南する㊙極意〜生乾き臭には洗濯前に○○せよ!
こんな干し方も!?
▽とくダネ!(フジテレビ) ・舛添知事ついに「辞職」が決定 ①議会で決断ワケ説明「都民として五輪…」 ②涙の訴え…急転なぜ〝都議会のドン〟説得
③〝ポスト舛添〟誰が
やはり舛添氏の扱いは大きい。
では新聞はどうだったのか。2016年6月16日付(木曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
■―――――――――――――――――――― 【写真】6月7日、都議会で答弁に立った舛添都知事(当時=東京都HPから)
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【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「舛添知事の辞職同意 都議会 知事選7月31日有力 「私が身を引くのが一番」 候補者選考 自・民が着手」 ▽朝日新聞(約710万部) 「舛添氏「自らの不徳」 都知事21日付辞職 政治資金問題「都政停滞」 退任あいさつ 疑惑の説明なし ※企画連載『転落 公私混同の果て 上』語るほど世論反発 相次ぐ誤算」 ▽毎日新聞(約329万部) 「舛添都知事 辞職 「会見なし」核心語らず 政治資金問題で引責 『検証』14日夜 引き返し辞意 自民本部が圧力」 ▽日経新聞(約275万部) 「「心残りの念尽きぬ」舛添知事 辞職決定 与野党、後任選び急ぐ 都知事選 来月31日か8月7日」 ▽産経新聞(約161万部) 「舛添都知事 辞職 「全て自らの不徳」 政治資金問題で引責 21日付議会同意 知事選 7月31日か8月7日 後任選び 与野党迷走 桜井次官は不出馬明言」 ▽東京新聞(約51万部)
「2代続け「カネ」で引責 20日集中審議中止 疑惑棚上げ 舛添知事 辞職 都知事選7月31日か8月7日 後継候補 民進に蓮舫氏推す声 規制法使途制限せず 「第三者に調査権限を」」
2日連続でトップ記事が全紙共通となった。誤報の埋め合わせという意識があったのか、なかったのか。 とにもかくにも知事はいなくなった。 そのためメディアは「次の都知事選では人気投票を止めるべき」「政治資金規正法を改正すべき」「舛添氏は知事を辞めても、疑惑を調査すべき」と正論を報じ続けている。 だが、果たして有権者の反応はどうなのか。
正直、今のところは、舛添氏を知事の座から引きずり下ろす時ほどの情熱やエネルギーは伝わってこない。喉元過ぎれば熱さを忘れるというのは馬鹿のことだと思うのだが、有権者が「聡明さ」を見せる瞬間はやって来るだろうか。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(舛添都知事政治資金問題)
「喜劇王チャップリンは東京で見物した歌舞伎の印象を自伝に書いている。<死の場面になると、俳優たちは急にリアリズムに切り替わるのだ>。直前までバレエのように舞っていたのに、と◆リオ五輪まで知事職に居させてほしい。東京都の舛添要一知事は、涙ながらのリアリズムで都議会各会派の幹部に最後の延命を乞うたという」
「もっと早く、誠心誠意のリアリズムで公私混同の洗いざらいを語っていたならば、幕切れは違っていたはずである◆説明忌避が招いた都知事選の費用は50億円という。<水羊羹喜劇も淡き筋ぞよき>(水原秋桜子)。疑惑が多すぎていまなお筋もつかめぬおふざけ劇の、木戸銭である」
▽朝日・天声人語
(イチロー日米通算4257安打へ)
「米大リーグ出身のタフィー・ローズ氏は日本の球界で13年もプレーした。近鉄時代の年間55本塁打は王貞治氏と並ぶ。記憶に残る大活躍だった▼だが、大リーグの先輩ピート・ローズ氏(75)は最近、米紙USAトゥデーで酷評した。「彼は日本で本塁打55本だが、米国じゃさっぱりだった。米国では花開かず、日本で有名になった選手は何人もいる」▼ずいぶんな物言いだが、これには訳がある。ピート氏の誇る4256本の米最多安打記録が、イチロー選手の日米通算安打に破られそうになっているからだ」
「在米15年、走攻守いずれを見てもとても42歳に達したとは思えない。合算しようとしまいと、その活躍に米国のファンたちも称賛を惜しまないだろう」
▽毎日・余録 (舛添都知事政治資金問題)
(http://mainichi.jp/articles/20160616/ddm/001/070/081000c)
「骨董の世界に「じぶたれる」という言葉がある。品が悪くて感心できぬものを評する言葉で、今少しで本筋の美に到達できず、物欲しげな境地に終わってしまった器物をいう。「じぶたれ茶わん」「じぶたれ道具」という言い方もある▲漢字を当てれば、うぬぼれを表す「自負たれ」だろうと中島誠之助さんの「体験的骨董用語録」(ちくま文庫)は推測する。だが人が眉をひそめるたたずまいの背後にうぬぼれが潜んでいるのは、何も茶器ばかりではない。人間、それも政治家の器についてもいえる▲政治資金の公私混同を追及されていた舛添要一東京都知事が辞職願を提出した。出処進退の出と進は他人の助けがいるが、処と退は一人で決めるものと語った幕末の河井継之助を思い出す場面だが、実際は都議会全会派に背を押されてのすったもんだの「退」だった▲高額の海外出張費用問題から始まった一連の騒ぎである。そこで都知事がくり出す釈明や収拾策がことごとく世の反発と怒り、失笑を買い、騒動が雪だるま式に拡大した成り行きはご存じの通りだ。公私混同への人々の反発の過小評価は、やはり「自負たれ」ゆえか▲こうなれば世の関心は一気に後継の都知事候補選びに移る。振り返れば、2代続けての政治とカネ問題による都知事の辞職である。大量得票の期待できる知名度が決め手となる都知事選の候補者選びだが、政治家としての器の鑑定がないがしろにされてこなかったか▲骨董商がにせものを買ってしまうことを「しょいこみ」、傷を見落として買うのを「粗見」という。都の有権者も自前の鑑定眼を鍛えねばならぬようである」
▽日経・春秋 (舛添都知事政治資金問題)
(http://www.nikkei.com/article/DGXKZO03659050W6A610C1MM8000/)
「巨人、大鵬、卵焼き。ご存じの通り昭和の高度成長期、子どもに人気の高かったものを並べた流行語だ。では五輪、サミット(主要国首脳会議)、ノーベル賞は? これぞ日本人が大好きな、必要以上に騒いでしまう三大国際イベントだ、とする説を聞いたことがある。 ▼もちろん東京都知事の舛添要一さんも、五輪にかける執念には並々ならぬものがあった。政治資金の流用疑惑などで進退きわまってなお、不信任案提出を先延ばしするよう都議会に求め抵抗を続けた。なんとしてもこの夏のリオデジャネイロ五輪に駆けつけ、4年後に向けた五輪旗を引き継ぐ場に立ちたかったのだろうか。 ▼次の開催都市として、五輪前に都政を混乱させたくない。都知事選で舛添さんを支えた自民党も一時はそう考えたようだ。だがトップの公私混同に目をつぶり、死に体となった首長の居座りを許す方が明らかにTOKYOへの信頼を傷つける。追い詰められた舛添さんは任期を1年8カ月残して、都庁を去ることになった。
▼エンブレムや国立競技場の選考をやり直すなど、五輪をめぐるトラブルが収まらない。東京開催に意欲をみせた都知事は、これで3代続けて任期の途中で職を投げ出す形になった。開催地の首長が最大のリスクというのでは、冗談にもならない。「五輪、退陣、また選挙」の三題噺は、今回限りで終わりにしてもらいたい」
▽産経・産経抄 (舛添都知事政治資金問題)
(http://www.sankei.com/column/news/160616/clm1606160002-n1.html)
「甥っ子の満男が、とんでもないことをしでかした。初恋の人、泉の結婚式に乗り込んで、中止に追い込んでしまう。寅さんが説教を始めた。 ▼「男は引き際が肝心だ」「泉ちゃん、おめでとう。どうぞお幸せに、電報一本打っといて、お前は空に向かって、今日一日よいお天気でありますように、無事結婚式が行われますようにと、それが男ってもんじゃないのか」。 ▼今度は説教を聞いていたリリーが怒り出す。「バカバカしくて聞いちゃいられないよ。かっこなんて悪くたっていいから、男の気持ちをちゃんと伝えてほしいんだよ、女は」。映画『男はつらいよ』シリーズ最終作の名シーンである。世の女性はこぞって、リリーの啖呵に拍手を送るはずだ。もっとも、恋々とする相手が地位や役職だったら、話が違ってくる。 ▼東京都の舛添要一知事が昨日、ようやく都議会議長に辞表を提出した。今年3月、大名旅行のような豪華な海外出張が批判されたのが始まりである。以来、毎日のように発覚していた政治資金をめぐる公私混同の疑惑について、納得のいく説明は一つもなかった。 ▼「ここまで耐えてきたのは、リオ五輪で東京を笑いものにしたくないから」。涙で言葉を詰まらせながら、五輪のセレモニー出席への執着を見せる場面もあった。しかし本会議で不信任案可決が確実になり、延命策が尽きたようだ。往生際が悪すぎた。
▼川北義則さんの『引き際の美学』にこんな記述がある。「『みっともない』という感覚があるから、人は自分の言動にブレーキをかけたり、レベルを上げようとがんばる」。舛添氏は頭がいい。行動力もある。機を見るに敏である。「みっともない」という感覚だけ、どこかに忘れて来たようだ」
▽東京・筆洗 (舛添都知事政治資金問題)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061602000144.html)
「さて、お集まりの政治家の皆さん、私、世論コンサルタントのAと申します。ご心配でしょう。あの程度のことで辞職に追い込まれるとは。震え上がっていませんか。中国服はともかく、あまり胸の張れぬ政治資金の使い方をしている方もいると思います。本日は、万一に備えた心構えを無料でお教えいたします▼お手元の資料は、夏目漱石の「虞美人草」です。<数は勢である。勢を生む所は怖しい。一坪に足らぬ腐れた水でも御玉杓子のうぢようぢよ湧く所は怖しい>。今の世論は気味悪きオタマどころか、荒れる竜と考えた方が良いでしょう▼この竜は「正しくない」人間を見つけ、襲います。この場合の「正しさ」とは、法的問題に限らず、道義や倫理上の判断も含まれ、いったん「正しくない」「おかしい」と判断すれば、攻撃をやめません▼皆さんの得意な説明や言い訳も無駄。むしろ逆効果で今回も「トップが二流のホテルに泊まりますか」「不適切だが違法でもない」という政治家には至極もっともな言い訳が致命的でした▼残念ですが、あきらめてください。助かる道があるとすれば問題発覚後ただちに非を認める。謝る。そして祈ることです▼あんまりじゃないかって。社会への不満や政治とカネの問題への怒りが竜の正体だとすれば、同情はできません。なにしろ、竜を産んだのはあなた方、政治家ですから」
何と、朝日以外が舛添辞任で競作となった。だが内容は低調だろう。 読売は、これまでの「実績」があるため、最後でも筆をとった執念が面白いとは言える。 だが、他はひどい。 毎日は気取りすぎだし、日経も産経もおざなりだ。特にいつも以上にひどいのが東京だ。極めて重要な「世論のリンチ」を取り上げるのかと思ったら、「政治家がひどいから自業自得だ」と結論づけてしまった。危険な思想と言うより、単にセンスが80年代で止まっているのだろう。
ブロックを発動させてしまった朝日だが、こちらもオチはつまらない。だが、ピート・ローズが、イチローだけでなく、タフィー・ローズにも文句を言っていたことを知り、驚いた読者もいたのではないか。
2016年6月16日
【完全無料記事】107回きのうの1面〈舛添で誤報だらけ〉6月15日一般紙
6月15日に舛添氏が辞任届を提出したのは、ご存じの通りだ。「提出」の速報はNHKで午前11時すぎ。この日の朝刊には当然ながら、全く間に合っていない。 読朝毎産の4紙にとっては悪夢だったかもしれないが、前日14日の朝刊では朝日と産経が「辞職不可避」と打ち、読売と毎日も辞職を強く滲ませた記事を掲載した。にもかかわらず、舛添氏は最後の最後まで抵抗を続けたのだ。そして明けて15日、朝のテレビニュースでも「舛添徹底抗戦=議会解散の可能性」が報じられるようになった。
では、まだ舛添氏が辞任することを知らない6月15日(火)の朝刊ラテ欄で、朝の情報番組がどんな番組内容となっていたか、見てみよう。
▽あさイチ(NHK) ・①アッキー沖縄旅! 琉球王朝のお城に何が? 地上戦の爪痕 米軍基地の町
・②夏こそ豚肉しょうが焼き!
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・舛添知事 辞職か解散か最終局面 決断いつ? 決め手分析 ・夫のみそ汁に睡眠薬 200錠入れ殺害…逮捕妻の動機 ・父の日商戦加熱…人気ベスト3は ・話題の女子あるある
・嵐大野&波瑠まとめ
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・舛添知事 ①自民も辞職迫るが拒否!! 全会一致不信任へ ②リオまで…涙で懇願! 五輪に執着 奇策シナリオは
・創業応仁の乱!! 老舗のお宝
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・涙声で「リオまでは」舛添都知事に不信任案 辞職かマキゾエ解散か ・みそ汁に薬200錠…夫殺害63歳妻を逮捕
・鈴が呼ぶ!? 人食いクマ
▽なないろ日和!(テレビ東京) ・港町探索 横浜ベイエリアの船旅 シーバス一日乗船券で夜景堪能!!
行列できるパイ専門店や立ち食い中華の欲張り串
▽とくダネ!(フジテレビ) ・舛添知事 辞職? 解散? 運命の日 ①涙の懇願「リオまで不信任案出さないで」 ②〝舛添の乱〟あるか 解散したら…混乱必至
③次の都知事は誰に?
では新聞はどうだったのか。2016年6月15日付(水曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
■―――――――――――――――――――― 【写真】読売新聞の1面
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【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「舛添氏不信任 全会派一致 都議会 きょう決議案可決 知事辞職を否定「9月まで」」 ▽朝日新聞(約710万部) 「舛添氏不信任案 可決へ 都議会 辞職しない場合 与野党、案を一本化」 ▽毎日新聞(約329万部) 「自民も都知事不信任案 舛添氏、辞職応じず 全会派提出」 ▽日経新聞(約275万部) 「自公、不信任案を提出 舛添氏、辞職避けられず 可決なら都議会解散も」 ▽産経新聞(約161万部) 「舛添知事 不信任案可決へ 全会派賛同 きょう審議 都議会 10日以内に辞職か解散 自民も提出、説得拒まれ見切り 涙で「リオまでは」 及び腰に苦情殺到」 ▽東京新聞(約51万部)
「知事不信任案 きょう可決 自民提出 全会派賛成へ 舛添氏の失職確実」
ここまで誤報が並ぶと、圧巻なのは間違いない。後は新聞社に同情するかどうかだが、そこは人によって割れるだろう。 いずれにしても、舛添氏の二転三転に振り回され、むしろ前日14日の1面が正確な記事だったのだから、これほどの皮肉はない。 唯一、朝日新聞が「辞職しない場合」に「不信任案可決へ」と読める見出しを組んだことにより、完璧な誤報は免れた。朝日に限らず、一般紙に腰が引けた見出しや記事が多いのは、勝負を避けるといいことがあるからだ。
ちなみにトップ全紙共通となったが、前は5月31日の消費増税延期の発表だった。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(利根川水系のダム8つの貯水率が5割を切る)
「いまではあまり使われることのない言葉に「雨風食堂」がある。甘辛とりまぜて「菓子、飯、うどん、酒など、なんでも食べさせる食堂」(日本国語辞典)のことという◆雨風に甘辛をかけたシャレなのか、語源は定かではない」
「石川啄木が盛岡中学の頃に詠んだ一首がある。<あめつちの酸素の神の恋成りて水素は終に水となりにけり>。まずは災害を招かない範囲でほどほどに、あめつちの恋愛成就を祈るとする」
▽朝日・天声人語
(後藤晃・東大名誉教授が振り返る「公正取引委員会の課徴金減免制度」=密告推奨の経緯と意外な普及)
「日米韓の同業数社の役員がハワイに集まり、ホテルの一室で不正なカルテルを結ぶ。飼料添加物の価格操作が狙い。一部始終を米連邦捜査局(FBI)がひそかに撮影し、動かぬ証拠を得る。米社が内通していた▼2009年の映画「インフォーマント!」である。俳優マット・デイモンが情報提供者(インフォーマント)を演じてヒットした。実際のカルテルが題材で、味の素など関係企業の名が登場する」
「公取委には800件を越す減免申請が寄せられた。公表された社名を見て驚いた。大手も中小も名門も新興も関東も関西も何でもある。実は日本になじみやすい制度だったようである」
▽毎日・余録 (利根川水系のダム8つの貯水率が5割を切る)
(http://mainichi.jp/articles/20160615/ddm/001/070/181000c)
「芭蕉の弟子の俳人、宝井其角が江戸・向島の三囲神社を訪れたおり、近郷の農民がカネや太鼓で雨乞いをしていた。歌で雨乞いをした小野小町の故事にならい、農民に頼まれて奉納した句が「ゆふだちや田をみめぐりの神ならば」だった▲「田を見めぐる神さまならばせめて夕立ぐらい降らせてくださるだろう」という意味で、「三囲」を「見めぐり」にかけている。五七五の頭に「ゆたか=豊か」を折り込んだのも雨乞いの句ゆえか。翌日さっそく雨が降って評判となり、三囲神社も有名になったとか▲1693(元禄6)年の日照りの時の話だが、関東地方の利根川水系ではこの夏も水不足が心配されている。利根川上流の八つのダムの総貯水量が平年の半分を切り、あすから10%の農業用水や工業用水の取水制限が実施される。国土交通省は渇水対策本部を設けた▲5月の利根川上流の降水量が平年の半分以下だったためで、6月に取水制限をするのは29年ぶりとなる。おとといの東京都心は100ミリ近いまとまった雨が降ったが、北関東の水源地は20ミリ程度にとどまり、水位回復にはつながっていない。天は思い通りにならない▲思い通りいかないといえば、この梅雨の総雨量は西日本で平年より多い見込みという。とくに九州で例年より大雨の恐れがあるというから、熊本地震で緩んだ各地の地盤が心配である。熊本県内だけでも土砂災害警戒区域に2万3000戸以上の住宅がある被災地だ▲降らないと困るし、降りすぎてはいけない梅雨である。人の暮らしを見めぐってほどよく雨を降らせる神の加護(かご)が例年にも増して切実に求められる列島だ。」
▽日経・春秋
(FOMC、金融政策決定会合、英国民投票、そして参院選)
「甲斐(山梨県)、信濃(長野県)、武蔵(埼玉県)の境にまたがってそびえる甲武信ヶ岳は、標高2475㍍と奥秩父山塊を代表する高峰だ」
「日米含め金融当局が息を潜めて待つのが来週の欧州連合(EU)離脱を巡る英国の国民投票だ。7つの世論調査の平均値は離脱46%、残留44%。「英の首相官邸はパニック」と報じられた。市場は動揺気味だ。忘れてはならぬが日本の有権者も来月、進路の選択を迫られる。「不決断こそ、最大の害悪である」(デカルト)」
▽産経・産経抄 (秋田県鹿角市で、熊に襲われたと見られる4人が亡くなった)
(http://www.sankei.com/column/news/160615/clm1606150003-n1.html)
「大正4年に北海道北西部の天塩・苫前村をヒグマが襲い、7人の男女を殺害した。吉村昭さんの長編小説『羆嵐』は、この大惨事を描いたものだ。30年以上前に、ラジオドラマにもなった。女優さんの上げた悲鳴は、今も耳から離れない。 ▼北海道に生息するヒグマの体長は、2メートルを超える。これに対して内地に暮らすツキノワグマは、せいぜい150センチ程度の大きさである。臆病な性格で、人間を怖がる動物とされてきた。ところが近年は、人里まで下りてきて農産物や残飯をあさる、人慣れしたクマも増えている。 ▼秋田県鹿角市の山林で5月以来、男性3人、女性1人の遺体が見つかった。いずれもツキノワグマに襲われたとみられる。女性が発見された現場近くで射殺されたクマを解剖したところ、胃の中から人の肉片などが見つかった。 ▼ツキノワグマは本来、木の実や山菜など植物を常食してきた。たとえ一部でも、人を食べ物として認識し凶暴化しているとすれば、一大事である。鈴やラッパを鳴らして、人の存在を教えて追い払う従来のやり方では、かえって危険を招く恐れが出てきた。 ▼付近の山林では今の季節、ネマガリダケというタケノコが旬を迎えているそうだ。味がよい上、市場にあまり出回らず、高値で取引される。とはいえ、命には代えられない。クマの大好物でもある。心ゆくまで食べてもらって、近づかないのが唯一の対策だろう。
▼ツキノワグマは、本州と四国に生息している。九州では、すでに絶滅してしまった。つまり九州の人たちは、クマの被害に遭うことがないから、よけいにかわいらしく感じる。熊本県のマスコットキャラクター「くまモン」が生まれ、人気を呼ぶ背景には、こんな地域の特性もあるらしい」
▽東京・筆洗 (参院選)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061502000129.html)
「<気をつけよう、暗い言葉と甘い道>。うん?と目を留めた方は注意深い方である▼安全標語の「甘い言葉と暗い道」とはちょっと違う。思想家の内田樹さんはこの「暗い言葉」の方を自らを戒める標語としているそうだ▼社会は一気には良くならぬ。「ろくでもない世界」の中で自分の周囲に「気分のいい世界」をこしらえれば、いつかは別の「気分のいい世界」「気分のいいやつら」と出会い、拡大していく。遠回りしているように見えても結局、それが公正で人間的な社会につながるという考え方。したがって「『暗い言葉』を語る人間にはついてゆかない方がいい」(『邪悪なものの鎮め方』)と書いている▼同じ<気をつけよう>の言葉遊びにしても、こっちはかなり攻撃的である。<気をつけよう、甘い言葉と民進党>。作者は無論、安倍首相である。最近の街頭演説で拾った▼参院選で共産党と協力する民進党をあてこすり、国民への警戒を大げさに呼びかける。野党側は、「時代遅れのレッテル」と反論するが、首相にはやはり悪口の才があろう。消費税増税の見送りや一億総活躍社会など自分の甘い言葉はさておき、政策レースであるべき選挙を語呂良き標語で、自民党か不気味な「野合」かの構図に置き換えてしまう▼かくして選挙戦は毎度おなじみ中傷合戦へ。その「暗い言葉」は気分の悪い選挙戦に向かう」
水不足が読売と毎日で競作となったが、基本的にはバラエティ豊かな題材だった。
その割には印象に残るものが少なかったが、どれか1つ選べと言われたら朝日だろうか。少なくとも飲みの席で披露したくなるような蘊蓄性はある印象だ。
2016年6月15日
【完全無料記事】106回きのうの1面〈舛添辞任の前日〉6月14日一般紙
私たちは6月15日(水)に舛添都知事が辞任したことを知っている。そんな観点から6月14日(火)朝刊のテレビ欄を見てみよう。具体的には、この日の午後に舛添氏は辞任勧告を拒否し、とうとう不信任案は提出されなかったという1日だったのだが、朝の情報番組は次のような内容紹介となっていた。
▽あさイチ(NHK) ・①肩こり 腰痛・むくみも改善! 驚き! 簡単ストレッチ かけっこも速くなる!?
・②極上! 〝ふりかけ〟最前線
▽スッキリ!!(日本テレビ) ・優香結婚 公造が調査! お相手の36歳個性派俳優の素顔 ・疑惑追及! 舛添知事VS議員 ①記憶にない…連発で深まる謎 ②辞任避けられず?
・被災地 石原軍団&木村拓哉ら子どもと交流で母親が涙
▽羽鳥モーニングショー(テレビ朝日) ・舛添知事 ①美術品また新疑惑が!! 集中審議で報告書に矛盾も ②潮目変わった…不信任案に与野党は?
・みそ汁に薬物!! 夫死亡で妻逮捕
▽白熱ライブ・ビビッド(TBS) ・舛添知事…深まるナゾ〝ラストチャンス〟の集中審議を徹底検証! 危機管理は ・優香結婚 相手はアノ実力派俳優
・田丸麻紀プチプラ服
▽なないろ日和!(テレビ東京) ・快適生活 今選ぶべきマンション ①気分は高級マンション!! 大浴場&カラオケ完備
②バリアフリー最前線 シニアも安心!!
▽とくダネ!(フジテレビ) ・①舛添氏「全て給料を辞退…」自民都議〝追求〟甘く〝進退〟各党の思惑は
・②小林麻央33歳再入院 海老蔵〝家族への愛〟乳がん闘い…応援の声
では新聞はどうだったのか。2016年6月14日付(火曜日)の日経を含む一般紙の見出しを見てみよう。
■―――――――――――――――――――― 【写真】日本共産党都議団のビラより
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【1面見出し】 ▽読売新聞(約926万部) 「舛添氏辞職論強まる 不信任案 公明も提出検討 野党きょう提出 舛添氏「リオまで猶予を」」 ▽朝日新聞(約710万部) 「舛添知事 辞職不可避 自公、不信任案提出も 集中審議 本人は「時期猶予を」」 ▽毎日新聞(約329万部) 「自民、辞職要求へ 舛添氏「進退、リオ後に」都議会集中審議」 ▽日経新聞(約275万部) 「世界株安・円高が進行 英離脱警戒 マネー萎縮 テロ・政治リスク意識」 ▽産経新聞(約161万部) 「舛添知事 辞職不可避 公明、不信任案提出へ 自民、自発的な決断促す 死亡の出版社社長 面会か」 ▽東京新聞(約51万部)
「舛添知事 従来説明繰り返す 5会派 辞職要求 集中審議 自民は言及せず 給与全額返上の意向 「不信任案 リオ五輪後まで猶予を」 ホテル面会者名語らず」
日経以外の5紙は舛添問題となった。 その5紙の中で、見出しを事実の伝達に留めたのが東京と毎日で、最も無難と言える。 他の3紙は辞職について踏み込んだが、最も巧妙な手を使った、もしくは誤報を恐れて真っ向勝負を避けたのが読売だろうか。 たとえ、この段階で舛添都知事が議会を解散させても、「辞任『論』」が強まっていたのは間違いないからだ。週刊誌や東スポの見出しと似たテクニックだろう。 朝日と産経は「辞職不可避」と直球をど真ん中に投げた。昨日の夜あたりには誤報だったかと焦った関係者はいなかったのだろうか。
日経ブロックが前回に発動したのは4月28日の紙面。他5紙が三菱自動車の燃費不正問題を取り上げた中、IHIの記事を載せて以来となる。
【コラム】 ▽読売・編集手帳
(舛添都知事政治資金問題)
「夏目漱石『草枕』で髪結いの親方が言う。<もしもの事があった日にゃ、法返しがつかねえ訳になりまさあ>法返しは漱石得意の当て字で正しくは「頬返し」、口に入れた食べ物を舌で転がして噛むことである。◆「頬返しがつかない」とは頬張りすぎて噛みも呑みもならぬ様子を言い、転じて、手に負えない事態を指す。政治資金のつまみ食いが過ぎると頬返しはおろか、弁舌もままならぬらしい」
「つまみ食いで頬返しがつかず、目を白黒させた人が首都の顔とは情けない。この文章を書きながら、困った。都知事という役職の頭に、わが指先は「前」の一字を付けたがる」
▽朝日・天声人語
(舛添都知事政治資金問題)
「先月来しばしばテレビに「龍宮城」が映る。といっても浦島太郎が過ごした城ではない。舛添要一東京都知事が政治資金で泊まったスパホテルだ。千葉県木更津市にある」
「言葉で相手をねじふせるのは舛添氏がもっとも得意としてきたことだ。それが今回はことごとく裏目に出る。問題とされた支出の釈明には、およそ誠実さが感じられなかった。能弁でならした知事はすでに龍宮の海でおぼれている。政治の言葉の「信義」を見失ったせいだろう」
▽毎日・余録 (オーランド乱射事件)
(http://mainichi.jp/articles/20160614/ddm/001/070/192000c)
「人が他人に対し攻撃的になるのは欲求不満や不快な感情の表れだが、それだけで実際に攻撃に踏み切るのではない。攻撃行動はその手がかりとなる刺激によって起こるという「攻撃手がかり説」を唱えたのは米心理学者バーコビッツだった▲バーコビッツが行った実験では、欲求不満状況に置かれた人の攻撃性を明らかに高めたのは目の前に銃が置かれた環境だった。銃はそれが目に入るだけで攻撃を押しとどめてきた心の歯止めを取り払い、人を暴力の迷路へと誘い込むあやしいオーラを放つものらしい▲そういうことは十分すぎるほど知り、経験してきた米国社会のはずである。4人以上が死傷した銃発砲事件は今年だけで136件にのぼる。その国にあって、「史上最悪」という乱射事件が起こってしまった。フロリダ州オーランドでのナイトクラブ襲撃事件である▲射殺された容疑者は犯行声明のあった過激派組織「イスラム国」(IS)に忠誠を示していた。またクラブは同性愛者が集まる店だったことから、米国内のヘイトクライム(憎悪犯罪)としての性格もあろう。一匹オオカミ型テロとしてもかつてないパターンである▲鬱屈した憎悪を犯行へ駆り立てた「手がかり」は一つに銃社会という環境、もう一つはISによるテロ扇動という刺激だろう。この事件でオバマ大統領は改めて銃規制を訴えたが、一方でトランプ氏のようにイスラム教徒への差別を正当化しようという反応も現れた▲平和な日常に突然口を開けて人命をのみ込む暴力の「手がかり」を減らすのか、それとも増やすのか。事件が照らし出したのは分かれ道に立つ米国社会だ」
▽日経・春秋
(オーランド乱射事件/イギリスEU離脱問題)
「人の体から摘出された、という銃弾を見たことがある。殺傷力が高いタイプと説明を受けた。間近で見ると、細身のたばこのフィルターほどの大きさで、意外にもきゃしゃな印象なのだった。引き金の操作だけで、瞬時に人命を奪う武器の怖さが、じわりと迫ってきた」
「トランプ氏は「イスラム教徒の入国規制」を改めて訴えた。銃規制に反対の立場だ。2億7000万丁を市民が所持する国は巨大な火薬庫同然にみえる。事件は英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票で「移民に仕事を奪われる」と訴える離脱派を勢いづかせる可能性がある。銃口が世を動かすとは何とも心が重い」
▽産経・産経抄 (オーランド乱射事件)
(http://www.sankei.com/column/news/160614/clm1606140003-n1.html)
「米議会で1934年に制定された連邦銃器法のきっかけとなったのは、当時のギャング団の存在である。マシンガンをぶっ放し、血なまぐさい抗争を繰り広げていた。 ▼クリントン政権下では、新たな銃の規制法「ブレイディ法」が生まれる。81年のレーガン大統領暗殺未遂事件で重傷を負った、報道官の名前が付けられた。しかしその後、「銃なき社会」への動きは止まってしまう。 ▼銃の所持は、憲法で認められている。自分の身を自分で守る。憲法と文化が、銃規制の必要性を訴えるオバマ大統領の前に立ちふさがった。皮肉なことに、深刻な銃犯罪が発生するたびに、銃の売り上げが伸びている。先週末、とうとう最悪の事態を迎えた。フロリダ州オーランドのナイトクラブで起きた銃乱射事件で、死者は49人に達した。犯人の男は、警察特殊部隊によって射殺された。 ▼事件は、大統領選にも大きな影響を与えそうだ。とりわけ共和党のトランプ氏の鼻息が荒い。「イスラム教徒の米国への入国を一時的に禁止する」。かつて物議を醸した自分の発言の正しさが、裏付けられたと主張する。米国生まれの犯人は、アフガニスタン出身の両親のもとで育った。警察にかけた電話には、過激組織「イスラム国」(IS)への忠誠を誓う発言があった。ISも事実上の犯行声明を出している。 ▼昨年12月にカリフォルニア州で14人が亡くなった銃乱射事件も、ISに関連していた。「人を殺すのは人であって、銃ではない」。トランプ氏を支持する、全米ライフル協会のスローガンも後押しする。
▼いや、テロを招いているのは、簡単に銃が手に入る社会の構造である。世界をリードしてきた国で、なぜこんな単純な理屈が通用しないのか。」
▽東京・筆洗 (オーランド乱射事件)
(http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016061402000124.html)
「「荒野の用心棒」などの映画音楽の巨匠、エンニオ・モリコーネさんの元に一本の仕事が舞い込んだ▼当時、大物女優に頼まれていた仕事があったので、断ると脚本を読んでくれとしつこい。一応読んだ。断ることにした。断ったのは大物の仕事の方だった。こうしてイタリア映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(一九八八年)の音楽を担当することになった▼脚本を読んだだけで作品の良さが分かったという。<素晴らしいのはキスを通して映画の歴史を語ろうというアイデアだった>。筋は明かさないが、ラストは過去の映画作品のあまたのキスシーンによって編集されている。キスに次ぐキス。またキス。見ているだけで温かい物のおすそ分けにあずかり、人間の営みとは必ずしも悪いことばかりではないと信じたくなる▼キスシーンが引き金になった可能性があると聞き、沈黙する。四十九人が死亡した米フロリダ州の乱射事件である。同性愛者に人気のクラブが標的になった▼容疑者は数カ月前、男性同士がキスをする光景を見て激怒していたという証言がある。「偏見」という歪んだ眼鏡で見れば、情愛あふれる光景にさえ憎悪をかき立てられるのか▼銃を置く。当然とはいえ、その前にできるのはその眼鏡を捨てることであろう。人がキスしている。そのまま見る。尊く、温かく、切ない姿しか映らぬはずである」
真っ二つの競作になったのは極めて珍しい。 舛添問題を読売と朝日が選び、オーランド乱射事件を毎日、日経、産経、東京が書いた。 ただ内容は総じて低調で、いかにも新聞的なコラムの枠内を出ない。
印象に残ったのは産経のストレートな怒りと、読売の「前」という不気味な予言(?)だろうか。特に後者は積極的に舛添批判を繰り広げており、首を取ったという印象さえ受ける。