東京証券取引所マザーズ市場に、さる旅行代理店が上場間近なことがわかった。
東証は今年1月から審査を始めており、早ければ4月にも上場する。ただ2016年は上場した83社中10社が上場後すぐに業績見通しを下方修正する「上場ゴール」が多発。「信頼に疑問符」(市場関係者)がつく状況だ。
では今度の旅行代理店はどうだろうか。その実力を見定めてみよう。
■―――――――――――――――――――― 【写真】旅工房社公式サイトより
(http://www.tabikobo.com/tabikobo/)
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その旅行代理店は「旅工房」という。1994年4月に設立。1996年5月から高山泰仁氏が代表となり現在に至る。資本金は9千万円、従業員は363人(16年4月時点)。「オンラインによる申し込みが主」の中堅海外旅行代理店である。
主力取引銀行は三井住友銀行池袋支店と三菱東京UFJ銀行西池袋支店だ。今回の上場の主幹事は大和証券。監査法人も決まっている。
16年の訪日外国人客は前年比21.8%増の2400万人に達するなど「インバウンド」は盛り上がっている。一方、「アウトバウンド」の日本人の海外旅行は減少傾向だ。観光庁によると2015年度の海外旅行の取扱高は8.4%減の2兆1、800億円。600を超える業者がひしめく旅行業界のなかで同社は「オンラインによるオーダーメイド旅行」を売りにする。
たとえば、ナイアガラの滝を観る旅行を計画する。ネットで旅行代金を比較。予算にあるツアーが同社にあった場合、申し込む。通常はそこで完了するが、同社は違うのだ。
すぐさま、同社の専門コンシェルジュがお礼のメールを送信。さらなる要望がないか確認して電話してくる。そこで「ホテルの部屋は滝が見えるところがいい」と頼むとそれに応える。
このように「価格は他社と変わらないがかゆい所に手が届く」サービスが強みで、「細かい要望の多い中高年層がターゲット」である。
業績は現段階では非公開だが、調査会社によると、取扱高は13年度が187億円、14年度が218億円、15年度が222億円と順調に伸びている。15年度の当期利益は9,000万円と14年度の1億5,000万円より減少しているが、これはリアル店舗を増やしたためだろう。
とすると、減少傾向が続く海外旅行業界のなかでは健闘しており、市場関係者は「それなりのエクイティストーリー(成長戦略)を示せばいい株価がつく」と評価する。
株式市場では16年3月31日に東証マザーズ上場の旅行会社・エボラブルアジアと比較すると予想される。
エボラブル社は、公募時の時価総額は96億円だったが、上場時の初値は公募価格を33%上回る2,670円をつけ時価総額は143億円になった。その後、株式を3分割して現在の株価は3、700円前後。時価総額は公募時の6.5倍の626億円に拡大した。
エボラブル社の直近16年9月期の業績は、取扱高が277億円で当期利益が3億4,000万円。取扱高でいえば旅工房は同水準。あとは利益が伸びる成長戦略を示すことができるかだ。
旅工房の公募時の株価(時価総額)がどう設定されるか。それを見れば「売り」か「買い」か判断できる。さてどうなるか、楽しみだ。
(無料記事・了)