人気K-POPグループ・東方神起の元メンバーで、JYJのキム・ジェジュンが2016年12月30日で兵役を終了。初となる来日ソロツアー『2017 KIM JAE JOONG ASIA TOUR in JAPAN ‘The REBIRTH of J’』を2月7日から開始した。
当然ながら公式サイトでも大きく紹介されている。動画でのファンメッセージも公開されるなど、意気込みが伝わってくる。
横浜アリーナ、大阪城ホール、日本ガイシホールで開かれるコンサートは全て平日という強気の日程だ。社会人のファンには年度末という極めて多忙な時期であり、嬉しい悲鳴を上げているかもしれない。
来日した2月3日の羽田空港には多くのファンがつめかけ、ジェジュンも笑顔を振りまいた。更に7日には、さいたまスーパーアリーナでの追加公演も発表された。こちらは土日の日程となっており、今のところは何もかも好調な出足と言えるだろう。
ところがファンの間では、事務所のマネジメント戦略がジェジュンの芸能活動にマイナスとなり、足を引っ張るのではないかと不安の声が強まるばかりだという。ご存じの通り、東方神起時代から事務所とのトラブルは頻発してきた。ファン度外視の泥沼の争いに付き合う必要はないものの、ここで最小限の事実関係を振り返っておこう。 ■―――――――――――――――――――― 【著者】江川優梨子 【写真】JYJ JAPAN OFFICIAL WEB SITEより
(http://www.jyjjapan.jp/)
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東方神起は03年、韓国の大手芸能事務所・SMエンターテインメント所属としてデビューを果たした。同社はSJ、少女時代、EXOなど、人気のアーティストを多く抱える。
日本では05年から活動を開始。07年には日本武道館でライブを開催し、08年にはオリコンチャートで1位を獲得。NHKの『紅白歌合戦』への出場も果たし、トップアイドルとしての地位を固めていく。
だが人気の高まりと比例するように、事務所との関係は悪化。現在のJYJメンバーであるキム・ジェジュン、パク・ユチョン、キム・ジュンスの3人は09年、SMエンターテインメントの契約を不当として提訴。裁判所も「違法性が認められる」との判決を下し、3人は事務所と袂を分かつことになる。
10年9月に3人は、新設の芸能会社C-JeSエンターテインメントから、グループ名JYJで世界デビューすることを発表。これでファンも一安心かと思いきや、日本側窓口であるavexがJYJのマネジメント中止を通達。一難去ってまた一難。今度は日本での活動が危ぶまれる事態となってしまう。
実際、11年に日本公演も日程に組まれた『ワールド・ツアー・コンサート2011』では、avexがマネジメント権を理由に日本での公演実施の撤回を要求。更にシージェス・エンターテインメントまでもがマネジメント業務の不履行を理由に、JYJの専属契約の解除を通知するなど泥沼化の様相を呈してしまう。2013年に和解が成立するまで、延々と法廷闘争が続いたのだ。
一方でJYJは地道な活動を重ねてきた。韓国で3枚のアルバムを発表し、15年まで来日ツアーを4回開催。同年にリリースした初の日本語シングル『Wake Me Tonight』はオリコンのランキングで15万枚超の推定累積売上枚数を記録。変わらぬ人気を見せ付ける格好となった。
人気、実力は折り紙つきであるにもかかわらず、マネジメントの問題から完全な表舞台には登場できない。ファンにとっては隔靴掻痒の状況が続くうち、またしても「グループ空中分解」という新しいトラブルが勃発してしまう。
15年3月にはキム・ジェジュンが、そして8月にパク・ユチョンが兵役・補充役に就いた。にもかかわらず、キム・ジュンスは兵役を先送りし、1人で芸能活動を継続していたのだ。ジュンスの兵役が明らかになったのは昨年16年11月。今年17年2月から陸軍訓練所に入所し、警察広報団に服務することになった。
これは、かなりイレギュラーだと言える。ご存じの通り、韓国男性は19歳から29歳までの間に、軍役を果たす義務がある。そのため人気のK-POPグループはメンバーが兵役に就く時期をなるべく重ね合わせ、グループ活動の空白期間を最小限に抑えるのが一般的だからだ。
ところがJYJは真逆の結果となった。一覧にしてみよう。
・キム・ジュンス 17年2月に入隊予定 ・パク・ユチョン 17年8月に社会服務要員を除隊予定
・キム・ジュジュン 16年12月30日に除隊
パク・ユチョンの社会服務要員とは、「補充役」とも呼ばれる。軍役に支障はないが、様々な事情から兵役の代替勤務に就くという制度だ。パク・ユチョンは喘息の持病があることなどから社会服務要員となったと言われており、現在は江南区役所に勤務している。
キム・ジュンスの服務期間は1年9か月。このため、3人揃っての活動再開が可能になるのは、早くても18年11月となってしまった。これは最も年齢の若いジュンスが1日でも長いソロ活動を希望したことが原因とされるが、この時点で事務所の調整能力に疑問符が付く。
しかも、更なるトラブルが勃発する。社会服務要員のパク・ユチョンが16年6月に性的暴行容疑で告訴され、最終的には計4人の女性から「トイレで性的暴行を受けた」と訴えられてしまったのだ。
警察が捜査を開始すると、4件とも「嫌疑なし」の処分が下った。それでも事件の悪影響は決して小さくない。パク・ユチョンの芸能界復帰は先の見通しが立っていないという。
つまりJYJの看板を背負って芸能活動できるのは今年17年2月以降、キム・ジェジュンただ1人となってしまうわけだ。
となれば、キム・ジェジュンのソロ活動で収益を上げるしかない。とはいっても所属事務所の打ち出す方針にファンの反発が強まるばかりだという。理由は、あまりにもえげつない利益優先主義だからだ。
例えば、キム・ジェジュンの退役を1か月後に控えた16年11月、「Welcome back JAEJOONG」というソウルへの〝観光ツアー〟が発表された。目玉は退役の翌日、12月31日大晦日の深夜零時から4時までの間、ファンミーティングを行うというものだ。
確かに「復帰第一声」に立ち会えるのだから抜群の話題性だろう。だがファンが困惑したのも事実だ。「退役した当日、しかも深夜から酷使されるのは問題」「まずはファンより両親に会うべき」などの異論も沸きあがった。
しかも、このツアー案内を掲載したのは日本語サイトだけとも判明。他にも有料の日本公式ファンクラブを開設する企画も明るみになり、「明らかに日本のファンを金づるにしようとしている」と悪評が拡散していく。
一部のファンはツイッター上で、キム・ジェジュン本人に「#nocjes」のタグをつけて反対意見を送り続け、一種の炎上状態となる。この「nocjes」は「ノーC-JeSエンターテインメント」の意味だが、結局、これらの企画は全て中止に追い込まれた。
キム・ジェジュン本人は芸能活動に飢えていたのか、除隊直後からSNSを毎日更新し、動画の配信も精力的だ。ブランクで日本語が拙くなっているとはいえ、サービス精神は相変わらずだ。日本語で日本のファンに呼びかけるなど、全く抜かりがない。
だが、歳月の流れは残酷だ。31歳となり、率直に言って若い頃の姿とは別物となった。兵役中にタトゥーの数も増え、イメージの変化についていけないファンもいる。仕方のないことだが、兵役という「活動休止期間」のため、別のK-POPグループに乗り換えたファンも少なくない。
日韓両国の関係も冷え切っており、雰囲気を一変させる話題にも乏しい。現在、日本のファンをどれだけ繋ぎとめているのか、最も不安視しているのはキム・ジェジュン本人ではないだろうか。
企画を失敗させ、炎上を招いた事務所に対しては、「勇み足」と許すファンが一般的のようだ。とはいえ、東方神起・JYJの歴史から、事務所アレルギーは根強い。「また事務所が問題を起こしたのか!?」とファンは一気に不安を覚える。少なくとも今のところは優秀なマネジメントでサポートするというよりは、足を引っ張っているというのが現状だろう。
退役がファンにとって、飛びきりの「慶賀」であることは論を俟たない。キム・ジェジュンの意欲・気力も充実している。とはいえJYJを1人看板で背負う「恍惚と不安」に直面している可能性はあるだろう。そんな中での日本ツアーというわけだ。更なる試練に直面したJYJの「試金石」としてファンだけでなく、芸能関係者の多くが注視している。
(無料記事・了)