【無料記事】財務省「ウルトラC」人事を官邸が画策 | イエロージャーナル

 今年夏の財務省人事をめぐり、「ウルトラC」が発動される可能性が出てきた。

 現在の佐藤慎一次官(1980年入省)の後任には、福田淳一主計局長(1982年入省)が順当に昇格するとみられていた。だが、ここにきて、金融庁の森信親長官(1980年入省)を推す声が与党内で急浮上しているのだ。

■―――――――――――――――――――― 【写真】財務省公式サイトより

(http://www.mof.go.jp/)

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 地方銀行の再編を進める森氏は「辣腕」で知られており、安倍晋三首相からの信頼も厚い。政府関係筋は「安倍首相は財務省改革に向け、森氏を次官として送り込むのでは」との見方を強めている。

 佐藤氏は実に35年ぶりに主税局長から事務次官に昇格したが、官邸との距離は決して近くはない。主税局長時代には、「軽減税率」をめぐって菅義偉官房長官と対立し、次官就任後も「配偶者控除の廃止」で官邸サイドから「待った」をかけられた。消費税増税の実施を求めていたこともあり、留任の芽はまずあり得ない。

 佐藤氏が今夏に退任した後、その後任には財務省ナンバー2の福田氏が昇格するもの、と省内外で当然視されていた。一方で、佐藤氏と旧大蔵省同期入社の森氏は昨年夏に留任していて、今夏の退任が確実である。

 しかし、与党内では、「森氏を財務次官に抜擢すべし」との意見が強まっており、関係筋によると、「官邸も水面下で調整を始めた」という。

 関係筋はこう指摘するのだ。

 「これまで、『金融庁長官』から『財務次官』に横滑りしたケースはありません。ただ、内閣府次官に厚生労働省次官が横滑りで就いたケースがあり、森さんが財務次官に就任したとしても、異例とは言えません」

 森氏は大手銀行や証券会社に対し、金融商品の販売手数料を開示するよう求めているほか、地銀再編を促していることでも知られている。関係筋によると、こうした豪腕を安倍首相は高く評価しており、最近では、経済政策全般について、意見を求めることも多いという。

「首相への面会回数も財務省の福田次官を上回っており、消費税増税を求める財務省を牽制する意味合いも込めて、森さんが次期財務次官に抜擢される可能性は高いのではないか」

 政府筋はそう読む。

 ただ、森氏が次期次官に就いた場合でも、次期局長の呼び声が強かった福田局長は留任させ、来年には次官に昇格させる予定だという。

 財務省の中からは、「人事のバランスさえ守ってくれるのであれば、ワンポイントの森さん起用も納得するしかないか」との声が聞こえてくる。ただ、関係筋によれば、森氏には「将来の日銀候補」との見方もある。このため、今夏の財務省人事には霞が関中から注目が集まっている。

(無料記事・了)