中国の保険大手・安邦保険グループが東京や大阪、名古屋、福岡など大都市圏のマンションなど200件もの不動産物件に関心を示し、その買収に向けて約2600億円もの資金を投入していることが、関係筋の話で明らかになった。
■―――――――――――――――――――― 【写真】安邦保険グループの公式サイトより
(http://www.anbanggroup.com/index.htm)
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安邦グループは2014年、米国の最高級ホテル、ウォルドルフ・アストリア・ニューヨークを買収したことで一躍、世界的に名が知られる存在となった。
その最高経営責任者にはかつての中国の最高実力者、鄧小平氏の孫娘の夫のほか、「新中国」建国当時の軍最高指導者の孫も幹部として名前を連ねるなど、中国共産党指導部と密接に関係しており、外交筋からは「日本の資産の中国流出につながりかねない」との懸念が出ている。
安邦グループは2005年に生命保険会社として、資本金約5億元(約80億円)で創業。10年後の15年には619億元(約1兆円)と、124倍にも膨らんだ。事情に詳しい経済ジャーナリストは「中国政府の強力な支援の下、3500万人もの顧客を獲得したため」と解説する。
その後、安邦グループは中国政府の意を受け、海外でのビジネス展開を急拡大し、ベルギーなど欧州の金融機関のほか、韓国や米国の生命保険会社を次々と買収。不動産部門にも進出し、米国の最高級ホテルのほか、日本での不動産買収にも強い意欲を示している。
しかし、安邦グループは2015年、不動産運用会社、シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズ(東京都千代田区)の買収に入札したが、日本の大手不動産会社に競り負けている。
関係筋によると、今回明らかになった、安邦グループが触手を伸ばしている不動産物件群は、中国政府直轄の投資会社である中国投資が9・9%の株式を取得している米大手投資ファンドが所有しているものだという。
東京や大阪など日本の大都市圏にあるマンションを中心とした200件もの不動産物件で、その部屋数の総計は10000戸以上にもなる見通しだという。
「日本の不動産物件は2020年の東京五輪を控え、価格の上昇傾向が続いている。安邦グループは五輪前の転売による大規模な差益を目論んでいるようだ」
外交筋は、安邦グループの狙いが転売益にあるとみている。更に外交関係者は「中国政府の外貨資産減少」を背景として指摘する。結局、安邦グループの買い漁りの裏には中国政府の強い指示があると考えられており、監視が必要であると警鐘を鳴らしている。
(無料記事・了)