詐欺の疑いが濃厚な「シナジーブックス」という異業種交流会の被害者インタビュー。第2回は、被害者が「信用情報」を自分で取得させられるプロセスを詳述する。
■―――――――――――――――――――― 【写真】全国銀行個人情報センター公式サイトより (https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/) ■―――――――――――――――――――― (承前)
──勉強会に参加するためには、入会書のようなものは必要だったんですか?
被害者男性(以下、被害者) 必要があったかは分かりませんが、私は書いていません。
──あくまでサークルだから、入会書のようなものはないという感じですか?
被害者 そうだと思います。
──向こうが要求する入会金とは、幾らだったんですか?
被害者 20万円です。
──すぐに払えと、要求されたりするんですか?
被害者 いえ、「今すぐ払わなくても、別にいいですよ」というスタンスでした。
──なるほど。では、勉強会の次は、どうなるんですか?
被害者 その勉強会の中で、「実はライフコンサルというのもやっているんです」という話が出てきたんです。
──ライフコンサル?
被害者 それが投資の話になっていくんです。
──具体的には?
被害者 シナジーブックスとして資金を運用しているというんですね。そこに現金を預ければ、運用益が支払われて、仕事や生活の援助に充てられますよ、という話だったんです。
──相手が初めてカードを切ってきた。これまでは常に人脈の紹介であって、そういう資金援助という話はなかったんですよね?
被害者 私の記憶は、それに近いですね。ライフコンサルという単語は、もっと前から出ていたのかもしれませんが、そこに焦点を合わせた説明はされていません。
──少なくとも記憶には残っていないわけですね。では、ライフコンサルという単語が出てきた時、最初にどんな印象を持たれました?
被害者 お金が定期収入として入ってくるのであれば、すごくありがたいな、というのと、実のところ「でも本当かな?」と疑ってもいました。
──シナジーブックス側は、どの程度、売り込んできましたか? これまでは全くがつがつするところがなく、淡白な関わり方で、それが彼らの信頼性を高めていたようですけれど。
被害者 淡々としていました。「興味がありますか?」「お金を預けてもらっても、預けなくてもいいですけど、どうしますか?」ぐらいの話です。面接の時も「やってもやらなくてもいいですけど、どうしますか」という感じでしたから、トーンは一定しています。パワーポイントで資料を見せられたんですけれど、ライフコンサルも、たくさんある説明の中の1つという感じで、熱心に売り込んでくるようなことはありませんでした。
──向こうは熱心に勧誘しなかったわけですが、どうしました?
被害者 結局、「興味はあります」と答えてしまったんですね。シナジーブックス側は「じゃあ、改めて別の人間にライフコンサルの話を聞いて下さい。進めていけるかどうか確認しましょう」と言うにとどめたんですが、ただ、その時に「信用情報に問題がなければ、銀行から借りたお金でも運用できますから、手持ちの現金が少なくとも大丈夫です」といった説明はされたという記憶があります。
──その「別の人間」が出てきたのは、いつぐらいですか?
被害者 いつだったかなあ……。
──面接が1月、勉強会が2月、となると、3月ぐらいですか?
被害者 まだ相当に寒かった記憶はあります。また、それほど待たされなかったという印象も残っていますね。
──ありがとうございます。では、そのライフコンサルの話が、どのように持ちかけられたか、教えて下さい。
被害者 勉強会の後、ランチ会のようなものが開かれたんです。経営者の人たちといった数人で、渋谷の居酒屋のような場所で、昼食を食べました。
──この時点では、一応は「人を紹介します」ということはしているんですね。
被害者 この段階では、そうでした。
──勘定は割り勘ですか?
被害者 この時点までは、向こうが全額、出してくれていました。
──その昼食会を挟んでから、ライフコンサルの担当者に会ったんですね?
被害者 昼食会で会った女性も、ライフコンサルの担当者に会うということで、では一緒に会いましょうということになったんです。その後、JR新宿駅の改札で待ち合わせをするように言われて、当日に出向くと、1人の男性がいました。ちょっと強面な印象の表情をしていました。
──女性はどうだったんですか?
被害者 後から来るということで、では先に私の方をやってしまいましょうということになりました。
──喫茶店かどこかで、ライフコンサルの説明を受けたのですか?
被害者 いえ、違います。新宿にはCIC(編集部註:割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)の首都圏窓口があるんです。そこに行って手数料を払うと、私が金融機関から借金をしているか、何かのローンを組んでいるか、という情報が開示されるんです。その強面の男性から、そうした説明を受けて、まずはCICに行きました。
──結果はどうだったんですか?
被害者 車のローンと、後は携帯電話の分割支払いが出てきました。
──回答を拒否されても結構ですが、消費者金融からお金を借りたことはありますか?
被害者 一度もありません。
──強面の男は、情報の開示を求めている際、一緒にいるんですか?
被害者 そもそも同席はできないんです。私が手数料を払い、情報を取ってくるのを待っていました。
──信用情報を入手して、どうしました?
被害者 場所の記憶が曖昧なんですが、新宿にあるホテルの喫茶コーナーに行った覚えがあります。そこにライフコンサルの「担当者」が待っていました。最初に改札で会った強面の男性は、この担当者の部下だったようです。
──昼食会で会った女性は、結局は来たんですか?
被害者 後に来ました。
──その女性と、ご自身は、最終的には別々にさせられたんですか?
被害者 はっきりとした記憶はありませんが、僕の話が進んでいる時も、女性は同席していたはずです。
──信用情報の開示とか、最大級の個人情報の話がされているにもかかわらず、ですか?
被害者 その女性は、色々と問題があったみたいなんです。担当者たちが「別のやり方を考えないといけないので、また改めてやりましょう」というようなことを話し合っていました。
──それに対して、こちら側は信用情報に問題がないことが分かった。向う側は、どうしてきましたか?
被害者 私の方は信用情報に問題がないので、「進められますよ」ということになりました。「金額は、どうしますか?」という具体的な話も出てきたと思います。
──女性は、いましたか?
被害者 いたと思います。
──何か引っ掛かりますね。女性は退席してもよさそうですけど……。女性の信用情報は見ていないですよね?
被害者 私は見ていないですね。
──安心感を与えるため、サクラの女性を同席させた気がするんですが……。それはともかくとして、この時点では「ライフコンサルをやります」とは言っていないんですね?
被害者 はい、そうです。
──いつの時点で、ライフコンサルに出資しようと決断したんですか?
被害者 その会合中に、最終的に「やります。お願いします」と言ってしまいました。
──振り返られて、即断即決をされたんですか? それとも向こうの粘りに根負けしてしまったとか、どんな感じだったんですか?
被害者 強引に説得された、ということはありません。私は相当に迷っていて、それを放置してくれていました。最終的に、自分で決めたんです。
──となると、自分で自分の背中を押したんですね。その理由は、今から考えると何だったと思いますか?
被害者 日銭が入ってくる、という期待は大きかったのかもしれません。
──まだ会社員でしたか?
被害者 会社員でした。
──独立のことを考えると、不安だったわけですね。幾らぐらいのリターンを保証されていたんですか?
被害者 月利5%だったと記憶しています。
──資料のようなものを提示されたんですか?
被害者 一切、ありません。私がメモを取りました。
(第3回につづく)