編集部(以下、編) 服装だけでなく、感性や思考も含めて、この20年間、全身が変わらなかったということですか?
西村博之氏(以下、西村) いえ、さすがに変わっているのではないでしょうか。昔はどのように考えていたのかは覚えていませんから、本当のところは分かりません。ですが、以前よりも長期的に考えるようにはなりました。
編 長期的、ですか?
西村 20代の頃は1年が非常に長いですが、30代になって1年が早いことに気づきました。ですから「3年後は、こうなっているだろう」と考えて、様々な種を植えるようにしたんです。
編 それを「大人になったね」と評されると、嫌ですか?
西村 別に嫌ではありません。ただ補足させてもらうと、自分1人で仕事をするより、チームで動くことが増えました。自分でやれば早い。他の人に任せると時間がかかります。でも長期的に見ると、自分ではなく他の人に任せた方が、結果的にはうまくいったことが多かったですね。
編 そのお話ですが、人を使う大変さとメリットが集約されている気がします。
西村 自分なら1時間で終わる仕事を、他の人に3日間かけてやってもらうわけです。それを積み重ねていくんですね。
編 それでも他の人に頼むのは、どうしてですか?
西村 怠け者だからではないでしょうか(笑) 僕が担当するとして、週に1回、1時間が必要な仕事を、誰かが担当できるようにして回した方が楽でしょう。新しい担当者を作る方が、僕は楽ができます。いかに楽をするかということに腐心しているんですよ(笑)
編 もっと楽をするために、長期的に、3年間の視野で考えるということですか?
西村 そうです。
編 となると「ひろゆきの人生哲学は、楽をすることにある」と強引にまとめたくなってしまうんですが、それは間違っていますか?
西村 どうぞどうぞ(笑)
編 大丈夫なんですか?(笑)
西村 別に大丈夫ですよ。
編 当たらずといえども遠からずということですか?
西村 人生哲学というのは間違っていますけどね。人間は楽をしたいから楽をするというだけのことです。
旅行で、わざと辛い思いをするのは楽しいです。知的好奇心を満たす体験で、大変な目にあうのは大好きなんです。『バーニングマン』というイベントはご存じですか? ネバダ州の砂漠で開催されるんです。1週間の期間で、6万人ぐらいが集まります。
※編集部註
8月第4週の月曜日から9月第1週の月曜日まで開催され、貨幣や商行為が厳禁とされていることが最大の特徴。電気、上下水道、電話、ガス、ガソリンスタンドといった社会インフラが全く整備されていない砂漠で、参加者は見返りを求めない「ギフト経済」で生き延びることを求められる。
花田庚彦氏(以下、花田)・本堂まさや氏(以下、本堂) 行ってましたね。
西村 何回も行ってるんですけど、ネットどころか、電気もありませんというところで、人が集まって暮らすわけです。夜は寒く、日中は暑いので、相当にハードです。水も食物も持参しただけ、というハードな状況で生活するのは割に好きなんです。
ですが仕事となると、いかに楽なルーティンを作って成果を出すかというのが、本来の目的だと思うんです。僕が何かしなければならないというのは、僕がボトルネックになることを意味します。ならば、なるべく僕を外す形を作ると、うまく回るんです。
編 ボトルネック=支障という部分を、もう少し詳しく教えて下さいますか?
西村 例えば、僕に決定を下す役割があったとします。チームがあって、僕がリーダーというイメージですね。「これは、どうすればいいですか?」と訊かれて、僕が決めないと進まないで止まってしまうわけです。
そうなら、「もうあなたたちで決めて下さい、決定の規準は以下の通りです、最初は間違っても構いません」とお願いするわけです。確かに最初は間違った決定をしてしまうかもしれません。でも、人は何回か間違うと、ちゃんと学習します。そうすると、いつしか僕の手を離れて、きちんと回っていくようになるんです。
編 そういうシステムを作るということは、20代の頃から意識的に考えておられたんですか? それとも次第に学習していくような感じだったのですか?
西村 実は、僕は朝、起きないことがあって、連絡が付きにくい人間だったんです(笑)
本堂 成長しましたよね。今日は15分の遅刻で済みました(笑)
花田 凄いよ、15分の遅刻で来たんだから(笑)
西村 ありがとうございます(笑)
編 実は私を含めて3人でお待ちしていたところ、お二人が「1時間は遅刻するよ」と仰って(笑)
本堂 1時間は、たばこをゆっくり吸えると思ってました(笑)
花田 ひろゆき時間って有名だからね。昔から平気で人を待たせる(笑)
西村 いやはや、すみません。すみません(笑)
本堂 大人になりましたね。
花田 15分になった(笑)
西村 僕がいなくて、僕がいない状態で回すようになってしまったのに、「あ、これでいいじゃない」というのはよくありました(笑)
編 その成功体験を(笑)意識的に中心に据えたんですか?
西村 遅刻は意識的なものではないですが(笑)そうした方が僕も楽ですし、チーム自体も楽になります。
(第8回につづく)