2017年4月11日
【無料記事】小池都政の「アキレス腱」か「上山信一・半田晴久」両氏
6月23日告示、7月2日の投開票が予定されている東京都議会選挙。台風の目は言うまでもなく、小池百合子知事の「都民ファーストの会」だ。報道によると、全選挙区に候補者を60〜70人程度、擁立するとされている。
都知事当選後、豊洲新市場移転問題、東京五輪会場問題、そして都議会の「ドン」らとのバトル、百条委員会……と、「小池劇場」は連日、メディアで大きく報道された。
今は若干、過日の勢いを失ったようにも見えるが、それは一時的なものだろう。都議選が近づくにつれ、劇場は再び活況を呈するのは疑いようもない。
高い支持率を維持し、小池都政は磐石のように思える。果して、本当に「アキレス腱」や「弁慶の泣き所」すら存在しない、ロボット的な強さを実現しているのだろうか。
確かに、小池知事自身は、それだけの〝豪腕性〟を持っているかもしれない。しかしながら、政治は1人では行えない。小池知事の周囲には、ブレーンなど様々な関係者が蝟集している。そうした人々も都知事と同じように「無敵」であるはずもない。
「安倍一強」と言われていた国政でも、安倍首相本人ではなく、昭恵夫人が原因で、思わぬ躓きが生じてしまった。類似の可能性が、小池都政にも存在する。まず1人目は、小池知事が結成した「都政改革本部」のうち、まとめ役たる特別顧問に就いた上山信一・慶応大教授だ。
上山氏の存在は、関係者の間で憶測を呼び続けている。なぜか。実は上山氏、橋下徹・前大阪市長の「ブレーン」をしていたことで知られる人物なのである。
■―――――――――――――――――――― 【写真】たちばな出版公式サイトより (http://www.tachibana-inc.co.jp/index.jsp)
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関係筋が解説する。
「上山さんが橋下さんをけしかけて運動を開始させたにもかかわらず、結局は橋下劇場の幕引きにもつながってしまったのが、皆さんご存じの大阪都構想です。府と市を統合し、市内を東京23区のように特別区で再編成しようとしたわけですが、狙いは二重行政の解消と、東京一極集中によって地盤沈下が激しい大阪の都市力の再興、道州制導入の入口などと言われていました」
しかし2015年の住民投票により、大阪都構想は僅差の末に否決されてしまう。この上山氏が今度は東京都に乗り込んできたわけだ。
「上山さんが小池知事と組んだのは、ずばり大阪リベンジだと言われています。小池新党の政策に道州制の導入を加えさせ、大阪で果たせなかった『明治以来の中央集権打破』を実現させようというわけです」(関係者)
1980年に当時の運輸省に入省した上山氏は6年後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとして活躍を始めた。地方行政に経営コンサルタントとしてのノウハウを導入し、福岡市や神奈川県逗子市などで行政改革に手腕をふるった過去を持つ。別の関係者が言う。
「小池知事が立ち上げた都政改革本部には、上山さん以外にも、橋下さんの政策立案ブレーンだった鈴木亘・学習院大教授もメンバーに入っています。大阪では、貧困地域対策など次々と斬新な策を打ち出しました。このほかにも都政改革本部には、大阪維新勢力と近い経営コンサルタントなども入っています。つまり、大阪では成就しなかった〝夢〟を、今度は東京でやろうとしているのではないのでしょうか」
ちなみに橋下氏の小池知事に対する態度は固く、厳しい。かつてのブレーンの本音が見えるからなのだろうか。
半田晴久=深見東州氏も小池知事の「ブレーン」
更に半田晴久氏ともなると、更に馴染は少ないだろう。
例えば都内私鉄の車内で「深見東州」なる人物の書籍を紹介する「たちばな出版」の広告をご覧になったことはないだろうか。この深見東州氏は「芸術活動」や「宗教活動」を行う際の〝通名〟だとされ、その本名が半田晴久氏なのだ。
たちばな出版は、実質的に半田氏がオーナー。更に新興宗教・ワールドメイトの総裁や、予備校・みすず学苑の代表も務めている。
ここまでなら、相当な「好事家」ならご存じかもしれない。
だが、そんな「深見東州マニア」でも、氏が福岡にある在福岡カンボジア王国名誉領事館の名誉領事という〝公職〟の持ち主だとは知らないのではないだろうか。
更に、この半田氏のもとには、大きな集金力を見込んでか、与党、野党の有力政治家らが集い、たちばな出版の顧問職を引き受けている。
そのなかの1人が、小池劇場への飛び入り参加で、にわかに復活の狼煙をあげんとする、元東京都知事の猪瀬直樹氏だ。
猪瀬氏と言えば先頃も、小池塾の講師に呼ばれ、「敵は誰か」など、小池知事への援護射撃とも取れる発言で、メディアで話題になったのは記憶に新しい。
とはいえ、テレビ出演でギャラを得たとしても、それだけで生計を立てるのは難しい。これまでは80〜100万円とされる講演料があったが、今は昔の話だ。では現在、猪瀬氏の「懐事情」はどうなっているのだろうか。
猪瀬氏は現在、半田氏がオーナーの、たちばな出版と関係を密にしている。半田氏は安倍首相とも近しいとされ、自民党議員だけでも、十指に余る人数を顧問に採用している。
つまり「政界の新しいタニマチ」として頭角を現しつつあるのだ。新興宗教のワールドメイトではなく、たちばな出版という出版社を選ぶところも、政治家に対する配慮が行き届いている。政治家からすれば、新興宗教とは係わり合いになりたくないだろうが、出版社なら何の心配もない。
自民党は与党ながらも、政治資金パーティーの収入は目減りしている。党本部への大口献金があっても、代議士の懐が潤うわけではない。景気改善が謳われても庶民の足下までは好況感が巡ってこないアベノミクスの実態さながらだが、だからこそ、個人で潤沢な資金を差配できる「ワールドメイト総裁」にもすがらざるをえないのだろう。
与党、野党の代議士らが群がる半田の新たな軍門にくだった猪瀬直樹の目下の野望は、「来夏の都議選以降の都政顧問」への復帰であると囁かれている。
いまだ徳州会の5000万円借用で公民権が停止しており、副知事など公職就任がかなわないが、大坂府同様に「顧問職」に就くことで復活の礎を着実に積み重ねたいというのが猪瀬の本音だという。
ご存じの通り、小池知事は少なくとも現時点で、国政レベルでの「自民党決別」は行っていない。全面的な敵対関係にあるとされる都政とは対照的だ。
となれば、「右手に上山氏=維新、左手に猪瀬氏=自民」という両面作戦は、非常に効果的だろう。どれほど都議選で圧勝しても、左手を離さなければ、時期首相候補として名が挙がり続ける。実際に総理総裁を目指さなくとも、候補者にカウントされることは小池知事にとって計り知れないプラスになっている。
しかしながら、上山氏にも、猪瀬氏にも「アキレス腱」が存在するのは、これまでに見て頂いた通りだ。そもそも、新党を立ち上げながら、自民党とも関係を保つという小池知事のウルトラCも、いつまで続くのかは分からない。
小池知事の「未来」は、思われているほどに明るくなく、茨の道というのが事実だ。知事は信じられないバランス感覚で平均台の上に立って歩き続けているが、本人ではなくブレーンのせいで転落する可能性は常に存在する。
(無料記事・了)
2017年4月3日
【無料記事】猪瀬都政「陰の腹心」が解説する「前川燿男証人喚問」
弊誌は16年7月28日、
『猪瀬直樹氏の「元腹心」が解説する「猪瀬VS内田茂〝ドン〟都議」バトルの真相──「紀尾井町ヒルズ計画」を知らぬ〝田舎の猪〟と〝ゼネコンに担がれた神輿〟の近親憎悪』
の記事を掲載した。
(http://www.yellow-journal.jp/politics/yj-00000287/)
ここでインタビューに応じて頂いた「腹心氏」に今回、目前に迫った前川燿男・練馬区町、元知事局長の百条委員会における証人喚問について、話を伺った。
3月3日に石原慎太郎氏は会見で、「用地買収の交渉役」と前川氏を名指ししたが、後に「誤りだった」と撤回するという騒動を引き起こした。そんな前川氏が百条委員会に出るとあって、当日の騒ぎは必至だろう。
腹心氏は都政における前川氏の役割を解説することから始め、最終的には石原都政の本質論に迫っていく。では、一問一答をお届けしよう。
■―――――――――――――――――――― 【写真】前川燿男・練馬区町公式サイトより
(http://maekawa-akio.net/)
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──まずは、3月3日に行われた石原慎太郎・元都知事の会見について印象を教えて下さい。
腹心氏 石原氏と同じように、質問者の顔ぶれまで旧態依然としていたのには、苦笑を禁じえなかったですね。
元朝日新聞編集委員、毎日新聞元政治部長……などなど、完全に退職したのか、嘱託扱いなのかは知りませんが、要するにOB記者が勢揃いし、丁寧な口調ではありましたが、糾弾ありきの質問を繰り広げていました。
これがフリーランスのジャーナリストとなると、石原氏を会場で粛清せんと気合を入れていたのか、単に幼稚な精神構造の持ち主だったのか、とにもかくにも、ひたすら雄叫びを上げるだけでした。
率直に言って、日本ジャーナリズムの質問力など、あの程度です。残りはテレビ局がお決まりの質問をこなし、石原氏が「とぼけ」たり「逃げ」たりする画を撮影しただけでしたね。
少なくとも日本の記者会見では、メディア側が「とっておきのネタ」を隠し持っている場合、会見で質問することはありません。自分たちのスクープネタを、みすみす他社にくれてやることになってしまうからです。
会見では沈黙するか、そ知らぬ顔で平凡な質問に留めておきます。その後、本人に直接、1対1の「サシ」で取材を行う。その一問一答を記事化の際に掲載する、これが基本的な流れになります。
では石原氏の会見で、そうしたネタを隠し持っていた社はあったでしょうか? 私はリアルタイムで試聴していた時から、そういう印象は皆無でした。
今となっては、どの社も何もネタを持っていなかったのだと断言できます。なぜなら、3月4日以降、石原氏に関するスクープは全く報じられていないからです。
会見に集まった報道陣は手持ち無沙汰。石原氏を詰問する姿さえアピールできればいいという、いつもの体たらくを、たっぷり堪能させてもらいました。
別にスクープを準備できなくてもいいんです。会見では建前の回答を引き出しておいて、小さなネタでもいいから、何とかしてサシの取材に持ち込む。そして、石原氏の会見は徹頭徹尾、隠蔽を企図していたことをあぶり出す──こんな手腕を持った記者は、今や皆無だと分かりましたね。
──この会見で、前川燿男氏の名前や、知事本局という部署名が飛び出したわけです。後で訂正する騒ぎになったのは記憶に新しいですが、4月4日には再び焦点が当たると考えられます。どう捉えておられますか?
腹心氏 知事本局は石原都政時代に肝いりでつくられた総合調整部局で、いわば大臣官房のような位置づけです。もちろん、他部局の決定を覆す権限など与えられていませんが、総合調整部局としての裁量の網は、都政最大を誇ります。ありとあらゆるところに及ぶと表現しても過言ではないでしょう。
知事と直結し、知事の意向を下方に伝える。同時に、各部局の水平方向の伝達も担当します。そのため権限などなくとも、知事との距離感という点だけでも、他部局は知事本局の意向を常に伺うようになっていきます。いわば心理面で拘束されるわけです。
──石原氏は「誰かが判子を押した」と、あくまでもボトムアップでの認可を行っただけと逃げの姿勢を強くしていますが、このあたりはいかがでしょうか。
そもそも週に1回、金曜日の昼前後に現れるだけの石原さんが都政の詳細を把握するのは無理です。
正午から午後3時までの数時間のうち、都庁の各部局は知事会見に向けて、絞りに絞り込んだ内容だけをレクチャーします。必然的に、決定事項の伝達と背景解説を手際よく行わなければなりません。そこに至るまでのプロセスを報告する余裕はなく、石原知事も全く把握しない、というわけです。
石原さん本人がおっしゃったように、都トップとしての形式的な責任はあります。しかし、政策決定プロセスに対する実質的な責任まで押し付けられるのは敵わない、というのは本音ですね。虚言とか、弁解というのとは違うと思います。
確かに、あれだけ広大な土地の売買で、瑕疵担保責任を問われない契約というのは、売り手側にとっては大変なものです。また、あの当時、東京ガスの跡地は相当に汚染されているという情報は、国政サイドに至るまで、実は広範囲に知られていたんです。
──え、そうなんですか!?
腹心氏 私自身、とある代議士筋から、さるタニマチ業者を土壌浄化事業に参入させてほしいという陳情めいた話を受けたことがあります。
少なくとも当時、土地浄化の先端事例は、何と言ってもアメリカでした。広大な軍事基地の土壌浄化を何度も実施しているため、ノウハウや技術が民間企業の間にも広く浸透しているんです。
結局、豊洲の浄化事業を国内ゼネコンが請け負うのは当然として、事例の乏しい国産技術だけでやるか、アメリカの特許技術を導入するかという大問題が存在したんです。
つまり盛り土という方法を選択しようとしたのは、アメリカほどの特許を取得できていないことが大きな背景だったんです。対処療法的にやろうとしたとも言えます。
専門家が提言したように、盛り土でも科学的に充分な効果があるなら、それでいいのかもしれません。とはいえ、土地浄化の方法をアメリカ特許にするか、日本技術にするのかというせめぎあいだけでなく、どこの会社が請け負うのか、参入できるのかというバトルも凄まじいものがありました。そんな水面下の騒動が、代議士サイドの陳情にまで発展していたわけです。
そうした蠢きの1つ1つを、知事に報告するようなことを、現場がするはずがありません。仮に、石原さんが毎日登庁していて、豊洲移転を最重要課題として位置付けていたのなら話は別です。
ですが当時、石原都政は新銀行東京の処理を筆頭に、政治の重要案件が目白押しでした。石原さんの中で、市場問題は既に豊洲移転で決まりだという認識は、噓偽りのない事実だと思います。
──当時の知事本局長だった前川燿男・練馬区長の関与が取りざたされています。
腹心氏 石原さんの発言は、誰が責任を負うのかという観点から見れば、事実ではないでしょう。ただし、実態としては当たらずとも遠からずというところがあります。
つまり、不作為の連鎖なんです。前川さんが知事本局長だった時期でも、前川さんが全ての決裁権限を持っているわけではないのは、先に見た通りです。
各部局が決裁を積み重ねていき、最後の最後に前川氏が目を通すわけです。となると、例えば瑕疵担保責任の問題は、どの段階で決定されたのか、前川氏が決定したのかというのは組織図のレベルでは何とも言いようがありません。それこそ百条委員会が解明を迫られているわけです。
当時は副知事だった、浜渦武生氏が決着をつけるべく、東京ガスと大まかに合意。細部の詰めを〝事務レベル折衝〟として部局員と東京ガスの社員が積み上げていく。そうした中で、組織としての意志も責任者も存在しないまま、「上は決着させようとしているのだから」と「顧慮」という不作為の連続で──現在の流行語なら「忖度」ですか──知事本局まで辿り着いた可能性も否定できません。
今回の騒動を、前川さんは「とばっちり」だと怒っているようですが、彼のキャラクターを考えれば理解できなくもないんです。
前川さんは神輿に載せられて、祭り上げられるのは大好きです。ですが、細かな作業は決して得意ではありません。前川さんは東大法出身ですが、同期には他にも何人か東大卒がいました。彼らの誰もがキャリア官僚になれなかったコンプレックスを持ち、都庁内での出世欲は著しく強く、それ故に職員から慕われることはなかったんです。
前川さんの同期は反石原派も多かった。ですから、同期の中で前川さんはうまく泳いでいた方ですよ。本人としてはいよいよ副知事を狙うか、というところで外に出ることになったので大変に不本意だったようですがね。
──つまり、前川氏には責任はないということでしょうか。
腹心氏 責任者は誰かという問いに対しては、やはり「稟議書に判子を押した人間、もしくは稟議書を上げた部署全体」が答えになるはずです。石原さんだって、会見では、そういうニュアンスのことを言おうとしていたように見えました。
石原会見の最後に、毎日新聞の元政治部長が、なぜ浜渦武生氏に問い質さないのか、それが石原さんの責務だ、というようなことを言って、迫っていましたね。しかし、石原都政の内実は極めて複雑で、決して一枚岩ではなかったんですよ。
何しろ、お殿様は週に1度しか出勤しません。となれば、家老たちが実務を処理するために蠢かざるをえないわけですが、どれほどリーダーシップに富んだ大名であったとしても、家老の思惑とは複数存在するものでしょう。表面的には「親分が白を黒と言えば、黒と同意する」ように見える部下でも、実は面従腹背だというのは、決して珍しいことではありません。
当時の石原知事が、「ここは浜渦に確認が必要だ」と考え、実際に会って問い質す場面もあったでしょう。しかしながら、石原さんとしては腹の底で熟知しているわけですよ。「訊くのは簡単だ。だが果して浜渦は、何もかも全て正直に、自分へ報告するだろうか」と。
石原陣営というのは、側近の1人1人が、有力代議士クラスの権力と差配力を有していましたからね。 そんな部下を、石原さんがトップダウン式に何もかも指示していたかといえば、そんなことはないですし、そんなことをする必要もありません。
石原都政の原動力は、実は石原大名と家老側近たちとの、ある種の拮抗関係に存在したんです。側近が石原さんを利用している部分も多かったですよ。大名は大名を続けたいし、家老も同じです。「お家存続」のため、互いをWin-Winの関係に持っていく。阿吽の呼吸の中で、「問い質さない」「報告しない」「誰にも言わない」といった様々なことを抱えて、現在に至っているんです。
難しいことを言わなくとも、政治家と秘書の関係を思い出してくれれば分かってもらえると思います。そうした綾を石原さんは熟知していますし、浜渦さんも同じです。つかず離れず。互いに絶妙な距離感で動いているんです。
同じ関係は、知事本局と他部局の間にも存在します。そこには「顧慮」「忖度」という不作為が生じ、その積み重ねが「瑕疵担保責任」の問題を担当していた職員は誰だっけ……? という話になってしまう。
前川さんが東京ガスに天下ったというのは、いかにもな構図なので、疑惑の目が向きやすいのは言うまでもありません。しかしながら、役人とは臆病なものです。特に前川氏のように神輿に乗せられるのが好きなタイプほど、疑心暗鬼もまた強烈です。パターン通りの贈収賄的関係には応じないはずなんですよ。
しかしながら、前川さんが例外ではないという保証も、同じようにありません。確かに、あの人は権力欲と名誉欲が強烈で、それは公務員の世界では例外的な感覚です。
以上、私の解説や推測が、正鵠を射ているのかは分かりません。しかしながら、今回の百条委員会を見る際、前知識としてなら少しは役に立つのではないでしょうか。
(無料記事・了)
2017年2月21日
【無料記事】石原慎太郎「長期都政」の秘訣と「小池百合子」の未来
記者会見を開くのか開かないのか。二転三転した石原慎太郎氏だが、現在の段階では百条委員会の設置が確定し、証人喚問の現実味が強まっている。
改めて振り返れば、石原都政は何よりも長期政権だった。だが、後継者たる猪瀬直樹氏と、その辞任で〝火消役〟が期待された舛添要一氏も、共に短期政権に終わった。
この3人の「元都知事」を比較すると、「都政を安定させる方法」が見えてくるのではないかというのが、このインタビュー記事の原点だ。そして、その「方法」が言語化されたなら、未だに支持率が8割近い小池百合子知事の今後を占うこともできるに違いない。
弊誌は、この石原都政で政策決定過程の中枢を内側から知った、ある人物にインタビューを依頼した。快諾を頂いたが、残念ながら要求される「取材源の秘匿」は極めて高い。名前はX氏としか書けず、抽象化した略歴すらご紹介できないことをお許し頂きたい。
それではインタビュー記事を開始しよう。
■―――――――――――――――――――― 【写真】新銀行東京公式サイトより
(https://www.sgt.jp/)
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──4回連続で当選し、1999年から2012年まで知事を務めた石原氏に対し、猪瀬、舛添両氏は短命知事に終わりました。改めて、2000年代の都政を、どのようにご覧になっておられますか?
X氏 都政を責任問題で振り返るのではなく、「構造と作用」の力学という視点で見ることが大事です。
普通なら石原都政は安定感に富み、猪瀬・舛添都政は不安定だったと総括されるはずですが、ここで真逆の視点から疑問を提起してみたいのです。石原、猪瀬、舛添の3人のうち、なぜ石原都政だけが「特別」に安定していたかという問いです。
猪瀬、舛添両氏の辞任は、むろん本人たちの行動が全ての原因だったことは間違いありません。しかし、私は「なぜ都議会は簡単に彼らを切ることができたのか」という点に着目したいのです。
都議会は石原都知事のクビを取れなかった。ところが猪瀬、舛添は取れた。この違いは、石原都政と、石原以後の都政で「質」が異なることを示唆します。具体的には、「議会との共犯関係」があったのか、なかったのかということに尽きるだろうと思います。
──共犯関係とは穏やかではありません。具体的には、どのような内容を指すのでしょうか。
X氏 議会との駆け引き、などという抽象的な話ではありません。議会にとって知事は「担ぐに価する神輿」でなければ意味がないんです。与党議員が「今のトップには価値がない」と判断すれば、失職に追い込まれない方が珍しい。そうして辞任に追い込まれた政治家として猪瀬直樹、舛添要一、そして第1次政権での安倍晋三の名を挙げれば、具体例は充分でしょう。いわば議会政治の大前提なんです。
この点で石原都政には、新銀行東京というカードがありました。石原都政の中期から晩期にかけては、このカードが最大の、決定的な構成素材となりました。石原都政の屋台骨を支えたわけです。
──弊誌は『小池百合子都知事誕生で、舌なめずりして待つ「内田茂」の余裕──小池VS内田の全面戦争では「小池敗北説」が濃厚という「都庁伏魔殿」の恐怖』という記事を掲載しました。
(http://www.yellow-journal.jp/politics/yj-00000289/)
ベテラン都政記者の「短期的にも小池知事は破れ、内田都議が勝つ」という予想は外れてしまいましたが、石原都政が新銀行東京を作ったのは、都議に「利権」を用意したことと同義だとする証言は、非常に興味深いものがありました。
X氏 新銀行東京は結果として破綻し、なおも破綻処理が続いているという、正真正銘の「石原都政における負の遺産」です。しかしながら、中小企業を応援するという錦の御旗のもと、銀行に群がることを都議会与党は許された。これは大きかったですね。
結果、新銀行東京は与党都議の顔を立てるため、時代錯誤の情実融資が横行しました。それが破綻原因の1つとなったのは間違いありません。それでも与党都議にとっては支持・支援者に恩を売ることを可能にした「大きな甘い汁」だったのです。
もちろん石原氏は、議会に飴を舐めさせるために新銀行東京を構想したわけではありません。ですが石原知事が、経営破綻に向かいつつあった新銀行東京を「議会の既得権益」さながらに放置し続けたのも一面では真実です。あの時、石原知事と都議会は「共同正犯」の関係だったといえるのではないでしょうか。与党野党を問わずです。
──猪瀬・舛添両氏の都政とは、比較にならないほどの規模と期間、石原都政は公私混同を行っていました。にもかかわらず、都議会は決して石原知事を「抹殺」しなかった理由ですね。
X氏 猪瀬、舛添両知事は、都議会と「共同正犯」レベルまで関係性を構築できませんでした。特に猪瀬氏に顕著で、本人の意図するところとはおそらく異なるでしょうが、いみじくも辞任の際に漏らした「政治家としてはアマチュアだった」との弁は、真実を言い当てていたのかもしれません。
政治の世界における「議会との良好な関係」の内実は、議員個々の顔が立つカードを切ることであり、それは結局、議員が常に選挙区へ手土産を持参できるよう差配してやることだとも言えるでしょう。
例えば猪瀬知事が、当時の知事本局を作業部隊として毎週のように都政改革のメニューを探していた頃の話です。それを受けて都営住宅の問題に手を付けようとしたことがありました。老朽化対策というスケールの話ではなく、都営住宅を広大なインフラと見なし、再編、利活用するというプランです。
しかし私は、これには断固として反対しました。
なぜか。それは石原都政が唯一、手付かずで、そのままに放置していたのが都営住宅であり、確固たる理由があったのです。政治=組織力のない猪瀬サイドにとって、野党といえども、政党の既得権益を脅かすようなことをすれば、絶対に無血では済みません。
結果、都営住宅への着手を見送る一方で、東京から発信する地方主権、というメニューで提案が行われたもののひとつが「シンガポール方式」です。私が関わりました。
残念ながら基軸化は果たせませんでしたが、資源小国であるシンガポールのインフラ整備は、総花的なものではなく、集中投資による一点突破型です。シンガポール経済開発庁の幹部にヒアリングを行い、水道事業の海外展開に感触を得たんです。シンガポールは言うまでもなく資源小国であり、水源を他国にゆだねています。環境技術という意味での水道事業は、シンガポールのみならず、アジアや途上国など経済伸張を迎える各国にとってはもっとも注目される技術であり事業です。東京都の水道技術はその点で世界最高レベルにあります。
たd、水道事業者の労組である全水労は日本最大最強の呼び声も高く、確固たる一枚岩を誇っています。水道事業のスリム化を謳えば彼らの反発を招き、うまくいかないことは明らかでした。
そのために水道事業を海外にスピンアウトさせることで、新規事業に結び付けたんです。東京都水道局が水道事業のコンサルタントとなり、途上国に「東京方式」を輸出するというモデルケースです。
このようにして、猪瀬知事は与党野党そうほうの既得権益である都営住宅問題に抵触することを避けながら、それでも果敢に新規事業を展開していきました。結果、世論の支持を得たのですが、猪瀬氏が400万もの票を集め、「これで議会は俺を切れないだろう」と驕り高ぶったところに、落とし穴があったように思います。
国会議員だろうが都議だろうが、議員は選挙基盤の確保が最優先です。常に地元へ利益を還元しなければなりません。だからこそ議員のために飴を作り、議員に飴をなめさせ続ける。それが議会と友好的な関係を築く唯一の方法なのです。しかしながら猪瀬氏はむろん、国会議員の経験を持っていた舛添氏でも、それは盲点だったでしょう。
舛添氏の話なら、知事時代、「都市外交」という機密費さながらの潤沢な税金で豪遊を繰り返しました。やっていることはただ、石原都政の豪遊と五十歩百歩です。それにもかかわらず、野党が、「舛添知事とは一緒には、やっていけない」と見切りを付けたのは、やはり、舛添氏では、世論の風当たりというリスクを承知したうえでも、都議ら自らを立脚させるメリットがリスクを上回らなかったという解釈も可能ではないでしょうか。
──野党が「やっていけない」と見切りをつけるというのは信じられません。野党にとって、知事の問題はチャンスなのではないでしょうか。
X氏 1999年、石原氏が初当選した知事選を思い出して下さい。自民党は明石康氏を擁立しました。石原都政は与党のバックアップによっては誕生していません。そのために都議会与党たる自公は、積極的に石原都政をバックアップしていないんです。
では、なぜ石原都政は〝長期政権〟たりえたのか。それは石原氏が知事である限り、与党であろうが野党であろうが、都議なら誰でも新銀行東京や、福祉、住宅関係の予算で、潤沢な「地元選挙区への土産」を持って帰ることができたいうことです。都議からすれば、石原知事は「消極的放置」に価するリーダーであり、そうした判断が石原都政の安定を生み出したともいえるのです。
むろん、そのカードを差配していたのは浜渦武生氏といった、政治家なみに鋭い側近らであったわけです。ちなみに石原都政で副知事だった浜渦武生氏は都議会予算委で、民主党にやらせ質問を行ったことが百条委員会で判明。2005年に辞職へ追い込まれます。その絵を描いたのは〝都議会のドン〟たる内田茂都議だということは、今やテレビのワイドショーでも報道されていますが、皮肉なものだと言わざるを得ません。
本題に戻りますが、石原都政は都職員に対しては恐怖政治を敷きました。ですが、権益を確保しようとする議会側の動きには、比較的自由を与えていたことは特筆すべきことだと思います。そしてもちろん、猪瀬・舛添両知事にも、そうした動きは見られませんでした。
両氏とも、政治家としては幼すぎたと言うべきでしょう。都議会にとっては、両知事を支える理由がなかったのです。
──今夏には都議選が控えています。この勢いなら小池新党は圧勝という予測もあります。どうご覧になりますか?
X氏 これまでに見てきたように、議会との「共犯関係」を築けない都知事は、小池知事に限らず、誰でも短命に終わります。
オール与党となれば、議会対策の必要はありません。トップとしては、極めてやりやすい状況になるのは論を俟ちません。
だからこそ政治家には、オール与党化こそが、政策実現の最短ルートだと考える人がいます。小池知事も、改革実現の近道だと信じておられるようです。
それでは石原都政の最晩期はどうだったでしょうか。あの頃の都議会は実質的にオール与党でした。ですが、圧倒的な数の力を有すると、反動も大きいのです。石原都政の安定性を生んだ背景を冷静に振り返れば、学ぶべき「政治手腕」とは、『議会は掌握すれども、制するべからず』だと、これに尽きると言えるのではないでしょうか。
難しいことに、攻める余地を知事に与えられないと、都議や都議会は立脚点を失ってしまいます。結果、都議は支援者に自らの手腕、技量、何よりも清新さをアピールできません。そして「このトップの元では、自らの足元が揺らいでしまう」と判断すれば、彼らは必ず造反の意志を芽生えさせます。小池知事もまたそこに気づかないのならば、早晩、彼女自身が「守旧派」のレッテルを貼られることになるのではないでしょうか。
(無料記事・了)
2017年2月9日
【無料記事】千代田区長選・現職勝利で「石川VS内田」黒い原点
千代田区長選は小池百合子を〝担いだ〟形となった現職・石川雅己氏の勝利に終わった。
報道では今のところ、『週刊朝日』(2017年2月17日号)の「豊洲移転きっかけは「小池派区長説」を追う」が唯一、気を吐いた印象だ。
とはいえ、石川区長が築地市場の移転に絡んでいたことを示し、特に都庁港湾局長時代の辣腕に触れたことは重要だが、その背景には踏み込めてはいない。
答えを先に示せば、港湾局長時代の石川氏は、既に内田茂都議の実質的な傀儡だったのだ。記事では、石川が都局長として政策を立案したように書かれているが、当時から都庁では内田都議の後ろ盾がなければ、誰も局長などの幹部ポストには就けなかった。
つまり石川区長こそ「内田茂チルドレン」の筆頭格なのだが、いまだに正確な報道が行われていない「なぜ石川区長と内田都議は反目したのか」というポイントを詳報してみようと思う。
■―――――――――――――――――――― 【著者】下赤坂三郎 【記事の文字数】2500字 【写真】千代田区公式サイト「区長選挙開票結果」より
(http://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/senkyo/kucho/kihyo.html)
■――――――――――――――――――――
まずは元千代田区職員に、もつれた糸を解き明かしてもらおう。
「決定的なきっかけは2008年、内田茂さんの落選です。この時、例えばゼネコンや、政治ブローカーといった〝都政関係者〟の間で、『これで内田は終り』という雰囲気が蔓延したんですね。そしてゼネコンなどが内田さんの代りとして注目したのが、01年に千代田区長に当選していた石川雅己さんでした」
これまでは「内田茂チルドレン」たる千代田区長だったが、周囲が「親離れ」を勧めてきたわけだ。そしてチルドレンたるご本人も、やぶさかではなかったらしい。
「さる都政ブローカーが、赤坂の焼肉屋で都やゼネコンの関係者を招く宴会を、定期的に開いていたんです。そこに石川さんも姿を見せていたんですが、非常に用意周到なんです。公用車の利用記録を残してしまうと、反石川派の区議から追及されるので、赤坂見附の交差点で公用車を降りて、赤坂の繁華街を1人で歩いて来るわけです。ところが、この振舞が内田さんの逆鱗に触れてしまうんです」(同・元千代田区職員)
内田都議は石川区長のこれまでになかった用心深さを目の当たりにして、何と「ゼネコンとの折衝役という自分の役割を奪い取ろうとしている」と見抜いてしまったのだという。男の勘も、こういう時は恐ろしいものがある。
「この頃は例えば、紀尾井町にある参議院清水谷宿舎の建て替えに焦点が集まっていました。石川区長は内田さんを抜きにして、ゼネコンや不動産業者と直接、ラインを持つようになります。ゼネコン側も歓迎しました。となると内田さんからすれば『俺の力で千代田区長になったくせに』と面白くないのは当然でしょう。庇を貸したら母屋を乗っ取られたわけですから」(同)
一方、1999年に初当選した石原慎太郎・都知事は、2003年、07年、と再選を重ねていく。そして07年には猪瀬直樹氏が副知事に就任する。
ご記憶の方も少なくないだろうが、清水谷宿舎の建て替え問題は「江戸時代から続く貴重な緑地」として反対運動が根強く行われていた。ところが都政トップが石原=猪瀬のコンビとなってからの08年12月、「都心に残る貴重な緑を保護すべき」と計画の断念が表明された。
「石川区長は、改革派を自称する猪瀬直樹・副知事が都政入りすると、陰では蛇蝎のごとく嫌っていました。ところが猪瀬さんと内田さんの対立関係が明らかになると、一転して猪瀬さんを選挙応援に招いたんです。今回も同じですが、石川区長は改革イメージを前面に出すことで当選してきました。とはいえ、ゼネコンと金融機関の強固な支援が当選の最大要因ですから、改革派は見せかけだけですね」
弊誌は『【無料記事】千代田区長選の「小池VS内田」は真っ赤な嘘』の記事を掲載した。
(http://www.yellow-journal.jp/politics/yj-00000442/)
文中で、
<千代田区長選で真に重要なのは石川氏の選対本部に、1人のキーパーソンが参加していることだ。その名を鈴木重雄氏という>
と書いたが、この点に関して、都政クラブの記者氏に現状の解説をお願いしよう。
「石川区長の万歳三唱で、鈴木氏は真後ろに立っていましたね。関係者の間では、週刊文春の『反・内田茂キャンペーン』のネタ元は猪瀬氏と鈴木氏の2人という見立てが強固なんです。本来であれば情報参謀といった役割ですから、万歳のような表舞台に出るタイプの人じゃないんです。黒子の自覚は充分お持ちのはずで、あれはわざとでしょうね。都庁の幹部たちに『自分は小池百合子と近いぞ』とアピールする狙いだったんでしょう」
何よりも内田VS石川のバトルが雄弁に物語るが、政治の裏舞台ともなれば、はったりやら化かし合いが横行する。自分を大きく見せるために、ありとあらゆる手を打たなければ生き残れない世界だ。都政クラブの記者氏は「今回の千代田区長選で、本当の勝者は鈴木さんですよ」と苦笑する。
だが石川区長の素性に詳しいジャーナリストの見立ては、少し違うようだ。
「鈴木さんは旧住専の富士住建の関係者であり、その利害を背負っています。ところが石川区長が持つ千代田区のプロジェクトは巨大すぎてゼネコンしか対応できないんです。そのため、鈴木さんは小池都知事への近さを武器に、都議選への関与を画策していくのではないでしょうか」
千代田区政に妙味が存在しないのであれば、小池都政に食い込めばいい、というわけだ。確かに金と票を持つ者にとっては、政治家など出入り業者に等しいだろう。
いずれにしても、石川区長の再選で、千代田区内の開発は一気に加速するに違いない。弊誌は最後に「真冬の怪談」を付け加えて、この稿を終わらせよう。
「利権にどっぷりと漬かっている区議も少なくありませんが、これからは今以上に気を付けるべきでしょう。昨年も重鎮区議の1人が政務調査費の問題で書類送検されましたが、問題は誰が捜査を動かしたかということです」(前出の区長の素性に詳しいジャーナリスト)
ジャーナリスト氏によると、少なくとも石川区長が特別秘書を使い、区議の政務調査費や不正行為の数々を徹底して調べていたのは事実だという。
脛に疵を持つ者たちが、必死にバトルロワイヤルを戦っている姿が浮かぶ。それが千代田区政の実情なのだ。
(無料記事・了)
2017年1月26日
【無料記事】千代田区長選「自民惨敗」で「自民都議」大量脱走
小池劇場の加速が止まらない──。
1月23日、小池百合子東京都知事の政治塾を運営する「都民ファーストの会」が地域政党として活動を開始。今夏の都議選にまず4人を公認することとした。
今後、小池サイドが候補者を続々と擁立していくことが可能なら、都議選は「ドン内田茂率いる自民党VS小池」となっていくのは必至。その前哨戦と位置付けられているのが、ご存じの通り、29日に告示される千代田区長選だ。
■―――――――――――――――――――― 【写真】五十嵐朝青氏サイトより
(http://asaoigarashi.com/)
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22日には、小池知事が現職の石川雅己・千代田区長の決起集会に参加した。
「この戦いを勝ち抜くことが、東京大改革を進める一歩になる」
そう高らかに宣言し、準備は万端だ。石川陣営の関係者も興奮を隠せないようだ。
「すでに、小池さんとのツーショットポスターを貼っています。次の当選で5選なので、多選批判も出るかもしれませんが、それを凌駕する人気が小池さんにはありますからね」
一方、頭を抱えるのが自民党東京都連だ。都連関係者が言う。
「内田さんが擁立しようした中央大学の佐々木信夫教授に出馬を断られました。結果的に、与謝野馨元財務相のおい、信氏を擁立することになったわけです。しかし、実のところ当初は楽観論もあったのです。というのも、石川区長は多選批判を受けるだろうし、彼は41歳と若い。それなりの票をとれると思ったのですが……」
誤算だったのは、第三の男が立候補を表明したからだという。
「元コンサルタント会社の五十嵐朝青候補ですよ。彼も同じ41歳。しかも、信さんよりもイケメンなんです。お互い票を食い合うことになるでしょう。しかも、公明党が今回は支援してくれませんからね」
そうなのだ。今回の区長選で公明党はダンマリを決め込んでいる。公明党関係者が重い口を開く。
「都議会でも連立を解消しましたからね。ただ、理由はそれだけではないんですよ。実は昨年末、うちの党が情勢調査を行ったのです。すると、現職区長が2万に対し、自民党候補は5000という結果でした。『夕刊フジ』が同じ数字を「某政党の調査」と書いていましたが、あれはウチですよ。当時は、まだ与謝野信氏の擁立は決まっていませんでしたが、こんな数字が出れば、誰であっても支援できるはずがありません。早々と撤退したというわけですよ。もちろん、国政では連立を組んでいますが、公明党本部も都連が言うことを聞かなくて、困っているのです」
今回の区長選でも、孤立を深めたドン内田都議の自民党は惨敗──との見方が優勢になっている。ではその結果何が起きるのか。都政担当記者が言う。
「完敗となれば、内田さんの求心力はますます低下します。すでに3人の都議が会派を離脱。中央区選出の立石晴康都議も自民党を離れようとしています。おそらく、大量離脱のタイミングは、来年度予算が決まる3月より前。予算決定の際には、会派として賛成か反対かを表明せねばなりません。都議団の意思表示を迫られるわけですから、会派にいたくない人はその前に脱藩するということになる。空中分解ですよ。そのきっかけになるのが千代田区長選の結果でしょうね」
人口に膾炙している諺に「沈む船から逃げること鼠の如し」がある。政治家は「所詮、落ちれば唯の人」には違いない。当選するためには手段は選ばないのが普通だとは言える。
とは言うものの、都議としての見識もネズミレベルとなると、かなり困ったことになる。更に「合従連衡」や「野合」は相当数の有権者が嫌いだということも、関係者は肝に命じるべきだろう。
(無料記事・了)
2017年1月23日
千代田区長選で「石川雅己区長」の「黒い人脈」再噴出
弊誌はジャーナリストの田中広美氏の『哀しき総会屋・小池隆一』を連載している。
小池隆一氏といえば、あの「総会屋利益供与事件」(1997年)の主役である。野村証券、第一勧業銀行という一流企業から引き出したカネは「100億以上」とも「270億円」とも言われる。
そして田中氏の連載は、都庁・都議会の〝闇〟にも焦点を合わせている。興味のある方は、ぜひ第1回を拝読頂きたい。
『【初回完全無料】『哀しき総会屋・小池隆一』第1回「漂着」』
(http://www.yellow-journal.jp/series/yj-00000232/)
この連載で、石川雅己区長も既に登場している。そのため弊誌は千代田区長選が近付いてきたため、田中氏に特別原稿を依頼した。田中氏の厚い取材から紡がれる「千代田区長選の真相」は、多くの人が驚くに違いない。
マスコミの小池VS内田という図式が馬鹿らしく思えるほど、様々な魑魅魍魎が跋扈しており、千代田区長も全くの「ブラック政治家」なのだから。
■田中広美氏・特別原稿
小池百合子・東京都知事VS自民党守旧派の代理戦争となっている千代田区長選。だが都知事にとって、現職の石川雅己・区長との〝共闘〟は本意ではなく、実は頭を痛めている。
石川区長は2017年1月8日、5選を目指して無所属で立候補することと、小池知事の支援を受けることを明らかにした。
自ら都庁へ出向き、小池知事の応援を取りつけたと言い、知事との2ショットが映るポスターを持参。知事について「応援のアクションを期待しているし、多分、応援してもらえると思う」とアピールした。
だが、前々回まで支援を受けていた内田茂・都議について記者団が問うと、その口は相当に重かった。「内田氏と議論したことはないが、既成概念、既得権という意味で楔を打たれるのは嫌なのかも分かりません」と全面的な批判は差し控えた。
こうしてマスコミが「代理戦争」と夢中で報じるわけだが、石川区長も決してクリーンな政治家ではない。都庁担当記者は知って無視したか、あるいは本当に把握できなかったのか、2016年の都知事選に前後して、千代田区庁舎(東京都千代田区九段南)に右翼が街宣をかけたことは全く報じられていない。
右翼がやり玉に挙げたのは、石川区長の「黒い人脈」だ。 ■―――――――――――――――――――― 【筆者】田中広美(ジャーナリスト) 【記事の文字数】2700字 【写真】千代田区公式サイト『2月5日は千代田区長選挙の投票日です』より
(https://www.city.chiyoda.lg.jp/koho/kurashi/senkyo/kucho/tohyobi.html)
■――――――――――――――――――――
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2017年1月12日
【無料記事】ゴールドマン・サックスが小池知事に「豊洲購入」を打診
築地市場(東京都中央区)から豊洲市場(江東区)への移転問題は現在のところ、全く着地点が見えていない。
小池百合子・都知事も苦慮しているかと思いきや、強力な援軍が訪れたようだ。
関係者によると、世界最大級の投資銀行、ゴールドマン・サックス(アメリカ・ニューヨーク)が豊洲市場の購入を、小池都知事サイドに打診したという。
まさに黒船来航──築地存続案が急浮上している背景には、こうした動きが関係しているようだ。 ■―――――――――――――――――――― 【写真】ゴールドマン・サックス・グループ「会社情報」より
(http://www.goldmansachs.com/japan/who-we-are/index.html)
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情報をまとめると、ゴールドマン・サックス在日本法人の幹部が2016年10月下旬、小池知事の側近である野田数特別秘書に都内で極秘に接触。「米国本社の意向」として、「豊洲市場への移転が不調に終わった場合、施設を購入したい」と申し出たという。
同社幹部は野田秘書に対し、「主要施設地下の土壌汚染で食品市場の機能を果たせない豊洲市場を買い上げ、跡地を巨大ショッピングモールとして再開発する構想を温めている」と明かしたとされる。関係者が囁く。
「小池知事にとっては、まさに渡りに船です。具体的な購入額は提示されていないものの、豊洲市場建設にかかった約5800億円を取り戻せれば、都にとってはとりあえず御の字です。豊洲市場の売却で得た資金を、築地市場の再整備に回せることになる」
小池知事は16年11月18日の記者会見で、豊洲移転を「白紙撤回」する選択肢も完全には排除しなかった。というのは、仮に安全面の問題がクリアされて豊洲に移転したとしても、風評被害で事業者や消費者に嫌われ、さらに年間維持管理費が築地の約5倍にあたる約76億6000万円と試算されるなど、あまりに使い勝手が悪すぎるからだ。
かつて都は築地市場の再整備も検討したのだが、費用が3400億円かかることに加え、営業を続けながらの工事は長期化が懸念され、断念したという経緯がある。知事の関係者が明かす。
「あの再整備計画はバブル期に検討されたもので、コストが高額に試算されています。現在は技術も更に進化しているため工期の短縮が期待できますし、結局は再整備なので、難しい工法も贅沢な材料も必要ありません。市場での事業者も当時に比べると6割程度まで減少しているため、協力を得ればよりスムーズな工事になるでしょう」
小池知事が安全宣言を出し、豊洲移転を進めたとしても、消費者の不安が払拭されるかは未知数だ。いや、それどころか、支持率減少という最悪のシナリオも否定できない。
対して、築地存続の決断は、まずインパクトが強烈だ。うまくいけば、世論が拍手喝采する可能性も高い。支持率の高止りが期待できるわけだ。「小池劇場」の継続には、築地存続がベストに違いない。
知事周辺の関係者は、「ゴールドマン・サックスとの交渉が進めば、意外に築地存続の決断は早まるかもしれない」と予測する。
(無料記事・了)
2016年12月28日
【無料記事】五輪招致で「放蕩」石原慎太郎・猪瀬直樹「原罪」
2009年9月12日、朝日新聞は『石原知事、26日から出張 デンマークでIOC総会/東京都』の記事を掲載した。
当時の石原慎太郎・東京都知事が2016年夏季五輪開催地を決定するIOC総会に出席するため、9月26日から10月4日の日程で、デンマーク・コペンハーゲンに出張、という日程を伝えたものだ。
文中では、定例会見における石原知事の発言も引用されている。
「IOC委員に対し、最後の瞬間まで東京招致への支持を求めていく。招致を望む都民、国民の熱い思いを胸に、招致を獲得してまいりたい」
結果はリオ五輪となったのは、ご存じの通りだ。その9月26日の夜。石原知事はデンマークへ旅立ち、東京・新宿の居酒屋では、都庁幹部が、こんな胸の内を漏らしていた。
「慎ちゃんも、ファーストクラスで、また欧州ワインツアーの豪遊だよ。気楽なもんだよな。後から議会につつかれないように交際費を処理するこっちの身にもなってほしいよ」 ■―――――――――――――――――――― 【著者】下赤坂三郎 【写真】2007年6月、副知事の人事案が可決され、取材に応じる猪瀬直樹氏(左)と、石原慎太郎都知事(当時)(撮影 産経新聞社) ■――――――――――――――――――― この年の6月には、スイスのローザンヌで、候補の4都市によるプレゼンテーションが行われた。シカゴ、リオデジャネイロ、マドリード、そして東京という顔触れだ。この時、同行した都庁関係者はもとより、JOCの関係者でさえ、石原知事の〝放蕩〟ぶりには呆れ返ったという。
先の都庁幹部は完全に諦念し、白旗を掲げていた。
「大体、今の都庁で、まともに仕事をやろうなんてムードはないですよ。目立ちたがり屋で、朝令暮改ばかりの慎ちゃんの下で、まともな政策なんてできないんだから。皆、じーっと、慎ちゃんの任期が終わるのを待っているわけ。慎ちゃんは自分の任期最後、打上げ花火としてオリンピック召致を果たしたかったんだろうけど、振り回されるこっちの身にもなってほしいよ。それで、帰国すればまた、ワイン漬けの清算処理ばかり押し付けられるんだから」
この時期に、都庁職員のモチベーションが著しく低下したことは、築地市場の移転問題が現在も迷走している遠因の1つに挙げられる。
市場が豊洲に移転した後、築地の跡地にはメディアセンターが建てられる計画だ。もし石原都政下の職員が五輪招致で一致団結していれば、ここまで混乱しなかったに違いない。小池百合子・都知事の誕生で、職員は「さあ大変だ」と大慌てしているものの、失われた貴重な時間を取り戻すのは、なかなか難しい。
石原都政は五輪招致を派手に打ち上げたが、インフラ整備のメドさえつかない状況は長く続いた。全く信じられない話だが、当時は副知事だった猪瀬直樹氏は知事に「諫言」するどころか、「慎太郎の親衛隊」らしく、周囲にはこんな風に嘯いていたという。
「仮にな、オリンピックが駄目でも、それをやろうという気運で緑化が進んだり、温暖化対策を進めたりするきっかけになれば、そこに意味があるんだよ」
だが、これこそ「ご都合主義」以外の何物でもない。別の都庁幹部も怒りを滲ませながら、正論を吐く。
「緑の東京を作るために、オリンピック招致で5000億円近くつぎ込むんだったら、最初から、緑化事業に5000億をつぎ込めばいいだけの話でしょう」
五輪招致は当初から東京の劣勢が伝えられていた。おまけに対抗馬のシカゴは「世界のオバマ」を担ぎ出すことに成功。日本側も鳩山由紀夫首相をプレゼンに出席させたが、都庁職員は「ワシ(※註:アメリカの国鳥はハクトウワシ)とハトでは、その力の差は火を見るより明らか」と自虐ネタにするほどだった。
だが多くの関係者が石原都知事の豪遊を呆れて見つめる一方で、舞台への復帰を狙う堤義明・元コクド会長は、援護射撃のつもりか、様々な動きを繰り広げていた。
「本当のところ、どんな狙いがあったのかは分かりませんが、サマランチ元会長をはじめ、海外のIOC幹部に電話をかけまくり、東京オリンピック招致を働きかけていました。彼としては執行猶予が終わり、更に招致に成功して『影の功労者』として認知されれば、再び日の当たる場所に出られると考えたのかもしれません」(関係者)
確かに東京五輪の招致に成功した現在、堤氏はオリンピック委員会の顧問に収まった。「形ばかり」という酷評もあるとはいえ、表舞台への復帰を果たしたのだ。
長野オリンピックを実現させたのだから、確かに堤氏は豪腕の持主なのだ。そんな「元西武グループ総帥」の孤独な電話外交を知ってか知らでか、デンマークの石原都知事はロビー活動と称し、毎夜のワイン三昧。
「知事は酔って、へべれけです」と随行員からメールで連絡を受ける都庁幹部は、再び天を仰ぎ、「あといくつ寝れば、慎ちゃんは任期満了か」と指折り数える……。
そんな舞台裏だったにもかかわらず、帰国した石原知事は「プレゼンは緻密で完璧なものだった」と自信満々に総括した。東京五輪に名乗りをあげて以来、常に石原知事は自画自讃のコメントを連発していた。それを幾度となく聞かされる招致委員会の面々には、さすがに白けた空気が漂っていたという。
「新銀行東京でも、あれだけ都民の税金を無駄遣いしたのに、知事自らファーストクラスに乗っての大名旅行ですからね。あの人の貴族趣味は昔からですが、その病気は副知事にも伝染しました。猪瀬さんも早速、『俺の海外視察も、なんでファーストクラスじゃないんだ』と事務方にねじ込みましたから」(都庁職員)
この招致活動では、海外渡航費だけでも、一体、いくらの税金が消えたことか。副知事秘書の経験者は「知事が海外の会議に出席すると、だいたい2000万円は吹っ飛びますよ」と明かす。後は推して知るべしだろう。
この頃、国民は麻生政権から続く景気低迷に苦しんでいたが、東京都は歯牙にもかけなかったということになる。おまけに知事が自ら絶賛したプレゼンも、同行した招致委のメンバーは真逆の評価を下す。
「東京五輪はコンパクトだ、緑化だ、と独りよがりにコンセプトを打ち出しているだけでしたよ。何でも北京五輪は渋滞がひどく、競技会場に選手の到着が遅れたらしいんです。そんな程度の理由で、電通が『コンパクト』を提案し、オウム返しに言っているに過ぎません。何もかも日本人らしい神経質さが全面に出てしまっていて、オリンピックらしい夢は皆無でした」
それでも悲願の東京五輪を勝ち取ったわけだが、そうなると、あの「コンパクト」はどこに行ったのだと呆れ返るほど予算が膨れ上がっていく。
そもそも五輪招致では、原点の原点からお粗末なものだったから当然だという声もある。産業労働局の幹部が振り返る。
「IOCのメンバーや、海外の有力者向けのパンフレット『東京カラーズ』の作成では、委託した海外デザイナーとトラブルになりましたし、文中に誤植があり、『自慰』を意味する俗語が表記されていたんです。これを都は修正せず、そのまま海外で配ったんですよ。もう、何と言えばいいのか……。おまけに、このミスを石原都知事に知られないよう、必死に隠蔽したんです」
石原=猪瀬のコンビは、馬鹿馬鹿しいまで招致のお祭り騒ぎを繰り広げてきた。この原罪にこそ、小池都知事は切り込むべきだろう。猪瀬氏を小池塾の講師にまで招いたが、それこそ利敵行為と知るべきだ。
2016年12月13日
2017年都議選で「小池百合子」の放つ「自民党」刺客
「(塾生の)かなり多くの方が立候補に意欲を燃やしている。選挙戦術などについて、懇切丁寧にサポートしたい」
先日行われた政治塾「希望の塾」の第3回講義終了後、小池百合子東京都知事は来年7月の都議選に候補者を擁立する考えを初めて明らかにした。
果たして小池新党結成はあり得るのか、都議選に向けてどのような戦略を持っているのか。取材をすると具体的なある〝数字〟を聞き出すことができた。
■―――――――――――――――――――― 【記事の文字数】 【写真】「希望の塾」公式サイトより (https://koikejyuku.tokyo/)
■――――――――――――――――――――
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