【無料記事】本業減益「ぐるなび」が旅行業に参入 | イエロージャーナル

 てるみクラブの破産問題が少しは冷水を浴びせたかもしれないが、旅行業界が活況を呈しているのは紛れもない事実だ。訪日外国人(インバウンド)の消費や国内シニア層の旅行熱を狙って、既存の事業会社が旅行業へ続々参入している。

 フジ・メディア・ホールディングスは16年11月に訪日旅行向けサイト・ジャパンインフォを傘下に治めた。2017年2月10日には三越伊勢丹ホールディングスがシニア向け海外旅行代理店・ニッコウトラベルの買収を決めている。そしてグルメサイト運営の、ぐるなびもインバウンド需要を取り込もうと戦略を転換した。

■―――――――――――――――――――― 【写真】ぐるなび公式サイト「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE TOKYO」(中国語=簡体字版)より

(https://livejapan.com/ja/)

■――――――――――――――――――――

 これまで同社はグルメサイトから顧客を飲食店に誘導するビジネスを柱にしていた。新規加盟店は増加し、16年12月末で有料加盟店数は60,816店まで拡大。月間ユニークユーザー数も6,100万人にまで増えた。しかし業績は営業利益が減益になるなど苦戦を続けているのだ。

 そこでインバウンド(訪日外国人旅行/訪日旅行)に目をつけた。訪日外国人は16年に2,400万人に達し、さらに今年も増えると見られている。昨夏「ぐるなび」は海外旅行サイト大手の「トリップアドバイザー」と連携した。トリップアドバイザーの外国版サイトからぐるなびの外国版サイトへ誘導する仕組みを開発。日本を訪れた外国人客が飲食店を見つけることをできるようにした。

 背景にはインバウンドの需要の変化がある。15年ごろまでは、外国人客は家電や化粧品など商品という「モノ」を購入していた。しかし昨年春から様相は一変。「爆買い」は消失し、特別な時間や体験など目に見えない価値である「コト」を消費する方向に変わった。そこでぐるなびは考えた。

「『爆買い』は終わった。しかしインバウンドは増えている。モノは買わなくても飲食はする。まだまだ市場はある」

 その結果、トリップアドバイザーとの連携に踏み切った。トリップアドバイザーの外国語版サイトから「ぐるなび」外国語版サイトに誘導。そこに外国語で日本国内の飲食店情報を載せ、訪日外国人を店に送客する流れだ。

 ぐるなびのインバウンド対策はそれだけではない。

 飲食店のメニューにも手を入れた。訪日した中国人や韓国人が店に訪れてもメニューが中国語や韓国語に対応していなければ客は困惑する。そこで中国語や韓国語、英語などのメニュー開発を加盟店営業や巡回スタッフが支援。外国語メニュー作成し提供できるようにした。

 これにより店側も「いま食べて欲しい料理」を勧めることができ単価も上げることが可能になった。また外国人に受ける料理の開発もサポート。インバウンドからの利益の最大化を図ろうとしている。

 今春からは中国の旅行サイト「Ctrip」、台湾の旅行サイト「Kkday」とも連携する。ここでは「無断キャンセル」のリスク軽減で「事前決済型予約サービス」を導入し、「スキッパー(踏み倒し)」防止を進める。これにより店側のキャンセルリスクは減るうえに、ぐるなび側は決済手数料が入るという「一石二鳥」が実現する。

 ぐるなびではメニュー情報を外国語に一元変換するシステムも導入しており、利用する店舗は23,000店を超えた。

 何とかインバウンド需要を取り込もうとする飲食店の期待は大きい。その声に応えることができるか。正念場だ。

(無料記事・了)