東京都のローカルテレビ局『TOKYO MX』(東京メトロポリタンテレビジョン)の番組『ニュース女子』(月曜22〜23時)が1月2日、沖縄県の基地反対運動について否定的な報道を行い、波紋が広がっている。
番組で司会を務めるのは東京・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏、現地レポートは軍事ジャーナリストの井上和彦氏が担当した。
取り上げられたのは東高江村周辺で行われている、米軍のヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設反対運動。
報道では、参加者を「テロリスト」と呼んだほか、「日当をもらっている」「組織に雇用されている」との指摘が行われた。雇用者としては反ヘイトスピーチ団体『のりこえねっと』を実名で挙げた。
『のりこえねっと』は2013年9月に結成され、共同代表として辛淑玉、上野千鶴子、宇都宮健児氏など23人の名前が記されている。
(https://www.norikoenet.org/)
MXの報道に関する検証や、のりこえねっと側の反論などについては、ニュースサイト『Buzz Feed Japan』の『「沖縄の基地反対派は日当もらっている」MX報道 その根拠となる取材と証拠とは』に詳しい。
(https://www.buzzfeed.com/kotahatachi/okinawa-tokyomxtv?utm_term=.yhnP4yWL7#.ypZav1o2Y)
上記の記事にも書かれているが、
①のりこえねっと側が「市民特派員」を募集していること ②特派員には沖縄県への「渡航費」5万円が支給されること
②県内都市部から高江村へ移動するため「行動費」月1万円とガソリンの現物支給を行っていること
の3点は事実だとされている。 ■―――――――――――――――――――― 【写真】Twitterにアップされた「のりこえねっと」による「市民特派員募集」のツイート ■――――――――――――――――――――
ところで弊誌は2016年11月、沖縄県那覇市泊の『軽食の店 ルビー』を舞台とした記事を掲載した。
『冷静な沖縄県民は「基地反対派は〝土人〟ではなく〝本土人〟」と揶揄』
(http://www.yellow-journal.jp/society/yj-00000366/)
ルビーは観光客にも地元民にも人気だ。軽食と言うが、実際のところは定食屋に近い。量が極めて多く、おまけに深夜になるほど繁盛する。夜の遅い沖縄ならでは、の光景だろう。
昨年、16年の師走は、オリオンビールを注文し、まずは乾杯というグループが目立ったという。毎晩が忘年会並みの賑わいとなるなか、地元紙の『琉球新報』は12月20日15時3分、ネット上に『【電子号外】辺野古 沖縄県が敗訴 最高裁、上告退ける』と報じた。
<翁長雄志知事による名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを巡り、国が県を相手に提起した不作為の違法確認訴訟で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は20日午後、上告審の判決を言い渡し、県の上告を退けた>
引用したのはPDFファイル号外のリード部分だ。今も読むことができる。
(http://ryukyushimpo.jp/news/entry-414888.html)
だが、衝撃的なニュースだったにもかかわらず、かなりの沖縄県民は冷静な──いや、クールと形容していいほどの冷淡さも感じる──態度で報道を受け止めていた。
なぜなのか。その背景として、「辺野古移設反対」を叫び、バリケード前で座り込みを続ける反基地党争の〝兵隊〟たちに対し、「実はバイトではないのか」という疑惑で地元はもちきりだったことが挙げられる。
つまりMXの報道が行われる前から──当然ながら沖縄県でMXテレビは放送されていない──同種の話は県内で広範囲に伝わっていたのだ。
県民こそ基地問題における当事者中の当事者だ。誰に遠慮する必要もない。もともとルビー店内では「まるでホームレスみたいな連中がたむろしているよな」と以前から話題になっていた。
ところが、それに加え、〝特派員〟たちには沖縄までの旅費、滞在費、更には日当まで出ているらしいという「噂」が付け加わった。繰り返すが、旅費と交通費などの「行動費」は、実際に支給されている。
日当も含めた「噂話」は今のところ、かなりの県民は信憑性があると判断しているようだ。そうしたこともあり、県民は〝特派員〟やら〝闘士〟を見る目にも冷やかさが増す一方となっている。
ところで、このルビーだが、特に観光客がメニューに驚くのは、A、B、Cという3種類が用意されている「ランチ」だろう。ランチといっても開店から閉店まで、いつでも食べられる。ちなみにAランチの内容はというと、
・ごはん ・チキンスープ ・キャベツ ・マカロニサラダ ・ビーフカツ ・卵焼き(大) ・ウインナー ・ポーク(2分の1) ・ハム
・ハンバーグ
という強烈なボリュームだ。出典記事には写真も掲載されている。
『ABCランチの違いを考える(第二回:ルビー宜野湾店)』
(http://www.dee-okinawa.com/topics/2015/02/abc-02.html)
しかし当然ながら、それだけではなく、「ポークたまご」「ゴーヤちゃんぷる」「へちまみそ煮」などという──観光客にとっては、これらこそ「沖縄料理」だというイメージが強い──食べ物も揃っている。
そんな多彩な料理を楽しみながら、地元民は「辺野古疑惑」の話に花を咲かせる。
「本土の組織からバイトとしてきている連中だから、反基地って叫ばれたって、なんにも説得力がないさ」 「そんないいバイトがあるんだったら、俺たちだってカネもらって座ってたいもんだ」 「体よく、本土のやつらに稼ぎにこられてたまらんさ」
噂の発端は、近年になり復活を遂げつつあるという「沖縄市吉原」(沖縄市美里1丁目付近)──コザという名前ならご存じの方も多いだろうか──の「ちょんの間」だという。大阪からやって来た〝出稼ぎ兵隊〟が、自分には諸経費だけでなく日当も出ていると、女性に口を滑らせてしまったらしいのだ。
1人が知れば、「門中」(=一族郎党)すべてが知り、門中皆が知れば、沖縄でも誰もが参加している「ゆい」(相互互助の頼母子講)の皆が知り……そして話は一気に広まっていく。
そこには「反基地運動でカネがもらえるのなら、本土の人間ではなく、俺たちこそ勧誘し、旅費やら交通費を払えばいいだろう」──という、甘いイデオロギー闘争などとは比べ物にならない、ビターな沖縄の「本音」が見え隠れする。
(無料記事・了)