2016年秋から、品川美容外科(東京都港区港南)の医師や看護師が相次いで退職している。品川美容外科の綿引一・理事長は危機感を抱き、組織の引き締めに自らが全国のクリニックを行脚。医師や看護師との面談を繰り返している。綿引理事長は、この半年、ほとんど品川の本院にいることはなかったという。
■―――――――――――――――――――― 【写真】品川美容外科公式サイトより
(http://www.shinagawa.com/lp/lp_biyou2/index.html)
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この面談だが、単に退職を引き留めるだけではない。激減する売上げの回復を狙って追加施術のオーダーを可能にする「トーク勉強会」も兼ねているらしい。深夜の11時まで面談が続いたクリニックもあったとの話も伝わっている。
だが、退職者問題だけでなく、更に「注射針の使い回し」という内部情報が漏れていることが判明。綿引理事長は火消しに躍起になっている。
今は全国、どこの病院でも注射針は使い捨てが基本中の基本だが、何と品川美容外科は昔ながらの煮沸消毒を行って〝リサイクル〟しているらしい。エコ、無駄削減などと冗談を言っている場合ではない。深刻な感染リスクが懸念されて当然だ。
情報をキャッチした一部の報道機関は、品川美容外科側に取材を申し込んだが、多忙を理由に拒絶されたという。使い回しの話を看護師から聞いたという、元患者が憤る。
「今も通院していますが、驚くほど高額な手術費用を請求されました。にもかかわらず注射針を再使用しているなんて、詐欺のような話だと思います」
医療過誤や薬害訴訟に詳しい弁護士は、元患者の指摘に同意する。
「治療費の中には当然、医療器具の費用も含まれています。ですから、注射針を使い回していたのが事実だとすれば、患者は返金を求めることが可能だと思います。集団訴訟に発展することも充分に考えられます」
品川美容外科は、これまでにも様々な事故を引き起こしている。
例えば2009年、脂肪吸引の手術を受けた70歳の女性が、術後の2日後に死亡し、担当医師が業務上過失致死罪などで逮捕、起訴。更に、品川美容外科に顧問として勤務していた警察OB2人も捜査の情報を漏洩したとして逮捕されている。
ちなみに医師が逮捕されたのは事故から1年半が経過してからのことだったのだが、その背景として「綿引理事長が徹底して捜査に非協力的で、遂に警察側が激怒した」などと、まことしやかな解説が流布したことがある。もちろん、そんな理由で逮捕が決まるはずもなく、全くの事実無根だ。だが、火のない所に煙は立たないのも事実。当時の警視庁幹部が「捜査に非協力的な態度を取り続ける理事長に怒り心頭だった」のは事実のようだ。
この注射針の使い回し問題だが、消費者庁にも情報が届いているという。今後、相談の件数が増えるなどすると、行政指導が検討される可能性もある。
美容外科は医療の全てが自由診療であり、厚労省の指導は及ばない。だが消費者庁なら指導が可能だ。
品川美容外科側としては情報漏洩者を特定し、医師や看護師の退職を食い止め、問題解決としたい腹づもりだ。しかしながら、そうは簡単にいかないと見られている。
(第2回につづく)