ご存じの通り、企業の内部留保が全く減らない。 財務省が2015年9月に発表した統計では、2014年度の内部留保は何と約354兆円。過去最高だという。
アメリカの2012年度予算では、歳出は2兆4650億ドル。1ドル120円で換算すると約295.8兆円。日本企業の内部留保の方が多額だ。あまりの数字に、米アップル社の時価総額約80兆円さえも安く感じてしまう。
■民主党からも自民党からも提案される〝内部留保税〟
企業が投資を行い、家計が支出を増やす。そうすれば、所得が増えた別の企業や家計も支出を増やす。この好循環が好景気のエンジンであることは論を俟たない。今のアベノミクスが低調なのも、何より企業と家計が金を貯めこみ、支出に回さないことが原因だ。 ならば企業の内部留保に課税を行えば、嫌がる企業は設備投資や人件費に使おうとするに違いない――こんな議論が最近、浮かんでは消えを繰り返している。いわば〝内部留保税〟というわけだ。 もともとは2010年に民主党の鳩山由紀夫政権下で検討されたという。そのアイディアは政権交代後も生き残ったようだ。 2015年3月には、参院財政金融委員会で自民党の西田昌司議員が「これだけ内部留保が多いのは異常。追加課税の仕組みがあってもいい」と質問。11月にも自民党の中堅・若手議員の勉強会「次世代の税制を考える会」(幹事世話人・鈴木馨祐衆院議員)が、内部留保への課税を検討するよう、政府などに働きかけていくとの報道も行われた。 安倍政権は「経済の好循環」実現を掲げ、経済界に設備投資の拡大を迫ってはいる。だが企業側は景気の先行きは不透明であると、内部留保の吐き出しには消極的だ。本当に内部留保課税が現実味を帯びれば、経済界の反発は必至だろう。 麻生太郎財務相や甘利明経済相は課税に否定的な見解を示している。とはいえ、政府関係者の中には「尻を叩かなければ、企業は動かないよ」と、財界との〝全面戦争〟も辞さないという勇ましい声も聞こえてくる。内部留保課税が世論に評価されると、算盤をはじく自民党議員もいるようだ。来年、2016年に参院選が行われることも影響しているのだろう。
だが、経済評論家の三橋貴明氏は、内部留保課税構想について「あまりにも間違いが多く、直しようがないほどお粗末な政策案です」と呆れ顔を浮かべる。そこで編集部は三橋氏に問題点の解説を依頼し、更に「過剰な内部留保を解決できる政策」も提言してもらった。
■―――――――――――――――――――― 【購読記事の文字数】約4000字 【写真】三橋貴明氏(事務所提供)
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