深刻な経営危機に陥った東芝。屋台骨を揺るがした米原発事業をめぐり、またひとつ、不可解な闇が広がる。米原発事業をめぐり、不可解な「オプション契約」の存在が判明したのだ。
これは東芝が買収した米原発会社・ウェスチングハウス(WH)が、原発を発注した米電力会社との間で締結したもので、電力会社が一定以上の建設費用の負担を拒否できる内容となっているのだ。
「これではあまりに発注の電力側に有利すぎる」と業界関係筋は疑念を強めており、WH経営陣が何らかの不正をはたらいた疑いも指摘されている。
■―――――――――――――――――――― 【写真】Westinghouse Electric Company公式サイトより
(http://www.westinghousenuclear.com/)
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東芝がWHの原発建設事業で7000億円近い損失を被り、今年度は債務が資産を上回る債務超過に転落する見通しであるのは報道の通り。このため、東芝は稼ぎ頭の半導体事業を切り離し、過半数の株式を売却して資金を捻出する方針を余儀なくされている。
ただ、東芝の内外からは、「経営陣が米原発事業の巨額損失の存在を知ったのは昨年末だった。WHからの報告が遅れたためだが、会社の屋台骨を揺るがす巨額損失がなぜ、突如として発生したのだろうか」と疑う声が根強く残っている。
東芝や業界関係者の話を総合すると、巨額損失が発生した直接の原因は、WHが米電力会社と締結していた「オプション契約」が行使されたことだった。WHは、この電力会社からサウスカロライナ州で建設する2基の原発を受注したが、電力会社が工事遅延によって発生する損失を抑える契約も追加で結んでいたのだ。
このオプション契約では、電力会社がWHに支払う金額は最大76億8000万ドルとし、これを上回った金額は全てWH側が支払う――との内容になっている。福島原発事故の発生に伴い、米国でも原発の安全基準が強化され、工事が遅延して建設費や金利が膨れ上がり、WHに巨額の損失が発生したとされる。
しかし、関係筋は疑念をこう語るのだ。
「疑問なのは、この契約が結ばれたのが2016年5月だったことです。福島原発の事故があって、このオプション契約の時点ではすでに原発工事の大幅な遅延は明らかにわかっていた。なぜWHがこの段階で、わざわざ巨額費用を負担しなければいけなくなるような不利な契約をしたか、意味がわからない」
東芝関係筋によると、米電力会社側はこのオプション契約を締結するため、約5億ドルをWH側に追加で支払っている。このため、「オプション契約を仲介した米国の金融会社からWH側にバックマージンが支払われた疑いがあるのでは」との見方が東芝内外から出ている。
東芝関係筋は「会社に損害を与えることを分かってオプション契約を結んだのであれば、明らかな背任だ。あるいは、電力会社と金融会社が組んでWHを嵌めた可能性も捨てきれない」と指摘する。
東芝をめぐる闇はまだまだ解明しきれていないのである。
(無料記事・了)